中国政府がスマートウォッチで児童を見守り–そのメリットとリスクとは?

今回は「中国政府がスマートウォッチで児童を見守り–そのメリットとリスクとは?」についてご紹介します。

関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 中国の重慶市で、留守児童問題をITで解決しようとするソリューションの運用が始まっている。大人たちが内陸の農村から沿岸部の大都市に出稼ぎに行くと、その子どもは祖父母の下で学校に通うのだが、親に比べると管理不足になりがちである。変化が速い中国において、10年もすれば社会環境は大きく変わってしまう。そんな中、祖父母たちの時代遅れの育児協力や学校とのトラブルが問題になっている。

 「スマート子ども見守りモデル地区」となった重慶市北碚区では、親のいない児童や生活な困難な児童763人(6月初旬報道)を対象に、24時間体制のオンラインサービスを提供している。対象の児童に専用のスマートウォッチとプラットフォームを用意し、その位置情報や健康データなどをオンラインで随時確認しつつ、学校担当者や地区の児童担当者が定期的に家庭訪問して様子を記録している。児童が連絡を取りたい時や、児童に連絡が必要な時は音声でやりとりする。

 ある地区担当者は「20年間こうした活動に携わってきた。毎月対象の家庭を訪問して状況を聞いていたが、今は児童に直接話を聞くことができる。いざというときはボタンを押すだけで電話がかかり、私の下には助けを求める児童の情報が通知される。以前よりも効率が良くなり、児童を保護しやすくなったと感じる」とコメントしている。

 また別の地区担当者はこう語る。「担当地域には35人の留守児童がいる。子どもたちの要望は、宿題を見てほしい、美術を習いたい、音楽をやりたい、踊りに興味があるなどそれぞれ。担当地域にはそういったニーズに応えるものがないため、児童向けプロジェクトの下で、今後は趣味を支援する教室を開こうと考えている」

 役所が先導するこうしたスマートプラットフォームでは、何か異常を検出すると、児童への支援を分析・評価し、自動で指示を出す仕組みになっている。将来は蓄積した児童の行動データを活用し、より的確な指示が出せるように改善していくという。

 このシステムを提供したのが、上海恩谷という企業だ。元々は介護施設や一人暮らしの高齢者を、スマートウォッチやクラウドプラットフォームを活用して管理するためのシステムだ。こうしたソリューションは他社も開発しているが、これを高齢者と子どもの家庭にも適用したというわけだ。

 モデル地区となった重慶市北碚区は、100万元余り(1元は約20円)の予算を投じ、実証を行っていくという。報道では特に保護が必要な児童763人を対象として運用しているが、同区では「区内12万7000人の未成年者の健全な成長を引き続き見守っていく」としており、今後は未成年者全体に波及していく可能性を示唆している。ビッグデータの収集と未成年者の保護という観点ではありそうだが、各地区担当者の負担を考えると実現性には疑問が残る。

 留守児童問題の解決は、中国政府の数ある五カ年計画のうちの一つである。重慶市北碚区のモデルが中国全土に広まるかどうか分からないが、何かしらのスマートソリューションが普及していくだろう。そうすれば、中国全土で(少なくとも)親不在の子どもを保護すると同時に、監視下に置けるようになる。本来は学業や相談、安全のためのシステムだが、それとは別の目的で利用される懸念がある。実際、この数カ月間でも新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためのシステムが別の目的に転用された事例もあり、児童見守りシステムの転用リスクがないとは言えない。

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