サイバーエージェントやアサヒ飲料ら、AIと経済学活用の価格決定実証
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サイバーエージェントは6月21日、同社のAI事業本部がリテールAI研究会において「価格最適化分科会」を立ち上げ、アサヒ飲料、エム・データ、日本製紙クレシア、リテールパートナーズ、ロッテと共同で、価格設定に関する実証実験を実施したと発表した。その結果、経済学の活用による最適価格決定の可能性を示したという。
商品価格の設定は従来、現場担当者の勘と経験を基に行われることが多く、売り上げや粗利を最大化する最適価格を設定するには多くの課題が存在している。こうした中、GoogleやAmazonをはじめとする世界的な米国企業が商品価格設定の戦略や意思決定に「経済学」を応用する動きに注目が集まっているという。
サイバーエージェントは、2016年から研究開発組織「AI Lab」において経済学の研究を行っており、20人以上の経済学分析者・研究者が実ビジネスへの応用に取り組んでいる。近年は企業のDX支援にも注力しており、その一環としてAIと経済学を活用した商品価格決定の支援も行っている。こうした背景のもと、同社独自の価格最適化アルゴリズムを活用し、小売店やメーカーと共同実験を実施することで、実験による最適価格決定の可能性を示したという。
同実験では、アサヒ飲料、日本製紙クレシア、ロッテが各自提供する商品に対して、通常価格、通常価格より高い/低い価格の3パターンで店舗ごとに異なる価格を設定することで、設定価格の違いによる販売個数の変化を観察した。
同実験は3月6日~4月5日、スーパーマーケット「アルク」の福岡県、山口県、広島県における計43店舗でアサヒ飲料の「ウィルキンソン タンサン 500ml」、日本製紙クレシアの「スコッティファイン3倍巻キッチンタオル2ロール」、ロッテの「のど飴袋 102g」を対象に実施した。
リテールパートナーズは商品売価の変更、販売時点情報管理(POS)データの提供、エム・データは商品のテレビCMデータとTVメタデータの提供、サイバーエージェントは実験設計、データ分析、最適価格推定モデルの作成、リテールAI研究会は定例ミーティング開催などの実証実験のための各種調整を担当した。
価格の違いによる検証では、経済学(因果推論)のアプローチを活用することで、季節トレンドやチラシなど、価格変更以外の影響を除去し、価格変更のみの影響を検証している。その上で、実験期間における価格ごとの販売個数の変化や過去の販売データを活用し、売り上げを最大にする最適価格を推定するAIモデルを作成。この実験により、勘と経験に頼らない実験ベースでの最適価格検証の可能性を示したという。
加えて、通常価格よりも約15%値上げをすることで、売り上げが約12%向上する見込みがある商品もあったといい、商品ごとの価格弾力性を実験的に捉え、効果的に価格を変動させることが売上増加につながると分かったという。今後は、粗利を最大化する価格決定への拡張に向けて、さらなるデータの取得や分析を推進することを予定している。
サイバーエージェントは今後もAI技術と経済学の知見を応用し、売り上げや粗利を最大化する最適な価格決定を支援することで、企業の持続可能な成長と顧客満足の両立を目指すとしている。