DXはクラウドへの移行ではなくクラウドで変革すること–SAP首脳に聞く戦略
今回は「DXはクラウドへの移行ではなくクラウドで変革すること–SAP首脳に聞く戦略」についてご紹介します。
関連ワード (経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
SAPのエグゼクティブボードに2021年に就任したScott Russell氏は、カスタマーサクセスの責任者としてセールス、サービス、パートナー、顧客とのエンゲージを見ている。同氏に、SAPのクラウド戦略、サステナビリティー(持続可能性)、顧客体験(CX)の取り組みを中心に聞いた。
–SAPは「サプライチェーン」「ネットワークエコノミー」「サステナビリティー」を大きな柱としています。この文脈で日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)をどう見ていますか。
SAPが掲げる3つの柱は、日本企業の取り組み課題に合致します。特にサプライチェーンとサステナビリティーは、多くの日本企業の優先順位に入っています。
サプライチェーンのレジリエンス(耐性や回復力の意味)のためには、デジタルプラットフォームが不可欠です。日本企業は、デジタルプラットフォームを単にITシステムを動かす基盤と考えているところが多く、その場合、プロセスの一貫性は得られますが、迅速、リアルタイムな意思決定を可能にする俊敏さは得られません。また、サステナビリティーでは、コミットをしようとしてもオペレーション面での課題を抱えているところが多いのです。
SAPは、ミッションクリティカルなシステムをクラウドで動かしてサプライチェーンのレジリエンスを獲得し、サプライヤーネットワークに接続して、サプライヤーと効率良く取引をしたり、顧客や提携先とシームレスにデータを共有したりできるよう支援します。オープンで持続性のある方法によって実現します。SAPのシステムは、現在これまでの売り上げや純利益に加え、「グリーンライン」を管理することができます。
–SAPのクラウド事業について教えてください。2022年の第1四半期は前年同期比31%増、第2四半期は同34%増で成長しています。成長の要因をどう分析していますか。
「S/4 HANA」の本番稼働数が2万近くに上っており、第1四半期では、新たに500社以上が加わりました。これに加え、「SAP Business Technology Platform」やその他のクラウドソリューションも好調です。
SAPは、10年以上前からクラウドへの移行を進めており、ここ2年で潮目が変わったと感じています。コロナ禍の影響はもちろんですが、2021年に発生したスエズ運河での座礁事故や地政学的な要因によるサプライチェーンの崩壊の影響が大きいのです。企業は、顧客へ継続的にサービスを提供するため代替のサプライソースを探すなどの取り組みが必要にあり、これがクラウドでビジネス変革を進める動きにつながっています。クラウドへ容易に移行できる「RISE with SAP」を2021年1月に発表し、われわれの予想を上回るペースで成長しています。
SAPが大切にしており、他社との差別化になっていることとは、SAPはクラウドに移行することではなくクラウドでイノベーションを起こすことを支援できる点です。そこで重要な役割を果たすのが、プロセスマイニングの「SAP Signavio」です。システムを理解して業務のボトルネックを探り、最適化を図ることができます。デザイン思考などの手法も経験とノウハウを積んでいます。
トレンドとしては、クラウドはこれまでLOB(事業の現場)が中心でしたが、ミッションクリティカル(経営の中核)のクラウド化が始まっており、日本でも同じトレンドを感じており、大企業が本格的に動き始めたと感じます。CVS、Accenture、Microsoft、IBMなどがRISE with SAPを使ったクラウド移行と変革を進めています。
日本でもパナソニックがRISE with SAPを採用してエンドツーエンドでのビジネスプロセス変革を進めています。市場にはSaaSが溢れていますが、これらでは部分最適化しかできません。それでは変革ができないことを理解してのことです。
このようにSAPには、変革に必要な複数の機能を下支えするプラットフォームがあり、企業の変革を支援できます。
–2027年に「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)のサポートが終了します。実際のところ、顧客のマイグレーションは進んでいるのでしょうか。
SAPは創業50年を迎え、ずっとわれわれの技術を使ってビジネスを動かしている顧客がたくさんいます。これはわれわれの誇りでもあります。同時に、将来はクラウドであることにどの企業も異論がないでしょう。われわれは、変革を「アズ・ア・サービス」で支援していきます。あらゆる顧客がマイグレーションの計画を持っています。
われわれは金融市場向けのレポートで、2025年に最低でも220億ユーロ(約3兆円)のクラウド売上高を見込めるという予測を出しています。クラウド事業の成長は年率25%を見込んでいますが、既に2022年の第1四半期、第2四半期の業績報告書では、これを上回るレベルになっています。