今がオープンソースから「ポストオープン」へ踏み出すとき。オープンソースの中心人物ブルース・ペレンズ氏が提案する、開発者にお金を分配できる新たな仕組み[前編]

今回は「今がオープンソースから「ポストオープン」へ踏み出すとき。オープンソースの中心人物ブルース・ペレンズ氏が提案する、開発者にお金を分配できる新たな仕組み[前編]」についてご紹介します。

関連ワード (実現、支払、責任等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、Publickey様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


Bruce Perens(ブルース・ベレンズ)氏は、オープンソースの定義とオープンソースのライセンシングのルールを作り、オープンソースを世界に初めて発表した人物であり、DebianプロジェクトとOpen Source Initiativeの創設者でもあります。オープンソースにおける中心的な人物です。

そのペレンズ氏は、今年(2024年)2月にロンドンで開催されたオープンソースのイベント「State of Open Con24」の基調講演で、「ポストオープン」と呼ぶオープンソースの新たな仕組み作りを提案しました。

オープンソースは今、大手クラウドベンダがオープンソースを用いて莫大な売り上げを上げる一方で、オープンソースのプロジェクトの多くが資金不足に悩むといった課題を抱えています。

ペレンズ氏は、現在のオープンソースそのものが、この不公平な構造を後押ししていると指摘。その上で、オープンソースのユーザーがオープンソースにお金を払いやすくする仕組みと、そのお金を開発者に分配する仕組みを「ポストオープン」として提案したのです。

この記事では、ペレンズ氏がポストオープンを提案した基調講演「What Comes After Open Source?」の内容をダイジェストで紹介します。

記事は前編と後編に分かれています。いまお読みの記事は前編です。

What Comes After Open Source?

ブルース・ベレンズ氏。

ブルース・ベレンズ氏

私はオープンソースの定義やオープンソースのライセンシングのルールを作り、オープンソースを世界に初めて発表した人物です。

オープンソースのライセンシングのルールを作り、オープンソースを世界に初めて発表した人物

BusyBoxの作者でもあり、オープンソースイニシアチブの共同設立者でもあります。

私たちがいかに失敗したかを話そう

さて、他のみなさんはオープンソースがいかに素晴らしいものであったかを語ろうとしていますが、私は、私たちがいかに失敗したかを話すつもりです。

私たちがいかに失敗したかを話すつもりです

(上記のスライドで50+yearsは間違いとのこと)

私たちのオープンソースのユーザーは世界で最もお金持ちの企業たちであり、実際にGoogleのような企業を生み出すことを可能にしました。

一方で、もしオープンソースの開発者たちがそれらの企業で働いていない場合、おそらく彼らの報酬はありません。OpenSSLはその典型例でしょう。

オープンソースのユーザーは世界で最もお金持ちの企業たちだ

オープンソースが不公平な構造を後押ししている

これはオープンソースが、ソフトウェアを作成しライセンスしている私たちよりも、企業に金銭的な報酬を与えるという、不公平な構造を後押ししているのです。

オープンソースで機能する唯一の収益化モデルはサポートビジネスですが、そこには根本的な問題があります。オープンソースの開発者はサポートビジネスをしたいのではなく、コードを書きたいのです。

オープンソースで機能する唯一の収益化モデルはサポートビジネスだが、そこには根本的な問題がある

また、オープンソースの開発者は、自分たちのような開発者のためにしかソフトウェアを書きません。一般の人たちが使うようなアプリケーションを作ることはほとんどなく、(だからこそ多くのオープンソースソフトウェアは)GoogleやAppleなどが作る一般向けのプロプライエタリソフトウェアを可能にする部品になっているのです。

私たちは一般の人たちにリーチできていないのです。

私たちは一般の人たちにリーチできていない

私たちオープンソース関係者の中には、一般のユーザーが私たちのソフトウェアを実行していないことや、私たちが提供する自由やプライバシーの価値を評価していないことを嘆く者もいます。

しかしそれは私たちが彼ら一般ユーザーにリーチできていないからであって、ユーザーの責任ではないのです。

ユーザーは自分たちのニーズを第一に考えています。だから私たちは、彼らが使いたくなるようなソフトウェアを書く必要があるのです。

オープンソースのフィロソフィーをすべてのユーザーが理解することは期待できないでしょう。それに気を取られてはいけないのです。

オープンソースのライセンスも機能しなくなってきている

さらに、オープンソースのライセンスも機能しなくなっています。現在、(オープンソースであるはずの)有償のLinuxシステムの3分の1が、ソースコードの再配布を禁止するというGPLを回避する条項付きで販売されています。

オープンソースのライセンスも機能しなくなっている

また私は現在、オープンソースライセンスの目的を歪めてしまう、コモンズ条項に関するNeo4jの裁判を傍聴するために裁判所に通っています。裁判所は、条項の追加を禁止するGPLの文言を無効にする略式判決を出しました。これは控訴されるでしょうが、いずれにせよ問題です。

コンプライアンス対応も複雑になってきています。オープンソースのルールに従おうとする企業は、コンプライアンスのためだけに大規模な部署を備えています。

新たなパラダイム「ポストオープン」へ

だからこそ、新たな一歩を踏み出すときなのです。

オープンソースとは異なるパラダイムを、オープンソースの問題点のいくつかに対処するパラダイムを考える時なのです。

オープンソースは続くでしょう。しかし私がここで提案しているのは、オープンソースと呼んではいません。今のところ「Post-Open(ポストオープン)」と呼んでいます。

この提案は実現しないかもしれないし、夢物語かもしれません。しかし、この提案をぜひ最後まで聞いていただきたいのです。

この提案は実現しないかもしれないし、夢物語かもしれない

ポストオープンをどう実現するか

ポストオープンは、現在のオープンソースと比べて、より個人や小規模な団体が活躍するようになります。開発者には正当な報酬を支払い、(ユーザーのコンプライアンス対応を簡単にするため)コンプライアンス調査は年に一度行われるものとします。

ポストオープンのゴールとは

これをどうやって実現するのか? 私は66歳になり、30年前からガンを患っています。今はまだ元気ですが、実現するまで伴走し続けることはできないでしょう。みなさんに託します。

私は66歳になり、30年前からガンを患っている

≫後編に続く。後編ではポストオープンを実現するための具体的な仕組みについて説明されます。

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