日本MS、医療の個別最適化に貢献–持続可能なヘルスケア社会目指す

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 日本マイクロソフトは7月24日、ヘルスケア分野での最新の取り組みと、医療業務におけるAI活用事例に関する記者説明会を開催した。

 同社 業務執行役員 ヘルスケア統括本部長の大山訓弘氏は「われわれは、患者さんに寄り添い、AIのトランスフォーメーションを通じて医療的にも持続可能なヘルスケア社会の実現を目指している」とヘルスケアチームのミッションを説明した。

 ヘルスケア分野において、同社では「プレシジョン医療」と「医療の質の均てん化実現」が肝要だと捉えているという。プレシジョン医療は、患者一人一人に最適な治療方法を分析・選択し、処置を行うこと。プレシジョン医療の実現に向けては、早期発見や病気の予測、治療の個別化、薬の特定、遺伝子治療が必要だという。同社では、AIやパーソナルヘルスレコード(PHR)、ゲノミクスを重視したプラットフォームの提供を提供している。

 大山氏によると、直近3年間における同社のヘルスケア向けビジネスは、ヘルスケア市場におけるDX案件の増加に伴い、クラウドビジネスが伸長したという。具体的には、クラウドの売上成長率が過去3年間で74%増加。ヘルスケアマーケット全体の売り上げの中でのクラウド売上比率も50%から75%に成長した。また、AI関連の売り上げは過去3年間で3倍になり、セキュリティ関連の売り上げは2倍に成長したという。

 製薬企業や医療機関の顧客は、日本マイクロソフトが提供するクラウドやAIツールを活用し、企業としての経営変革や業務変革、医療業務における変革に取り組んでいる。

 医療における生成AI活用において同社は、診療記録の補助や事務作業をはじめ、研究や患者向けサービスにも適用できるのではないかとしている。例えば、「Copilot in Word」を利用して個別最適化された介護スケジュールのドラフトを自動作成できるという。「75歳の女性」「足が不自由な状態」「やや認知症を患っている」といった要介護者の情報を入力することで、スケジュールが生成される。

 実際に、多くの民間/公立の医療機関で「Azure Open AI Service」や「Copilot for Microsoft 365」の実証、一部での実利用が進んでいるという。生成AIの活用事例として、石川記念会HITO病院でDX推進室 最高技術責任者(CTO)/脳神経外科部長の篠原直樹氏が登壇した。

 HITO病院は、愛媛県にあるケアミックス型の救急病院。篠原氏は病院が抱える課題として、地域におけるヘルスケアの人材不足や、正解のない時代だからこその不確実性・曖昧性などを挙げた。これらの課題を解決する方法として、連携と個々の知能拡張が必要だとしている。同氏によると、連携は、一人一台のスマートフォンを持ち、コラボレーションツールで場所や時間に縛られない対話や情報共有を増やしていくこと。知能拡張においては、自ら学びにいける環境を作る必要があると説く。

 同病院では、全職員にスマートフォンを支給し、「Microsoft Teams」とモバイル電子カルテ「NEWTONS Mobile2」のトーク機能を活用した連携を進めている。また、知能拡張においては、チームチャットを活用したスタッフ同士の情報共有や対話から学びを得られるほか、Copilotなどの生成AIを活用した事務作業の効率化や知識の蓄積といった環境を整えているという。

 同病院では現在、564人の職員がスマートフォンからCopilotを使っている。生成AIを活用した事例として篠原氏は、患者対応のチャットボットやチャットの自動翻訳、文書の自動生成、医療教育の支援、業務負担の可視化を挙げた。

 「Copilot Studio」を活用して開発した患者対応チャットボットは、質問に対してそれぞれの患者に合った回答をする。今後、HITO病院の糖尿病チームが作成したレシピや情報を格納し、糖尿病患者に利用してもらう予定だという。

 業務負荷の可視化では、電子カルテにある医療・看護の必要度を一元的に統合し、病棟やチームの業務負担を可視化、分析するという。篠原氏によると、病棟の看護師の配置基準が決まっているが、人と医療密度にはミスマッチがあり、有効活用できていなかったという。そこで、看護師の適正配置を予測するマネジメントツールを活用することで、人員配置の最適化ができるのではないかとしている。

 病院に生成AIを導入するに当たり篠原氏は、「生成AIの利用を促進するためにかかる費用や専門技術を検討する必要がある。また、使用範囲と制限をどのようにするか。自身の病院に特異的なデータがあるかや、生成されたデータのフィードバック作業に対して人員を割けるか。生成AIを導入することで付加価値を生める領域を検討するべきだ」と述べた。

 続けて、病院の戦略に生成AIを活用するに当たって「事務スタッフや若手の医療職員など医療の専門性が高くない部分から生成AIを導入することを推奨する」と同氏はいう。また、生成AIは業務効率が目的ではなく、障壁を破壊し、新しい働き方を作っていく可能性があると語った。

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