サービスの時代に日本企業はなぜPCのボリュームディスカウントに走るのか?

今回は「サービスの時代に日本企業はなぜPCのボリュームディスカウントに走るのか?」についてご紹介します。

関連ワード (モバイル、新潮流Device as a Serviceの世界等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載のメインテーマは、デバイスをサービスとして受ける「Device as a Service」です。ボリュームディスカウントとの関係について、前回の記事で「相容れぬ関係」と申し上げました。これは、サービスとして受けることから、物品の調達と違いボリュームディスカウントという概念そのものがないというか、あまり意味をなさないという意味です。

 そもそもボリュームディスカウントは、いわゆる「販売費」の削減から、その値引き額を捻出していることが一般的です。例えば、一昔前にはやった紳士服(スーツ)の「量販店で1着買ったら2着目半額」などがまさにそうです。スーツの販売において1件当たりの接客時間は、スーツを1着買おうが2着買おうが変わらないそうです。採寸したり、顧客の意向を聞いて何点か候補を見せたりする手間暇は必ずかかり、その際に1着買おうが2着買おうがそれらの手間は変わらないのでしょう。販売店の販売費の大半は、店員の人件費ですから、その手間がなくなった分の人件費を値引きの原資にする。これがボリュームディスカウントのロジックです。

 ただし、このような商談時に利益が確定する販売という収益形態であれば、削減された販売費だけ提供価格から値引くというのは簡単なのですが、as a Serviceの一般的な収益形態であるサブスクリプションとなると話が難しくなります。法人間取引(BtoB)においての販売員は営業です。1台、1ユーザー当たりの契約を獲得するための営業の人件費を差し引いたり、その商談の機会を得るために費やしたさまざまな費用を差し引こうとしたりしても、サービスの採用決定時には収益が確定していません。いくら値引きするのが妥当なのか、判断がつきにくいのです。

 少なくともベンダーと顧客側で、そのイメージ、もうかる・もうからないという感覚には大きな隔たりがあるように思います。顧客側は、従来のボリュームディスカウントの感覚のままとしても、サービスを提供する側としては、サービスを提供し続ける限り、その費用が継続的にかかります。継続的に提供されるサービスを一時的な商談時の販売費で永遠に値引き続けることは難しく、一般的にas a Serviceは、ボリュームディスカウントがなかったり、あったとしても小さな値引きだったり、一時的なキャッシュバックだったりします。

 つまり、その場で利益が決まる販売と違い、サブスクリプションと言われる継続的な収益形態自体が、ボリュームディスカウントと相容れぬ関係というわけです。

 しかし、Device as a Serviceにおいて一括導入のボリュームディスカウントの恩恵を全く得られず、従来のPC調達に比べてユーザーとして不利な立場になってしまうかといえば、それは違います。

 Device as a Serviceを提供している企業は、普通のユーザー企業よりも多くのPCを調達しています。例えば、PCレンタル企業である当社(横河レンタ・リース)は、某大手通信キャリアグループや世界最大手の自動車メーカーの全社員数と同じくらいのPCを年間で調達します。大企業でも3~4年に1回のリプレースであれば、年間で買うPCの台数は、多くても総従業員数の3分の1、4分の1以下でしょう。当社のようなレンタルPC会社ほどPCを買っている会社はそうはいません。

 当然ながら、PCの調達において、販売するPCメーカーやディストリビューターに対し、有利な立場で交渉を進められます。ボリュームディスカウントを要求できるわけです。そして、ボリュームディスカウントで仕入れたPCがDevice as a Serviceとして当社の顧客へのサービスに供されるわけですから、その価格にも反映されます。結果として、ユーザーはボリュームディスカウントの恩恵を得られるわけです。運用に無理が生じやすい一括導入よりも、ボリュームディスカウントの恩恵を受けるには、どちらの選択肢が賢明なのか、言わずもがなということでしょう。

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