自社グループのDX戦略を加速するためのIT組織の在り方と再編のポイント
今回は「自社グループのDX戦略を加速するためのIT組織の在り方と再編のポイント」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載は、「CIOの『人起点』マニフェスト」をテーマに、Ridgelinezの最新の知見をお届けしている。第10回の今回は、「自社グループのDX戦略を加速するためのIT組織の在り方と再編のポイント」と題し、DX時代に求められるIT組織のあるべき姿について、グループ経営の視点から考えてみたい。IT組織の見直しにおいては、これまで「ITシステムのお守り役」だった情報システム部門やIT子会社を「DX推進の戦略的パートナー」として再生するといった変革も必要になる。本稿では、そのための考え方や実践のポイントをRidgelinezの支援事例とともにご紹介する。
日本においても急速に拡大するDXの波が企業に突き付けているのは、テクノロジーの課題だけではない。DXを持続的な成長につなげていくために、自社のIT組織はどうあるべきかという点も、見過ごすことのできない重要な経営課題の1つだ。
生成AIがもたらしたような社会の大きな変化に素早く適応し、デジタルを活用した新たな成長を実現するには、旧来の組織形態ではどうしても限界がある。流動的なビジネス環境の中でグループのシナジーを最大化するためにも、経営戦略を担う親会社と各事業会社、あるいは本社の情報システム部門とIT子会社との緊密なコミュニケーションや、ナレッジの共有を可能にする新たな組織づくりは喫緊の課題となっている。
同時に、IT子会社に期待される役割そのものも大きく変化している。ITに特化した専門家集団であるIT子会社には、デジタルの知見を生かした経営戦略への貢献が求められることは言うまでもない。ところが、これまで日本企業がIT子会社を設立してきた主な目的は、実のところ、人件費や開発コストの削減だったというのが現実だ。
ガートナージャパンが2023年に実施した調査※でも、回答企業がIT子会社を設立した目的として上位に挙げたのは、「人件費の抑制」「システム開発コストの抑制」「システム運用コストの抑制」と、いずれもコスト削減に関連するものばかりである(図1参照)。
※出所:Gartner,プレスリリース,2023年10月5日,“Gartner、国内のIT子会社の実情に関する調査結果を発表”
一方、IT子会社の役割として「経営戦略への貢献」や「データドリブンなビジネスの実現」を挙げた企業は少数で、こうした戦略的な課題解決は、IT子会社の担当外と見なされてきたことが分かる。
その結果、IT子会社は親会社の情報システム部門の実働部隊として、「ITシステムのお守り役」に徹する受け身の姿勢が常態化し、親会社とのコミュニケーション、ビジョンやナレッジの共有も十分ではなかった。
しかし、本格的なDX時代を迎えた現在、この構図は急速に変化している。というのも、同じ調査の中で親会社に「IT子会社の喫緊の課題」について尋ねたところ、これまで担当外であったはずの経営戦略に関わる課題解決への貢献が強く求められていることが明らかになった。
つまり、「最初はQCD(品質・コスト・納期)の改善を目的にIT子会社を作ったが、これからは新たなIT組織の一員として、DXの専門的な知見でグループの経営目標の達成に貢献してほしい」と期待が大きく変化しているのである。
このように、DXに対するニーズの高まりがもたらした劇的な環境変化を受けて、最高情報責任者(CIO)などのビジネスリーダーは、グループ全体のDX推進を支えるIT組織の在り方を抜本的に見直して再構築する、かつてない変革を迫られているということだ。