SAS日本法人社長が説く「AI時代の人の意志決定力の磨き方」
今回は「SAS日本法人社長が説く「AI時代の人の意志決定力の磨き方」」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAS Institute Japan 代表取締役社長の手島主税氏と、セールスフォース・ジャパン 執行役員 ソリューション統括本部 インダストリーアドバイザー本部 本部長の國本久成氏の「明言」を紹介する。
米SAS Instituteの日本法人SAS Institute Japanは先頃、プライベートイベント「SAS INNOVATE ON TOUR – Japan」を都内で開催した。手島氏の冒頭の発言は、そのキーノートと会場での個別取材の中で、人はAIとどう向き合えばよいかについて述べたものである。
「私たちが一番大事にしているのは、アナリティクスやAIなどのテクノロジーが人にどう貢献するか。テクノロジーの役目は人の潜在能力を引き出すことにあると考えている」
手島氏はキーノートで開口一番こう述べ、「SASは創業以来48年にわたり、一貫してそうしたテクノロジーの実現に取り組んできている」と強調した。
また、「アナリティクスやAIを長年にわたって手掛けてきたことから、SASはさまざまなデータモデルのアセットやドメインのスキル、方法論を保持している。これからはそうしたものを、お客さまのさらなる発展に向けて還元していくことにも一層注力していきたい」とも述べた。
その上で、同氏はSASの今後の立ち位置として図1を示し、ポイントについて次のように説明した。
「図の左側は、人がアナリティクスのテクノロジーを使ってこれまで実施してきた領域だ。一方、右側は、コンピュータによって作られるAIなどの領域だ。この2つの領域が今、重なり合ってきてこれからさまざまなところでイノベーションが起きる可能性が高まっている。こうした中で、早くからアナリティクスにAIを組み込んできたSASとしては、2つの領域が重なり合った時に最も大事なのは『人がしっかりと意志決定すること』だと考えている。これからは、例えば業務において人が意志決定しなくてもAIが判断して自動化していく時代になっていく。そうした効率化などに向けてはAIを使い倒す一方、重要な判断が求められる意志決定については人がしっかりと行えるようにすることが肝要だ」
ちなみに、手島氏は通常広く使われている「意思決定」ではなく、「意志決定」と表記する。こだわりがあるのかと聞いたところ、「何事も決定するのはリスクが伴う。それを覚悟して成し遂げるためには確固たる意志が必要だ」とのこと。従って、ここでは同氏の発言の範囲において意志決定と表記する。
実は、筆者は本サイトでのもう1つの連載「一言もの申す」の2023年6月22日掲載記事「生成AIの最大のリスクは『意思決定を委ねてしまうこと』ではないか」以来、この懸念について幾度も警鐘を鳴らしてきた。同じ懸念の声も小さくないと感じている。そこで、この分野に精通するSASの手島氏に、今回の取材でこの懸念に対する見解をぜひ聞いてみたかった。すると、キーノートで上記の話が聞けた上、個別取材で次のような見解も示した。
「人がやるべき意志決定をAIに委ねてしまうようになる懸念は確かにある。だが、AIに対しては使い倒すという姿勢がまず大事だ。さらに踏み込んで言えば、生成AIが使える形で普及しつつある今、人はこの機会に自らの意志決定力を磨くことを強く意識すればどうか。絶好の鍛える場ができたと考えればいい。人がしっかりと意志決定していかなければ、社会も企業も立ちいかなくなるのだから」
つまり、生成AIを相手にして「意志決定力を磨け」と。手島氏のこの言葉、筆者の腹にはストンと落ちた。