業務自動化に向けてRPAの高度利用を推進するJCBの工夫
今回は「業務自動化に向けてRPAの高度利用を推進するJCBの工夫」についてご紹介します。
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組織導入が進んだロボティックプロセスオートメーション(RPA)は、繰り返し行う人手による定型的な事務作業などの省人化に貢献するが、業務全体での効率化や作業工数の削減のためには、より高度な使い方が求められる。
業務改革などをテーマにNTTデータが10月13~14日に開催したカンファレンス「SuccessStoryTour in WinActorラウンジ’22」では、ジェーシービー(JCB)が「JCBが見据えるオペレーション基盤の高度化戦略」と題する講演でRPA運用の高度化へ向けた取り組みを紹介した。
同社は、2017年以前からRPAの導入検討と各種実証を重ね、2018年にNTTアドバンステクノロジの「WinActor」を採用し、全社導入をスタートした。当初は60の事務を対象として適用業務を順次拡大し、現在では約500の事務でRPAを運用している。同社でRPAの推進を担当するのが事務企画部になる。
事務企画部 企画グループ 主任の小野雄太郎氏によると、事務企画部は全社的な業務運営の品質維持やRPAなどを活用した効率化の推進、安定的な事務の遂行を担う。RPAについては推進活動を統括し、開発や運用ルールなどの整備、ライセンスやシナリオ(RPAで実行する処理内容など)の管理を担当する。ユニークなのは、事務企画部とエンドユーザー部門との間に、「Factory」というRPAの開発機能を置いている点だ。
小野氏によれば、RPAの開発は中央集権型と現場開発型に大別される。前者には開発品質の安定性や保守のしやすさ、ガバナンスに優れる反面、開発スピードは遅くなる。後者では、開発スピードが速いものの、開発品質や保守性、ガバナンスは前者よりも難しくなる。同社では、事務企画部とエンドユーザーの間に「Factory」を置くことで、「現場現場の業務をよく知りながらも開発に集中できる」(小野氏)ようにし、中央集権型と現場開発型のメリットを両立させるアプローチを採用している。
RPAの推進により、作業工数の削減による従業員の負荷軽減と人的リソースをより付加価値の高い業務に割り当てられるなどの効果を得たが、特に大きな効果がヒューマンエラーの低減になるという。「人の手によるヒューマンエラーの削減にはどうしても限界があるため、RPAによって業務品質の向上につながっている」(小野氏)
しかし、RPAの利用規模の拡大に応じて保守工数も増える課題を抱えるようになった。 事務企画部 企画グループ 次長の堀場慎一郎氏は、「特効薬はなく、地道に工夫している」と述べる。ここでは、関連部署やベンダーなどから常に最新の情報を収集するようにして製品のサポート終了といった状況の変化に対応しているほか、管理するRPAの情報を常に最新かつ詳細に把握することで、影響などの特定を精緻化している。また、開発ルールなどを整備して属人的な仕様を排除し、保守や改修などを効率化しているとのことだ。
堀場氏は、従業員が行っていた多くの事務作業をRPAに置き換えることができたが、より高度にRPAを活用していくには、「品質」「コスト」「納期」のバランスに配慮する必要があると指摘する。
「個人情報を取り扱うような業務では極めて高い水準の信頼性を担保しなければならず、決済インフラも安定させなければならない。ヒューマンエラーの削減に限界があり、コロナ禍で人的リソースの確保が困難になる局面もある。自動化は必須だが、全てを自動化、システム化するのは現実的ではない。優先順位を決めて(業務にまつわるさまざまな)リスクを低減させていくことが肝心」(堀場氏)
そこでRPAに、ワークスフローやビジネスインテリジェンス(BI)、業務プロセス管理システム、ローコードといった汎用的な業務支援のテクノロジーツールを組み合わせて活用し、業務のさらなる自動化を推進していこうとしている。「汎用的な業務支援ツールを活用すれば(高度なソフトウェア開発スキルを持たない)業務担当者でも開発に取り組める」と堀場氏。さらに、複数のシステムを連携する機能としてもRPAやAPIなど活用し、システムをまたいだ業務オペレーション全体の自動化を進めていく考えだ。
こうして現場レベルでの業務の自動化とヒューマンエラーの排除による業務品質の向上を推進することで、顧客にとって安全・安心な決済インフラの提供にまい進していくとしている。