ロンドン大学の研究者が生物のDNAを空気サンプル中から見つけ出すeDNA分析技術を発表

今回は「ロンドン大学の研究者が生物のDNAを空気サンプル中から見つけ出すeDNA分析技術を発表」についてご紹介します。

関連ワード (DNA / 遺伝子(用語)、ロンドン大学(組織)、環境DNA / eDNA(用語)、生態学(用語)等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


Andrew Brookes via Getty Images

ロンドン大学クイーン・メアリー校の研究者が、空気サンプルのなかから、そこにいた生物のDNAを採取する方法についての研究を発表しました。学術誌PeerJに掲載されたこの実証研究は、これまで主として水圏生態系の調査で使われた環境DNA(environmental DNA:eDNA)を生態学や健康科学、医学の分野に応用できる可能性を示すものです。

植物や動物などの生物は、周囲の環境との関わりの中でDNAを排出することがわかっていて、これをeDNAと呼んでいます。eDNAは主に水、または土壌のなかに含まれるものを調べる研究がこれまでに進められて来ました。しかしこの新しい研究では空気サンプルからeDNAを集めて、動物種の同定に利用できるかどうかを検討しました。

研究者は、地下に巣を作り繁殖するハダカデバネズミを飼育していた部屋の空気サンプルから既存の技術でeDNAを採取し、その配列を調べることで、このネズミだけでなく、作業している人のDNAまでも検出できることを確認しました。

この技術はもともと生態学者が生物学的環境を研究するために使われてきたものでしたが、主任研究者のエリザベス・クレア博士によれば、実験で人のDNAを検出できたことで、このサンプリング技術がさらに進歩すれば法医学の分野でも応用できる可能性が示されたとのこと。わかりやすく言えば、犯罪の現場で科学捜査班がeDNAを調べ、現場に居合わせた犯人の痕跡を追跡することもできうるということです。また、細菌・ウイルス学者がこの技術を利用できれば、新型コロナなどのようなウイルスがどのように感染を広げるのかを理解できるかもしれません。

ただ、まだこの技術の実用化には時間がかかりそうです。研究チームはNatureMetrics社など民間企業と協力して実用化に向けた取り組みを行っていますが、混雑していた場所などでは種種雑多なDNAが検出され、必要なものが埋もれてしまう可能性もありえます。とはいえ、まったく証拠が見つからないような状況でこの技術が使えれば、決め手となるDNAが発見され、それが何かを解決するのに役立つことも十分に考えられるでしょう。

(Source:PeerJ、via:ScienceFocus。Engadget日本版より転載)

関連記事
・3Dプリントで作られた「バイオニックコーラル」がサンゴ礁の光合成を模倣する
・京大発スタートアップ「バイオーム」が環境省「気候変動いきもの大調査(冬編)」に協力
・東大発「イノカ」と東工大発「aiwell」が海の環境保全達成に向け共同プロジェクトを開始
・この海洋動物用ウェアラブルは、邪魔することなく生態を追跡できる
・MITの魚ロボット、フィジーで本物を調査

COMMENTS


15266:
2021-04-07 23:28

なんで日本では、ニッチ=狭いみたいな意味になっちゃってるんだろう…と思ったけど、英単語のnicheにもそういう意味があるのね。生態学の用語かと思ってたら、もっと多義的な単語だった。

15267:
2021-04-07 21:42

ダーウィンは進化論の提唱者だけれど、現代あるような生態学の形を作ったのも、比肩しうる功績じゃないでしょうか。複雑な自然界における種間相互作用の重要性を指摘した(今は用語としてあまり使われないけど)「生存闘争」の章。ポッドキャストで生態学の教養を…

15268:
2021-04-07 18:46

ダーウィンは進化論の提唱者だけれど、現代あるような生態学の形を作ったのも、比肩しうる功績じゃないでしょうか。複雑な自然界における種間相互作用の重要性を指摘した(今は用語としてあまり使われないけど)「生存闘争」の章。ポッドキャストで…

15269:
2021-04-07 16:46

創始者効果 適当に使われているからwikipedia 創始者効果(founder effect)とは、「隔離された個体群が新しく作られるときに、新個体群の個体数が少ない場合、元になった個体群とは異なった遺伝子頻度の個体群が出来るこ…

Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
Google、AIでファイルの種類を高速正確に判別できる「Magika」をオープンソースで公開
Google
2024-02-19 17:43
「オフラインファースト」なモバイアプリを実現する「MongoDB Realm Sync」が正式版に。モバイル用DBがクラウド上のMongoDB Atlasとデータ同期
MongoDB
2021-02-17 21:12
川崎フロンターレ、競技場の感染対策でトイレの混雑状況を可視化
IT関連
2022-06-08 16:28
Anthropic、AIモデル「Claude」最新版にコンピューター操作の新機能を追加
IT関連
2024-10-24 18:01
日本KFC、クロスチャネルの顧客体験を強化–巣ごもり需要などでリピート客の獲得が加速
IT関連
2022-02-04 07:40
NTTデータ経営研究所ら、高知県のゆず農園でローカル5Gを用いたスマート農業実証を開始
IT関連
2023-01-12 03:46
WSL新機能、使用メモリの自動縮退など/Pythonのスーパーセット「Mojo」コンパイラ公開/静的サイトジェネレータAstro 3.0登場、ほか。2023年9月の人気記事
編集後記
2023-11-01 10:46
SBOMを導入・構築済みの組織はわずか14%–タニウム、SBOM実態調査
IT関連
2023-04-27 16:54
セキュリティに悩む経営層の「よろず」相談窓口に–マンディアント日本代表の内山氏
IT関連
2022-09-28 14:43
「Linux」でWindowsアプリを実行するには–「Wine」を使用した手順
IT関連
2023-02-03 20:28
NEC、建設業許可の再取得を発表
IT関連
2022-11-18 17:27
中国でここまで進んでいる「ブロックチェーンECセール」とは何か (1/3 ページ)
くわしく
2021-06-20 15:48
Twitterがサブスクリプションやチップなど有料機能の検討を認める
ネットサービス
2021-02-10 10:57
ラッシュが続く中国LiDARメーカーへの投資、Hesaiがシャオミ、美団、政府系CITICなどの主導で328億円超調達
ハードウェア
2021-06-10 11:40