進化するブレインコンピューターインターフェース–実用化への期待と課題
今回は「進化するブレインコンピューターインターフェース–実用化への期待と課題」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
Facebook(メタバースの世界に参入する前にはその名で知られていた)が、ブレインコンピューターインターフェース(BCI)テクノロジーへの投資を開始し、頭で考えた内容をテキストに変換できるような方法を模索すると発表した際には大々的に報道された。Facebookはテクノロジーを用いた新たなコミュニケーション方法の開拓に興味を抱いていた。そのシステムとは、ユーザーが自ら喋ろうとイメージするだけで、脳から発生した電気インパルスをテキストに変換するデバイスだ。
Facebookは頭部に装着し、言語を捕捉する、すなわち脳からの電気信号を翻訳してデジタル情報へと変換するデバイスを開発したいと考えていた。ソーシャルメディア企業がコンシューマー向けとして初となる言語関係のBCIを開発することになるという素晴らしい将来が示されたにもかかわらず、同社は2021年にそのプロジェクトの目標を見直し、それまでの言語研究の成果をオープンソース化した上で、言語ではなく動作に関する神経信号を捕捉するBCIに注力していくという新たな目標を設定した。Facebookは目標を1歩後退させたとはいえ、いくつもの研究所が言語をテキストや話し言葉に置き換える上でのブレークスルーを達成している。これらのプロジェクトでは、脳の表面に貼り付けた電極を用いて脳本体から直接データを取得している。その理由は、ウェアラブルデバイスを使用するシステムとは異なり、埋込み型の電極を使用するBCIは信号対雑音(S/N)比に優れているため、脳の活動をずっと詳細かつ具体的に記録できるようになっているためだ。
Facebookのリサーチパートナーであるカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)は2021年、同校のChang研究所(同施設の責任者である神経外科医のEdward Chang氏にちなんだ名前だ)が研究実験の一環として、思考をテキスト化するBCIを作り上げたと発表した。
このシステムは、ポリマーシートに配されたセンサー群を使用しており、それを脳の表面に配置することで、ユーザーの神経信号をピックアップできるようになる。ピックアップした情報はその後、機械学習(ML)システムによって解読され、ユーザーが口にしたい言葉へと組み立てられる。
このシステムの第1号ユーザーは、脳幹部の卒中によって頭部と首、四肢の運動能力を著しく失い、話すこともできなくなった人だった。その人は脳卒中を患って以来、野球帽の先につけた指し棒で画面上の文字を示すことでしか意思疎通を図れなくなっていた。
健常者の場合、脳からの信号は脳の電気配線に相当する神経を介し、言葉を発するための筋肉へと伝えられる。この被験者の場合、脳と声帯筋をつなぐ神経が実質的に切断されていたため、話をしようとした場合に電気信号は発生するものの、その信号を目的地に伝えることができないでいた。BCIは脳の言語中枢からこれらの信号を直接ピックアップして分析し、発話に関係するどの筋肉を動かそうとしているのかを見いだし、その情報から口に出そうとしている単語を判断することで、筋肉の運動になるはずだった信号を電子的なスピーチに変換するのだ。このようにして、被験者は脳卒中以来15年にわたって使用していた方法に別れを告げ、ずっと迅速かつ自然な意思疎通を図れるようになった。