企業の海外進出で高まる翻訳需要–DeepLから見た日本市場

今回は「企業の海外進出で高まる翻訳需要–DeepLから見た日本市場」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、トップインタビュー等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 ドイツに拠点を置くDeepLが提供する「DeepL翻訳」は、主要な機械翻訳サービスの一つであり、多くの個人や企業、業界で利用されている。同社で最高収益責任者(CRO)を務めるDavid Parry-Jones氏に日本における同社ビジネスについて聞いた。

–ビジネス状況の全体的なアップデートを教えてください。

 ビジネスは拡大しています。特に日本においては、過去12カ月で2倍に拡大しています。エンタープライズの契約獲得数も増えています。また、新機能も多数提供し、サービスの提供地域も増えています。有料版の「DeepL Pro」は2023年12月に25の国と地域で新たに提供されています。日本法人を7月に設立したことは、ご存じかと思います。現在、従業員39人でビジネスを展開しています。

–創業者で最高経営責任者(CEO)のJaroslaw Kutylowski氏が2023年5月に来日し、グローバルでの登録法人数は2万社以上としていました。その後の変化はどうなっていますか。

 ユーザーベースに比例して増加していますが、現時点で公式にお知らせできる数字としては、前回同様2万以上となります(編集部注:同社によると、現在、全世界で10万以上の企業や政府機関を顧客としているという)。

 ただ、大企業の数が増えているということは、お伝えしておきたいと思います。現在、日立製作所やオリンパスといった企業が「DeepL」を利用しています。

 日本経済新聞での利用は、非常に興味深い事例です。DeepLは、社内で記事を書く時だけでなく、公開された記事を読者が希望の言語に変換することにも使われています。また、大和証券グループ本社は、四半期に1度公開されるIR資料をリアルタイムに多言語化するために使っています。

–日本の市場に他国と比べて特徴的な違いはありますか。

 はい。違いがあるからこそ、日本に対して手厚く投資をしているところがあります。まず、翻訳に対するニーズが非常に強いことが挙げられます。新しい技術の採用も早いです。また、日々の業務で翻訳を必要としている従業員の割合が高いです。日本企業はグローバル化を目指し、海外でビジネスを構築しようとしていますが、これは翻訳の必要性が増加したことと一致しています。

–他国の企業もグローバル化を目指している中、日本で翻訳のニーズが高い理由は何でしょう。

 米国や欧州では多くの大企業が英語を公用語としています。一方、日本企業では日本語が第一言語なので、他の市場に進出するには英語が必要となります。また、正式な数字はないのですが、欧州では潜在的に英語を話す割合が日本より高いと思います。要は、グローバル市場に進出しようとすれば翻訳の必要性が生じるのですが、第一言語が日本語である日本企業ではそのニーズがより高まるということです。

–翻訳サービスの利用で特徴的なことはありますか。

 日常的に翻訳を行うパワーユーザーの割合が高いということがあります。また、特に大企業の場合、翻訳サービスの使用がたまにであっても、日常的であっても、セキュリティやコンプライアンスを求める割合が高いところがあります。

 われわれは欧州でビジネスを展開していますので、欧州連合(EU)の「一般データ保護規則(GDPR)」に従う上でデータセキュリティを重視しています。現在、自社で管理するサーバーを欧州の2カ所で運用し、データセキュリティを担保しています。また、欧州だけではなく、各地域のデータセキュリティ規制にも対応するところです。日本なら「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度」(ISMAP)、米国なら「Service Organization Control Type 2(SOC2)」です。

 2024年の後半には、クリエイティブライティングツールのプロ版「DeepL Write」、そして、音声を文字変換する音声翻訳サービスの投入を考えています。このサービスは音声が関わってくるので、レイテンシーの問題からローカルでのパフォーマンスが必要とされます。

 日本においては音声翻訳サービスに対する関心と期待が非常に高いですが、これも他の地域とは違うところです。

–日本での音声翻訳サービスに対する期待値の高さについて、その理由は何でしょう。

 まず、先ほどお話したように、そもそも日本では翻訳のニーズが高いということがあります。加えて、「Zoom」や「Google Meet」「Microsoft Teams」といったオンライン会議で、相手が何を言ったのかをその場で理解をしたいというニーズが日本では特に高いことが背景にあると思います。

–サーバーの話がありましたが、日本国内にサーバーを設置してほしいという要望があるのでは。

 はい、あります。ただ、そのような要望をいただいていますが、サーバーが日本にないため採用を止めるということはないようです。日本にサーバーは現状ないが、DeepLを使いたいということだと思います。

 ただ、今後、公共部門とビジネスがさらに増えるなら、考えていかなければいけないでしょう。グローバル展開している企業の場合、そこはあまり問題にはなりません。どのみちデータは各地に散らばっているためです。一方、日本だけでビジネスを行っている組織では、より課題化します。

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