IT企業の大規模な人員削減はIT人材不足の解消にあらず–ガートナーが見解
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2022年後半から米国IT企業で相次ぐ従業員の大量削減は、この市場におけるIT人材不足の問題が解消されたことを意味するわけではないという。米Gartner シニアディレクター アナリストのMbula Schoen氏は、組織のCIO(最高情報責任者)に対し高度IT人材を確保する機会だとも指摘する。
同社によると、IT各社の人員削減に関する発表を受けて、組織の技術者やビジネスの幹部は、長らく続いたIT人材不足が解消されたと見る向きがある。しかし実際には、技術系人材の需要が供給を大幅に上回る状況が続き、IT人材不足は解消されていない。同社が2022年11~12月に行った調査では、CIOの86%がITスキルを持つ人材の獲得に苦労しており、73%はIT人材の減少を懸念していることが分かったとしている。
Schoen氏は、IT各社の施策で影響を受けているのは技術系の人材ではなく業務系の人材だとし、最近ではIT企業以外の組織でもITの業務が拡大していることから、IT人材不足は依然として大きな課題だと指摘。IT各社の施策は、株主からの要請や財務健全化のためのものとして歓迎ムードにあるが、IT各社は市場における製品・サービスの競争力強化を以前にも増して指向しており、人員削減規模が大きい上位10社の現在の雇用数は、2020年初頭に比べてまだ15万人以上多いという。
Gartnerは、IT需要予測から技術系IT人材の不足が少なくとも2026年まで続くと見る。Schoen氏は、あらゆる企業がデジタルを成長機会と捉えているために人材の獲得競争が激化しており、労働市場全体で技術系労働者の供給が数%程度しか増加せず、特にデータサイエンスやソフトウェア工学、サイバーセキュリティなどの分野ではひっ迫傾向にある。
組織のCIOにとってこの状況は、優秀な技術系IT人材を獲得するチャンスであると同時に、現在所属する人材を失うリスクでもあるようだ。
Schoen氏は、ソーシャルネットワークなどを使って現在転職活動をしていないような潜在的な人材にも働きかけたり、必要な人材を候補者からAIで効率的に探したりするなどの積極的な採用活動を行う必要があると指摘する。また、技術人材に対してより良い価値の提案を続けることができなければ、優秀な技術系IT人材を採用できないばかりか、自社の従業員が他社のオファーに魅力を感じて退職してしまう恐れがあると述べる。
また、データサイエンティストのような高度な技術系IT人材の獲得は極めて難しく、CIOは人材部門の支援を受けながら、例えば、データアナリストやビジネスアナリストを採用して技術的なトレーニングを追加することにより、データサイエンティストへと育成していくような取り組みも求められると解説している。