第56回:IT予算と賞与、ひとり情シスはどちらが欲しい?
今回は「第56回:IT予算と賞与、ひとり情シスはどちらが欲しい?」についてご紹介します。
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大手企業には、まだ執行されていないIT予算や、予定が変更されたために使途の定まっていない「余り予算」などがよくあります。個人の買い物でしたら一旦貯金してから翌年以降の使い道をゆっくり考えることもできますが、大手企業では年度内に予算を消化しなければならないため、そういった企業の担当となったITベンダーのセールスチームは年度末に向けた情報収集に余念がありません。そのため、その企業の余り予算と喫緊の課題を把握し、予算内に収まる提案を迅速に作成して上層部にアプローチするという戦略を取ります。
しかし、従業員300人までの中堅企業の場合、IT予算を定めている企業は半数にも満たしません。毎年の支出を計上する一方で、事前に予算枠を定めてITに投資しているというわけではありません。中小企業ではなおさらで、IT支出が予算化されていないことも多く、必要なIT機器やサービスなどはその都度上申して決裁を仰ぐことになります。このことは、昨今のクラウドサービスをはじめとするサブスクリプション費用への理解を得ることの難しさにもつながっています。
新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っている世情ですが、業績を伸ばし続けている企業は少なくありません。業績が伸びている時の社内のムードはとても良いのですが、忙しさから社員が疲弊し始めていることもあります。そのような時にはどこからともなく「経理部長の機嫌がいいらしい……」「今期は決算賞与があるらしい……」といううわさが聞こえてきます。そのうわさの広がりとともに社内のムードもさらに良くなっていきます。
決算賞与とは、会社の業績が良く、利益を社員に還元する時に支給される臨時の賞与です。夏と冬に支給されることが多い通常の賞与とは異なり、毎年必ず支給されるものではありません。ただ、予想以上に業績が良かった時、その利益から多額の税金を支払うのであれば、その分を社員に還元することで、節税対策になったり、会社の士気が高まったりといった効果が見込めます。
とはいえ、資金繰りが苦しくなった時のことを考えて内部留保に回す企業も少なくありません。上場していない中堅中小企業では、新たな資金を外部から調達するのが難しいため、利益を内部留保して自己資本を増やすことで将来の準備をするのです。
社内のIT化やデジタル化を進める上で、現場の協力は不可欠です。しかし、「余計な仕事が増える」「慣れたやり方を変えたくない」「既存のシステムで問題ない」など、一般的に新しいものに対しては拒絶反応を示すものです。しかし、これは「理由なき反抗」をしているわけではありません。余計なIT支出を増やすくらいなら、給与や賞与などで社員に還元すべきだという現場の意見でもあります。過去に大型投資をしてIT環境の構築を目指したけれども、あまり効果を実感できなかったという苦い経験が背景にあるケースもあります。「またコンピューターを買うのか……」などと冷めた見方をする人もいるでしょう。
利益が1億円あるとして、その半分でもIT投資に回せるとすれば、さまざまな強化ができるはずです。社長もそれを理解していますが、本当に必要なものだけに最低限の投資をする従来のスタンスは簡単には変わりません。また、利益が出たら常に社員に還元したいと思う社長も多いのです。折しも働き方改革や人材不足の時代です。人材の採用や定着は重要な企業戦略ですので、従業員への利益還元を優先する方針も理解できます。
しかし、どこかのタイミングでIT活用によって業績が向上し、決算賞与が支給されたという成功体験を作り、社員と共有することが必要かもしれません。こうした転機がなければ、現状を変えていくのは難しいでしょう。話は戻りますが、ひとり情シスはIT予算と賞与のどちらが欲しいかと聞かれたら、両方とも欲しいと望むはずです。