VR空間での業務、集中しやすいが生産性は低下との実験結果
今回は「VR空間での業務、集中しやすいが生産性は低下との実験結果」についてご紹介します。
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さまざまな大手IT企業が、仮想現実(VR)とメタバースで未来の職場を変えるというビジョンを掲げている。しかし、もし生産性の面でメリットがなければ、このコンセプトをビジネスユーザーに受け入れさせるのは大変かもしれない。
ドイツのコーブルク大学に所属するヒューマンコンピューターインタラクションの専門家、Jens Grubert博士が率いるチームが行った研究によれば、そうしたシステムが、一般的な労働者が使えるものになるまでには、まだ相当な改良が必要だという。
Gurbert氏らは、「Quantifying the Effects of Working in VR for One Week」(VRヘッドを使用した1週間にわたる労働の効果の定量化)と題した査読なし論文の中で、「想定されたとおり、この研究では、VR環境は、ほとんどの評価指標で有意に評価が低いことが明らかになった」と述べている。
この調査では、16人の被験者が1週間にわたって働く様子を調べた。実験では、被験者の半数がVRヘッドセットを着用して5日間にわたって1日8時間業務を行い、残りの半数はデスクトップ環境で業務を行った。その後、両方の被験者グループが条件を交換して同じ実験を行った。
この研究の目的は、デスクトップを使った作業環境を、平均的なVR環境で置き換えた場合の効果を測定して定量化することだ。
デスクトップを使った環境では、参加者はブラウザーと「Chrome Remote Desktop」を使用して作業用のコンピューターに接続し、業務を行った。また、VR環境にはユーザーの手の動きを追跡できる「Quest 2」が使用された。実験に使われたキーボードは、タッチパッド内蔵の「Logitech K830」だった。
すべての被験者はコーブルク大学の職員だった。
実験では、デスクトップを使用していた被験者は、ヘッドセットを使用していた被験者よりも生産性が高いことが明らかになった。また、VR使用者はデスクトップ使用者よりも不満度のスコアが有意に高かった。Gubert氏らは、プレゼンス(実在感)、「マイナス効果」、満足感、不安感、視覚疲労、心拍数も測定したが、デスクトップ使用者の数値は、有意差が認められなかった心拍数以外のすべての測定値でVR使用者よりも評価が高かった。被験者のうち2人は、VR環境を使い始めた最日に、偏頭痛、吐き気、不安感のために脱落した。