プロセスマイニングの生みの親が語る、誕生から現在、将来の進化
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プロセスマイニングの生みの親であるドイツ・アーヘン工科大学のWil van der Aalst(ウィル・ファン・デル・アールスト)正教授がインタビューに応じた。これまでのプロセスマイニングの25年間に渡る歴史について言及し、「プロセスマイニングは、現実を明らかにでき、企業が抱えるプロセスの課題を解決できる」と位置付ける一方で、プロセスマイニング市場で50%以上のシェアを持つCelonsの3人の創業者がアールスト氏の教え子であることに触れながら、「3人の組み合わせが実現したからこそ、今の成功がある」と評した。なお、アールスト氏はCelonisのチーフサイエンティストも務めている。
アールスト氏は、インタビューの冒頭で「私がプロセスマイニングに関わり始めたのは1990年代だったが、今では世界中にプロセスマイニングを活用している企業が存在し、その知識が広がっている。より多くの人に応えることができるものになっている」と切り出した。
その言葉を裏付けるように、2023年には、Gartnerのマジック・クアドラントでプロセスマイニングプラットフォームが1つのカテゴリーとして設定され、現在50社以上が参入する市場に育っている。アールスト氏は、プロセスマイニングの現状に触れながら、インタビューで約25年間に渡る歴史について振り返った。
まず、話は「Windows 95」が発表された1995年にさかのぼる。
その年にドイツで開催された「CeBIT」(2018年まで開催された世界最大級のIT展示会)では、米MicrosoftのBill Gates会長(当時)が参加し、Windows 95を発表。75万人が来場し、大きな盛り上がりを見せた。その中で、同様に高い注目を集めていたのが「ワークフローマネジメント」であり、展示会場には85社以上のワークフロー関連ベンダーが参加し、各社がワークフローソリューションを展示していたという。アールスト氏は、「私もワークフローマネジメントの考え方が大好きであり、素晴らしいアイデアだと思った」と当時を回顧した。
だが、「当時のワークフローマネジメントには課題があり、徐々に懸念が生まれてきた」とも語る。SAPのリファレンスモデルを適用し、活用方法の提案とワークフローの管理を行うとした際に、その課題に気がついたという。「SAPのリファレンスモデルは、大幅にシンプル化されていたため、実際の現場では行き詰ることが多く、実装できないという課題が生まれた」というのだ。
シンプルな考え方をベースにしたシステムであれば、課題を抽出しやすいが、実際のシステムは複雑であり企業ごとに使っているシステムが異なること、同じシステムでもバージョンが異なること、さらに数多くのアプリケーションを使用しているという実態がある。リファレンスモデルは、理想を語っていても、実際にはそれに合わせることはできず、課題の解決にはつながらなかった。
「8割の問題は無視された形でワークフローマネジメントが運用されていた。ワークフローマネジメントを行っていた企業は、求めていたものが出てこないという壁にぶつかり、目的としていた課題の解決には至らないことを理解するようになった」
そこでアールスト氏は、1998年に発想を逆転し、この課題を解決することに着手した。それがプロセスマイニングの誕生につながっている。
アールスト氏は、リファレンスモデルを適用するのではなく、現実をベースにしてプロセスを可視化し、プロセスを基に課題を抽出するという手法を用いた。
「プロセスはそもそも目に見えない。これを可視化するのがプロセスマイニングで、プロセスは私たちが感じる以上に“スパゲッティ”化している。だが、これは構造化することができる。ワークフローのモデリングから入っても現状の業務には使えないが、現状の業務からモデルを見れば解決できると考えた。この発想がプロセスマイニングの原点になっている」
プロセスマイニングは、SAPやSalesforce、ServiceNowなどが持つイベントデータの抽出からスタートし、そこから現実を可視化したプロセスモデルを生成し、透明性の高い環境において、問題を特定することができる。抽出した問題からプロセスモデルを修正し、自らが望む形に変え、プロセスを実行させ、自分が望むモデルになっていてるかを確認できるという仕組みだ。この結果、パフォーマンスの問題やコンプライアンスの問題を特定したり、ボトルネックがどこにあるのか、どこのプロセスがスキップされてしまっているのかを理解したりできる。
「プロセスのどこがボトルネックになり、どこが通常のプロセスから逸脱しているのかを見て、問題に気付き、あるべき姿にプロセスを修正していくことが必要だ。プロセスマイニングは、現実を明らかにすることができる」
「ITが進化する中で最大の問題点は、組織の中で正しくデータを集められるかどうかだ。正しくデータを集めることができ、透明性の高いデータから課題を抽出できる。場合によっては、プロセスが間違いに薄々気付いていても、政治的な理由で変えることができないといったこともある。こうした企業で起こりやすい課題の解決にもメスを入れることができる」