東芝、橋梁内部をセンサーで点検–目視からの脱却で人手不足に対抗
今回は「東芝、橋梁内部をセンサーで点検–目視からの脱却で人手不足に対抗」についてご紹介します。
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東芝は10月30日、橋梁のコンクリート内部における健全度をセンサーを用いて評価する技術手法を確立したと発表した。
東芝では、橋梁床版内部の健全度評価技術を2022年7月に発表。「日本は2030年を迎えると半分以上の橋が建設後50年以上になってしまう。一方、労働力人口の低下は日本全体で共通する課題。土木作業従事者は高齢者の割合も多く、このまま橋の点検を人手に頼っていくと、維持管理が難しくなってしまう」(東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 シニアフェローの渡部一雄氏)との思いから、約2年間の実証実験などを経て、実用化に向けて取り組んできたという。
現在、橋梁床版は人による近接目視により点検されているが、開発した技術は橋梁の下面に設置したセンサーが、車両走行時に発生し、コンクリート内部に伝搬する微弱な波(弾性波)を検出し、信号を分析。内部状態を加味して劣化を評価する。
実証実験を実施した「福岡高速1号線」(福岡市)では、コンクリート床版下面の約4m×1mのエリアに18個のセンサーを設置。2時間分のデータを収集し、路面で発生した微弱な波を、傷み具合を表現した「健全度マップ」に置き換えた。
「技術は確立できたが、橋梁ごとに交通量は異なる。大型車の走行量や車両速度、さらに道路に使われている舗装種別などによって結果が変わらないかという疑問が残った」と渡部氏は課題を挙げる。その課題をクリアするために、今度は模擬橋梁に床版サンプルを設置し、各種車両条件による走行試験を実施した。
模擬橋梁は施工技術総合研究所(静岡県富士市)内のテストコースの一部に設置。8トン車や普通車などさまざまな車両条件に基づいた走行試験を実施した。これにより、床版の劣化が進むほど弾性波の伝搬が妨げられ、観測される弾性波源の密度は低くなるため、弾性波源の密度の高低に応じて健全度を評価できるという。
東芝によると、赤外線サーモグラフィーや電磁波レーダーを使って同様の評価もできるが、赤外線では深い部分にある損傷がわかりづらく、電磁波レーダーは奥のひび割れが見られないなどの課題があるとのこと。
東芝では、社会インフラ設備の建設などを手掛けるグループ会社、東芝プラントシステムとともに2024年度中に橋梁床版の健全性評価のサービス提供の開始を目指すとのこと。当初は、都度センサーをつけて計測する点検の形を採用する。