第3回:分断された世界をつなぐMDM
今回は「第3回:分断された世界をつなぐMDM」についてご紹介します。
関連ワード (あなたの知らないMDM(マスターデータ管理)の世界--MDMの正しい使い方、ビッグデータ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
これまで2回にわたって「MDMは大変だ」「名寄せは大変だ」と訴えてきた。そろそろマスターデータ管理(Master Data Management:MDM)の明るい面を語らねばなるまい。
筆者はかつて、辛口のコンサルティングを要望され、20倍カレー相当のモノをお出ししたことがある。最後に「確かに要望通りであるが、最終報告には夢が欲しい。ホンワカ甘い人に交代してくれ」と言われクビになった。
ショックだったが、明らかに自分の失敗である。「包丁人味平」を年配の方はご存じであろう。料理バトルの草分け的なマンガである。そこに出てくる「味平カレー」は、最終的には水を添えることで、激辛にもかかわらず各自で辛さを調整でき、万人が美味しいと思えるカレーが完成した。
読者の皆さんも他山の石としていただければ幸いである。コンサルティングに限らない。企画や報告にも通用する教訓だ。さて、今回のテーマはMDMにおける「つなぐ」役割になる。
共通マスターとMDMとは、似て非なるものである。より正確に言えば、MDMとは強化された共通マスターだ。共通マスターが国語辞典なら、MDMは国語辞典+英和・和英辞典に相当する。
共通マスターとは、全社で同じマスターを使いましょうということで、昨今のビジネスにおいて英語が必須だから、公用語を英語にしようというのに近い。グローバルでは便利だが、平均的な日本人には負担になるのも確かである。それを補ってあまりある海外ビジネスがなければメリットはない。
MDMは、全社の共通マスターを決めるとともに、各国用の翻訳辞書もあわせて整備する。業務用の自動翻訳を想像していただきたい。日本人は日本語を正しく使えさえすれば、共通マスター経由で何語でもコミュニケーションが取れるようになる。
ここで言う翻訳とは、自然言語に限らない。MDMは人とシステムの翻訳辞書でもある。辞書さえあれば、人は「顧客」と言い、営業支援システム(SFA)では“customer”、販売管理では“CUST”で一向に構わない。同じ「顧客」を指すことが分かるからだ。新しい国が登場しても、新しく会社を買収しても、パッケージを乗り換えても、クラウドに移行しても、やることは同じ、翻訳辞書の編集だけである。
たった一つの共通マスターしかなければ、都度変更が発生する。共通マスターなので、全ての関係者、全てのシステムと調整せねばならない。
人の調整には反対がつきもので、システムの調整にはコストがつきものだ。たとえコストが無視できても、リードタイムが月単位で必要となり、数カ月あれば、次の変更が飛び込んでくるものである。
まるで10分遅れの時計のようなものだ。永遠に正しい時刻を指すことはない。時刻が正しくないのに、時間を守ろうという掛け声をかけても虚しいだけだ。データを頼ることができて初めて、データを基に意思決定しよう、データドリブン経営をしようという掛け声が意味を持つ。
ここでは、MDMが「つなぐ」ことについて時系列で語ってみたい。