スピントロニクス素子で従来品の500倍という世界最高感度のフィルム型ひずみゲージを製作、仮想現実などでの応用に期待
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本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
(a)引っ張り試験機でプラスチックフィルム(フレキシブル基板)上の磁気トンネル接合を引っ張っている様子(上)と、試料の模式図(下)。(b)磁気トンネル接合の素子抵抗の引っ張りひずみによる変化。挿入図は磁気トンネル接合の模式図。ひずみが0.2%~0.4%の範囲で、素子抵抗が200%近く減少していることがわかる(つまり、ゲージ率が約1000)。同研究では、抵抗が変化し始める閾(しきい)ひずみ(図では0.2%程度)をゼロにする方法も提案
大阪大学産業科学研究所の千葉大地教授ら研究グループは2月16日、磁気トンネル接合素子を使った世界最高感度のフィルム型ひずみゲージを製作したと発表した。
ひずみゲージとは、材料が外力に比例して変形するひずみを電気信号として検出するセンサーのこと。構造物のひずみや圧力検出、人体の活動から生まれるデータのセンシングデバイスなどにも活用されている。今回製作したフィルム型ひずみゲージは、金属箔ひずみゲージに比べて感度が約500倍と高く、まったく新しいスピントロニクスの社会実装の道を拓くという。
磁気トンネル接合素子は、ハードディスクの読み取りヘッドや固体磁気メモリーなどに利用されているスピントロニクスデバイス。絶縁体ナノ薄膜を磁性ナノ薄膜で挟んだ構造をしており、2つの磁性体の角度がずれることで電気抵抗が変化するというもの。研究グループは、柔らかいプラスチックフィルム(フレキシブル基板)上にこの素子を形成した。このひずみゲージは、ひずみ検出感度の指標であるゲージ率が1000という非常に大きな値を示した。これは、現在普及しているフィルム型の金属箔ひずみゲージの500倍の感度に相当する。
今回製作したひずみゲージは、1mm四方の1/6800という小さなものだが、固体磁気メモリーで使われている素子は、さらにその数十万分の1のサイズとなっている。そのため、もっとずっと小さなひずみゲージを作ることも可能であり、これをフレキシブル基板上に集積化すれば、「緻密なひずみのマッピング」も実現するという。また、柔らかい基材にこの機能を持たせることで、生体親和性の高いひずみゲージを作ることができ、生体の動きの精密測定が求められる医療、スポーツ科学、仮想現実などの分野での応用も期待できる。
この成果は、スピントロニクスに「力学情報のセンシング」という新しい応用の道を拓くものであり、より解像度の高い力学情報の提供が可能となり、「新たな産業を生み出すキラーデバイス」になると研究グループは話している。