NTTデータと香味醗酵、パートナーシップを締結–新たな匂いビジネスの創出に

今回は「NTTデータと香味醗酵、パートナーシップを締結–新たな匂いビジネスの創出に」についてご紹介します。

関連ワード (量子コンピューティング等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 NTTデータは3月27日、香味醗酵(大阪市)と実施した「少数の匂い成分から膨大な匂い・香りを作り出す組合せ最適化に関する実験」の成果を発表した。この成果を踏まえ、両社は4月1日に「組合せ最適化技術を活用した匂い再構成技術に関するパートナーシップ契約」を締結する。

 香味醗酵は、匂いを数値化する技術を開発し、匂いを正確に分析・記録する技術を医薬や化粧、香料、製造などの幅広い業界に提供している。さらに数値化した匂いのデータベースを構築し、匂い成分を再構成した新たなデジタルフレグランスと転送技術を組み合わせることで、世界各地や仮想空間に匂いを届けることをミッションにしている。

 これまで、人の嗅覚による匂いの情報を可視化する方法は、人の主観となる官能試験が主だったが、試験官の体調や加齢による衰えによって結果が異なるという問題があった。また、従来の匂い検知センサーでは、「特定の匂い成分しか検知できない」「匂い成分の分析装置では人の匂いの感覚と無関係な成分を検出してしまう」という課題もあった。

 香味醗酵では、人が感じる全ての匂いの情報をデジタルコード(匂いコード)として記述する独自技術と、この技術を用いた匂いデータベースを構築し、求める匂いを少数の匂い分子の組み合わせで再構築する技術を開発。人の匂いの感じ方に基づき、必要最小限の匂い成分でオリジナルの匂いと同じヒト嗅覚受容体反応の再現をする。現在はこの技術を活用し、5種類の基本の匂い成分から数十種類の匂いを生成するデジタルディフューザー「Meta scent Diffuser」の開発に取り組んでいる。

 同製品は、アプリ上でローズやバニラなど好みの匂いを選択することで、ディフューザーから生成された匂いが出る。消臭や生理活性向上、防虫などさまざまな効果をもたらすことが、ほかのディフューザーとの優位点になるという。香味醗酵によると、世界のアロマテラピーディフューザー市場の市場成長率は9%、市場規模は32億ドルにも上る。

 香味醗酵では、よりオリジナルと近い匂いの再構成をするに当たり、多くのデータから適切な組み合わせが必要であった一方、組み合わせ計算は対象とする匂い成分の種類が多いほど計算負荷が高まり、従来の処理方法では1000種類が限界だったという。また、コストの抑制やディフューザー事業への拡大のため、可能な限り少ない香料で再構成したいという要望があった。

 そこで、香味醗酵とNTTデータ、NTTは2022年11月から今回の共同実験を行ってきた。NTTが開発する次世代光イジングマシン「LASOLV」と、NTTデータの量子コンピューターやイジングマシンを活用したデータ分析技術を用いた効率的な組み合わせ最適化の計算モデル適用により、データ規模の拡張に成功。さらに、香味醗酵が保有する数千種類の匂い成分から最適な組み合わせを計算することで、数少ない匂いの成分でさまざまな匂いや香りを再構成した。

 具体的には、8000種類を対象とした大規模計算において、ターゲットとなる香りに近い嗅覚受容体の反応が得られる結果を取得。これにより、計算精度の一定の有効性を確認できたという。さらに、提示されたオリジナルに近い複数の匂いを比較する場合にも、可能な限り求める匂いに近い候補に絞り込むことができるため、手間とコストを省くことにもつながるとしている。

 両社は今後、精度の劣化を最小限にしながらコストを抑える匂いの組み合わせ候補の算出方法の考案など、さまざまな提携を進め、匂いビジネスの推進を行う。また、香料開発の効率化・高度化だけでなく、映像産業やメタバースへの匂い情報の実装など、新たなビジネスの開拓に取り組み、2025年までに10件以上の匂いに関するビジネス創出を目指すという。

 同日の発表会に登壇したNTTデータ 技術革新統括本部 技術開発本部 イノベーションセンタ 課長の矢実貴志氏は、「今回の共同実験による結果は非常にポジティブなものだとわれわれは考えている。この成果をさらにブラッシュアップし、ビジネス拡大に向けて連携を進めていきたい。また、イジングマシンのビジネス適用の事例は数少ないため、このような事例を世の中に発信していければと考えている」と展望を述べた。

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