バイデン新大統領の労働政策とギグワーカーの未来

今回は「バイデン新大統領の労働政策とギグワーカーの未来」についてご紹介します。

関連ワード (ギグエコノミー、ギグワーカー、コラム、ジョー・バイデン等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


オバマ-バイデンの選挙戦で事務局長を務め、ホワイトハウスでは主席補佐官代理だった私は今、サンフランシスコに住んでテクノロジー分野の仕事をしている。そんな私がバイデン-ハリス政権に対して、スマートな政策と規制の安定性を導入することで、業界の大きな可能性をさらに引き出す能力を持っていることに期待している。もちろん、彼らの冷静で思慮あるリーダーシップによる、経済の拡大にも大いに期待したい。

新政権は、シリコンバレーが直面している最も重要な問題の多くに新しい展望をもたらす。確かに、イノベーションの経済とオバマ-バイデン政権のコンビは米国に繁栄をもたらしたが、今やテクノロジー分野は米国人の生活のほとんどあらゆる面に関わっている。

その結果として生じている緊張は、新政権が規制者としての役割を真剣に演じるべきだということを意味しており、投資家と企業はともにバイデン大統領の早急でタイムリーな政策執行を見逃してはならない。とりわけそれは、仕事の未来と米国経済の復興に関わっているからだ。

2020年がギグカンパニーにとって豊年だったことには、疑いの余地がない。ライドシェアの利用は大幅に減ったが、料理や食料品などあらゆるものがデリバリーされ、しかもカリフォルニアの州法Proposition 22の勝利により時価総額は跳ね上がり、多くのスタートアップが上場を目指した。ウェストコーストは大喜びしたが、ワシントンは別のことを考えていた。

議会は何カ月も前から、ギグワーカーの身分を法制化するPRO Actと呼ばれる法案を検討してきた。その法案は、カリフォルニアで叩かれた州議会下院の法案California Assembly Bill 5(AB 5)と酷似していたが、内容のほとんどはProposition 22によって否定された。しかしながらそれは、労働者から広く支持され2021年に息を吹き返す可能性もある。労働者側はすでに、さまざまな議会連合からの支持獲得に奔走しており、同時にギグエコノミーの企業は、彼らの豊かな財力でそれと戦う用意を整えている。

残る問題は、バイデン大統領はどうするかだ。かなり前に彼はAB 5の支持を表明し、選挙戦中にも労働者の分類の間違いを解決する計画を披露していたが、彼は政権スタッフに、テクノロジーに明るい人々を任命している。バイデン大統領は、ほとんどのスタートアップ創業者の年齢よりも長く政治と関わり、妥協の図り方をはじめとしたワシントンの力学を熟知している。法案をめぐる論争において、実際に議論されているのが、その法律の施行方法であることを彼はよく知っている。

法案の多くが何千ページもあるが、それでも具体的な規定は乏しい。詳細は省庁の仕事だ。バイデン大統領は米労働省を監督していたが、PRO Actが成立したら、中身をまとめるのは省の担当だ。

バイデン政権が労働省と業界を召集して、企業による労働者保護の制度化を実現する方法を検討しても意外ではない。バイデン大統領が労働長官に指名したボストン市長のMarty Walsh(マーティ・ウォルシュ)氏は、労働者の強力な支援者であると同時に、企業からは協力し合えるし、妥協に到達することも可能な人物として好感を持たれている。

そのような状況になりそうな理由は、州を見ればわかる。ギグカンパニーはすでに6つの州でProposition 22のような作戦を展開しているし、すでに州法が実効化している州も同程度ある。2021年内におよそ3分の1の州で、Proposition 22をモデルとする労働者保護が法制化されるだろう。

このような時代の勢いというものは無視できないし、労働者もそのことを知っている。労働者はPRO Actの支持では一致しているが、州のアクションに対しては曖昧だ。たとえば北東部の州の多くでは何十年も前からブラックカーとタクシーが参観だ。

したがって、たとえばニューヨーク州とニュージャージー州では、ギグの法律における労働者の位置づけがワシントン州やイリノイ州とはまったく異なる。後者の州ではギグワーカーというものが比較的新しくて、ほんの数年前にUberやLyftが支持した規制が書かれたインクもまだ乾いていない。労働者はPRO Actの支持に関しては一致しているが、全国的な運動はなく、妥協の余地を残している。

これはテクノロジー業界にとっては良いニュースだ。ギグエコノミーの原動力である労働者を、規制が最終的に保護することはないだろうと考えるのは夢物語だ。そしてそれは良いことだ。テクノロジー業界には労働者が正しく行動する道義的責任がある。しかしながら、そういう規制が簡単にテクノロジーに課せられることはありえない。むしろ何週間も、何カ月も運動と法案の審議が各州と議会で行われて、最後に交渉と妥協に辿り着くのだ。

あるいは、何年もかかって規制のプロセスが刷新されることもあるだろう。それらの過程のすべてを、新大統領が監督する。彼は自らの全キャリアを通じて、イノベーションが国を成長させ正常化することを目撃したきた人だ。

