AI時代の技術者の必須スキル–重要度を増す評価能力と論理的思考力

今回は「AI時代の技術者の必須スキル–重要度を増す評価能力と論理的思考力」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 人工知能(AI)は、数年前のクラウドコンピューティングと同様に、情報技術分野の経済に大きな影響を与えている。多くの点で、AIにはテクノロジーの効率を大幅に高める力がある。しかし、人と組織が次のレベルに進み、新たなAIの現実に適応できるように支援することが課題となっている。

 筆者は進化するテクノロジー経済について、Susan Athey氏と議論する機会を得た。同氏は先頃、Keystone Strategyの最高科学顧問に任命された人物で、スタンフォード大学の経済学教授でもあり、以前はMicrosoftのチーフエコノミストを務めていた。

 「機敏性を高めることのメリットや、機能をさらに追加して、より多くのプロジェクトを実行し、別の方法ではできなかったような実験やイノベーションが可能になるメリットを、定量的かつ完全に把握するのは難しい」とAthey氏は語る。人と組織が適切な準備をすれば、この先にチャンスはある、と同氏は考えている。

 「AI駆動システムの構築と導入は難易度が高く、コストがかかるが、その結果として、より迅速かつ効率的に機能するテクノロジーインフラストラクチャーとアプリケーションが得られる。ひとたび稼働すれば、これらのシステムの方が少し簡単に運用できるかもしれない」とAthey氏。「私が業界でこの16~17年間に携わってきた機械学習と比べると、最新のシステムは維持しやすく、複雑なコーディングが必要になることが少ない」

 同氏は続けて、全体的な所感を述べた。「コンバージェンスが発生しつつあり、業界全体として行ってきた膨大な投資がついに実を結ぼうとしているように感じる。人々はモジュールコードの作成方法を学習した。最適化について多くのことを学んだ。以前は非常に扱いにくいものだったが、今では非常に高性能で汎用的な最適化ルーチンになっている。最新のアルゴリズムをそれらの最適化ルーチンに組み込めばいい」

 この変革の結果、テクノロジーの専門家は自身の役割とキャリアを見直す必要があるという。「コーディングは簡単になったと思う。おそらく、スタンフォード大学の学生たちが作成するコードの80%は、『Copilot』を使って書いているはずだ」とAthey氏は語る。「Copilotは、構文エラーの検出や、長くて退屈なコードを作成するのが得意だ。特定の言語を知っていることはそれほど重要ではない。私がキャリアをスタートしてからコーディングに使った言語は、約10種類だ」

 しかし、これらのテクノロジーは、コーディングプロセスを簡単にするうえでは役立つが、テクノロジープロジェクトで求められるのは、より高度なアーキテクチャースキル、すなわち「構造と物事の適切な実行方法」だとAthey氏は述べた。さらに、AI経済では、評価能力と論理的思考能力も要求される。

 「スタンフォード大学は毎年、コンピューターサイエンスとエンジニアリングの人材を多数輩出している。彼らは皆、ウェブからデータセットをダウンロードし、それを使って作業する能力が非常に高い。例えば、訓練、最適化、予測、分類、モデルAとモデルBの比較、パフォーマンスの比較といった作業だ。しかし、『これが何を意味するのか』『何かがうまくいっている場合やその理由を、どうすれば判断できるのか』『弱点は何か』『改善に役立つのはどのようなデータか』を問う訓練はほとんど受けていない」

 AIモデルの課題は、「間違った答えを返すことがある」という点だとAthey氏は語る。「AIがいつ間違った答えを返し、いつ正しい答えを返しているかを科学的に判断する方法はない。例えば、データセットに十分な数の若者が含まれていないという場合はどうか。ハルシネーションによって若者の数を増やそうとする。しかし、それで実際に若者のことを詳しく知れるだろうか。単に若者の特徴をねつ造しているわけではないということを評価する必要があるが、その機能は組み込まれていない。モデルはそれを知らないし、教えてくれない。モデルがそれを直接知る手段はない」

 結論として、現在と未来のテクノロジー専門家は、AI主導の企業を支えるデータを処理して届けることになる、とAthey氏は述べた。「新しい種類のAIを使用すると、データの価値について少し学ぶことがある。外部データソースにどんな価値があるのか。これまでにどんなイニシアチブを試したのか。うまくいかなかったのは、データが足りなかったからか。今、もう一度試すことができるイニシアチブはあるか」。同氏によると、AIモデルに「過去の構造化されていない乱雑なデータ」を取り込ませる場合があることも、問題の一部であるという。

 経営者やビジネスパーソンは、「多くの論理的思考を必要とする次の次元の分析」に精通している必要があり、「そのためには統計と条件付き期待値を理解しなければならない。数学的な枠組みが求められる。『これが正しいとはどういう意味か。正確な答えを返すとはどういうことか』を問う必要がある」。現時点では、そのレベルの批判的思考とそれをサポートするツールがまだ足りない、とAthey氏は語った。

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