Aimerのプロデューサーが手掛ける「ヒット曲を学習した作曲AI」 人気曲のどんな部分を学んでる?

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 有名アーティストが歌うヒット曲を学習した作曲AIが、自分だけのメロディーやコード進行を量産してくれる──音楽好きにとっての夢を実現しようとするサービスがある。アーティスト・Aimer(エメ)のプロデューサーである玉井健二さんが代表を務めるTMIK(東京都渋谷区)がリリースしたスマートフォンアプリ「FIMMIGRM」(フィミグラム、iOS)だ。

 フィミグラムでは、過去のヒット曲の特徴をディープニューラルネットワークで学習したAIが、8小節のメロディーとコード進行を自動で作曲する。利用料は無料で、ユーザーはボタンを押すだけで、音楽に詳しくなくても曲のフレーズが作れる。作曲は1〜2秒で完了するため、AIが作った曲が気に入らなければ、何度でもやり直すことが可能だ。

 アレンジは6種類から選択できる他、曲のキー(高さ)やテンポも調整できる。ファイルはWAVやMIDIとして書き出すことが可能だ。AIが作った曲の権利はユーザーに帰属する。作成した曲とスマホで撮影した画像・動画を組み合わせてミュージッククリップを作れる機能も搭載している。

 筆者もフィミグラムで作ったMIDIデータをPCに転送し、作曲ソフトに読み込んでみた。メロディとコードだけのMIDIデータなので、音源やビートを設定する必要があったが、10分程度の作業でそれなりのクオリティーのアンビエントミュージックが出来上がった。

「うっせぇわ」を参考に解説、AIはどんなデータを学習しているのか

 短い時間で自分だけの曲を作れるフィミグラム。では、このアプリが搭載しているAIは、一体どんなデータを学習しているのか。玉井さんはAIに学ばせたデータについてこう話す。

 「自分をはじめとした長期間の音楽活動の経験があるスタッフが、膨大な数のヒット曲の特徴を独自に分析した。その結果得られたメロディー、コード、ビートの進み方の特徴をAIに学習させている」

 例えば玉井さんはAimerだけでなくYUKIやJUJUといったアーティストのプロデュースを手掛けた経験があり、その知見を基にヒット曲を分析したという。玉井さんが代表を務めるクリエイター事務所のアゲハスプリングス(東京都渋谷区)のメンバーも分析に参加。この事務所にはOfficial髭男dism、米津玄師、あいみょんといったアーティストのCDを手掛けた音楽プロデューサーが所属している。

 では、ヒット曲の特徴とはどんなものなのか。玉井さんは「AIに学習させたデータの量や内容は非公開なので、自分の分析が全てAIに反映されているか断言できない」としつつ、昨今のヒット曲の傾向についてこう話す。

 「日本人は縦の移動が多い印象的なメロディーを作る能力に長け、それを好む傾向にある。(最近のヒット曲では)Adoさんの『うっせぇわ』などがイメージに近い。一方で、英語圏の曲はあまりメロディーが動かないが、山場では大胆に動かす傾向にある。フィミグラムでは、こういった分析結果をAIに取り入れている」

スマホアプリとしてリリースし、作曲のハードルを低く

 玉井さんをはじめとした音楽プロデューサーの知見が詰まったフィミグラム。とはいえ、作曲AIはすでに世の中にいくつもある。中には、DAW(作曲ソフト)内で直接動かせるツールもある。

 しかし、フィミグラムはスマホアプリだ。MIDIデータを出力できるとはいえ、DAW内で動かせるツールと比べれば、手間がかかることは否めない。ではなぜ、TMIKはフィミグラムをアプリとしてリリースしたのか。玉井さんはこう話す。

 「動画投稿サイトの歌ってみたコンテンツなどを見ていると、カバーはできても自分で曲を作れない人が多い。TikTokなどのコンテンツを見ても、既存の楽曲を使っている人が多かった。スマホアプリとして提供し、ハードルを下げることで、こういった人たちにも作曲の面白さを知ってほしかった」

 ミュージッククリップを作成する機能を搭載したのも、TikTokなどのSNSでフィミグラムを使って作った曲を投稿しやすくするためという。ただしプロの利用を想定していないわけではなく、今後はPC・Android版のリリースを検討している他、8小節以上のメロディーを作れるようにすることで、利便性の向上を目指すとしている。

 TMIKは現在、フィミグラムをα版として提供しており、収益化はしていないが、こちらも今後検討する方針だ。玉井さんによれば、今はユーザーの利用状況を観察し、広告の表示や有料化といったマネタイズの方法を模索している段階という。

 「フィミグラムは“作曲の民主化”を目指している。メロディー作りの修行をしていない人でも、オリジナルの曲を作れる仕組みをAIを活用して提供していきたい。(クリエイターは)このアプリを利用して、どんどん曲作りに励んでほしい」(玉井さん)

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