4年間続いたトランプ氏の頑固な否定主義と呪術的思考と経済的損害の後を継いだバイデン大統領は、革新的なソリューションに向けて協働するために、厳正な政策と公共の精神、そして民間部門の創意工夫を推し進めるだろう。それは困難な仕事で、しかも決してきれいごとにならないだろう。それでも私たちは、米国のテクノロジー主導のダイナミズムという新しい時代の幕開けを期待すべきだ。

【Japan編集部】本稿著者のJim Messina(ジム・メッシーナ)氏は政治と企業経営のアドバイザーで、The Messina GroupのCEOだ。2009年から2011年までBarack Obama(バラク・オバマ)大統領のもとで大統領主席補佐官代理を務め、2012年にオバマ氏が再選された選挙戦ではキャンペーンマネージャーを務めた。

関連記事:Uberが「ギグワーカーは個人事業主」というカリフォルニアの住民立法を世界展開

画像クレジット:Chip Somodevilla/Getty Images


【原文】

After serving as Obama-Biden campaign manager and White House deputy chief of staff and now living in San Francisco and working with the tech sector, I am hopeful about the Biden-Harris administration’s ability to put in place smart policies and regulatory stability to further unleash the industry’s vast potential — not to mention the effect their calm and measured leadership could have on our greater economy.

However, with new leadership comes new perspectives on many of the most critical issues facing Silicon Valley. While the bonds between the innovation economy and the Obama-Biden administration resulted in national prosperity, the tech sector is now intertwined in nearly every facet of American life.

The resulting tension means the new administration will take its role as regulator seriously and investors and businesses alike should not overlook how quickly President Biden will move on policy — especially as it relates to the future of work and getting the U.S. economy back on track.

There’s no question the gig companies had a banner year in 2020. Even with ride-hailing usage down dramatically, the strength of meal, grocery and just about everything else delivered combined with the victory in California of Proposition 22 has driven up market caps and positioned many startups for going public. Yet, while the West Coast may be feeling emboldened, the Beltway has another trajectory in mind.

Congress has been working on gig worker classification legislation named the PRO Act for months. The bill closely mirrors the maligned California Assembly Bill 5 that Proposition 22 mostly reversed. It’s broadly supported by labor and could see some traction this year. Labor is already working hard to line up support from the various congressional coalitions, and at the same time gig economy companies are gearing up to fight it with their unlimited resources.

The question is — what will President Biden do? Long ago he voiced his support for AB 5 and laid out plans to solve worker misclassification during the campaign, but he’s also hiring and appointing staff to the administration deeply experienced in tech. President Biden has been governing longer than most startup founders have been alive, he’s a master at understanding forces in Washington and how to reach a compromise. He knows that what’s rarely discussed during legislative debate is how the law will actually be implemented.

We shouldn’t be surprised if the Biden administration convenes the Department of Labor and the industry to determine how companies actually enact worker protections.

Despite most bills being thousands of pages, they’re rarely prescriptive. Those details are left up to agencies. President Biden has oversight of the Department of Labor, which, if the PRO Act is passed, will be responsible for its implementation.

We shouldn’t be surprised if the Biden administration convenes the Department of Labor and the industry to determine how companies actually enact worker protections. President Biden’s nominee for Labor Secretary, Boston Mayor Marty Walsh, while a staunch supporter of labor, is also well-regarded by the business sector as someone they can work with and reach a compromise.

We just have to look to the states to understand why this outcome is so plausible. The gig companies already have Proposition 22-type campaigns underway in six states and are running legislation in a half dozen more. By the end of 2021 there will be law on the books codifying worker protections in nearly a third of the country, modeled on Proposition 22.

This kind of momentum is hard to ignore and labor knows it. Although labor is aligned in its support of the PRO Act, the alignment becomes blurry when considering state action. For example, many northeastern states have had a thriving black car and taxi industry for decades.

This means labor’s position on gig laws in New York and New Jersey are quite different than places like Washington state or Illinois where gig workers are still relatively new and the ink is drying on regulations supported by Uber and Lyft just a few years ago. Labor is aligned as much as they can be and enough to support the PRO Act, but there isn’t a national movement and that leaves room for compromise.

This is all good news for the tech sector. It’s a fantasy to think that regulation wouldn’t eventually come to protect the very workers who power the gig economy. And that’s a good thing — tech has a moral responsibility to do right by its workers. However, those regulations shouldn’t and won’t be imposed on tech. Rather it will take weeks and months of campaigns and bills winding their way through the states and Congress, culminating with negotiations and compromises.

Or maybe even years of renewed regulatory processes. All of which will be overseen by a new president who has witnessed firsthand over his career how innovation can help the nation grow and recover.

After four years of Trump’s stubborn denialism, magic thinking and economic harm, Biden will promote policy rigor, public spiritedness and private sector ingenuity to work together for innovative solutions. It will be hard work and I promise you it won’t be pretty, but we should expect the dawn of a new era of U.S. tech-driven dynamism.

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa)


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