オラクル、OpenJDKに静的なネイティブイメージの生成機能を組み込む方針を明らかに。GraalVMのOpenJDKへのコントリビュートで

今回は「オラクル、OpenJDKに静的なネイティブイメージの生成機能を組み込む方針を明らかに。GraalVMのOpenJDKへのコントリビュートで」についてご紹介します。

関連ワード (大幅、完全、応用等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、Publickey様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


オラクルは先月(2022年10月)に米ラスベガスで開催したJavaOne 2022で、GraalVM CEのJava関連コードをOpenJDKコミュニティに寄贈すると発表しました。

Excited about @GraalVM JIT and Native Image becoming part of OpenJDK!#JavaOne pic.twitter.com/al1nHTl2RW

— GraalVM (@graalvm) October 18, 2022

参考:[速報]オラクル、OpenJDKコミュニティにGraalVM CEのJava関連コードを寄贈すると発表。JavaOne 2022

このとき、GraalVMのJavaのJITとネイティブイメージの機能がOpenJDKに寄贈されると説明されましたが、より詳細な説明が10月25日付けのGraalVMのブログに投稿された「Oracle Contributing GraalVM Community Edition Java Code to OpenJDK」で行われています。

fig

この中で、将来のOpenJDKでは静的なネイティブイメージの生成機能を備えるようにする、という方針を明らかにしています。

GraalVMのJava JITコンパイラとネイティブイメージ関連を寄贈

GraalVMは10年前、Oracle Labsの研究プロジェクトとして始まったもので、OpenJDKにはない2つの大きな特徴を実現しました。

1つ目は、JavaだけでなくPythonやRuby、R、JavaScriptなど複数のプログラミング言語のランタイムとなる「多言語対応」です。GraalVMだけでさまざまなプログラミング言語の実行が可能です。

そして2つ目が、実行時に動的にCPUのネイティブコードを生成することで実行速度を高速化するJIT(Just-in-Time)コンパイラだけでなく、実行前にコードをコンパイルすることで、高速に実行可能な静的ネイティブイメージを生成する機能を備えていることです。

そしてOpenJDKに寄贈されたのは、Javaに関するJITコンパイラとネイティブイメージの部分であることが改めて説明されました。下記は「Oracle Contributing GraalVM Community Edition Java Code to OpenJDK」からの引用です。

Oracle plans to contribute the most applicable portions of the GraalVM just-in-time (JIT) compiler and Native Image. Oracle does not currently intend to contribute the polyglot technologies supporting other languages such as Python, Ruby, R, and JavaScript. Additional details will follow in the coming months as we move forward through this process.

オラクルはGraalVMの最も応用できそうな部分としてネイティブイメージの寄贈を計画しています。Java以外のPythonやRuby、R、JavaScriptなどをサポートする多言語対応のテクノロジーは寄贈しないつもりです。今後、進捗し次第詳細を説明していきます。

静的なネイティブイメージの実現に進む

今回の寄贈でいちばん注目されたのが、GraalVMのネイティブイメージの機能がOpenJDKに寄贈されることで、OpenJDKがネイティブイメージ生成機能を持つことが期待される、ということでした。

果たしてオラクルは今回、OpenJDKがネイティブイメージの生成機能を備えることを目指すと、次のように明確に方針を表明しました。

Oracle plans to contribute the most applicable parts of the GraalVM Native Image implementation to the OpenJDK Community. Once contributed, the Native Image technology would continue to be developed within the scope of an OpenJDK Project, using the same processes and methods as other OpenJDK development.

オラクルはGraalVMの最も応用できそうな部分としてネイティブイメージの実装をOpenJDKコミュニティに寄贈することを計画しています。コントリビュート後は、OpenJDKの他の部分の開発と同じプロセスと方法を用いて、OpenJDKプロジェクトの範囲内でNative Image技術の開発が継続されます。

Oracle plans to evolve the Native Image technology in the OpenJDK Community to track the Project Leyden specification as it progresses to pave a path to fully-static images in a future release of the Java SE Platform specification.

オラクルはネイティブイメージのテクノロジーをProject Leydenの進捗に合わせてOpenJDKコミュニティにおいて進化させようとしており、将来のJava SEプラットフォーム仕様において、完全に静的なイメージの実現に進もうとしています。

Project Leydenは、Javaの起動時間やピーク性能に到達するまでの時間をできるだけ短くすることを目指すOpenJDK内のプロジェクトです。

Dockerコンテナを基盤としたクラウドネイティブの世界においては、ソフトウェアが瞬時に起動して高速に実行できる性能が重視されます。クラウドネイティブの時代にもJavaが有力なプログラミング言語とその実行系であるために、Project Leydenは重要な責任を負っているのです。

瞬時に起動し、高速に実行できる最も効果的なソフトウェアの形態は、コンパイル済みのネイティブイメージを用いることであることは明らかです。

それゆえ、Project LeydenがGraalVMからのコードの寄贈を受け、静的なネイティブイメージの生成を目指すことは自然なことでした。

そしてGraalVMのネイティブイメージのテクノロジーがOpenJDKに寄贈されることで、ネイティブイメージの生成機能を実現する時間は大幅に短縮されるはずです。

と同時に、すでに実績のあるGraalVMの実装が寄贈されることで初期バージョンからある程度は安定した動作が期待できそうです。

静的なネイティブイメージ機能がOpenJDKに搭載されれば、ほぼすべてのJavaディストリビューションにその機能が搭載され、ほぼすべてのJava開発者はネイティブイメージの生成をできるようになるはずです。

そうなると、Javaはクラウドネイティブにおいて有力なプログラミング言語と見なされるだけでなく、コンパイラ型の言語としてこれまであまりJavaでは書かれなかったような分野を含む幅広い用途に使われ始める可能性があるのではないでしょうか。

関連記事

GraalVMのテクノロジーを用いてJavaのネイティブイメージを生成することは、すでにQuarkusと呼ばれるフレームワークがRed Hatを中心に開発され、商用サポートも行われています。

  • Javaフレームワーク「Quarkus」登場。Javaコードからネイティブバイナリを生成し瞬時にJavaアプリが起動、コンテナへの最適化を実現。Red Hatがリリース

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
Canonicalが「Everything LTS」発表。あらゆるオープンソースを用いたDockerイメージに12年間の長期サポートを提供
Linux
2024-07-03 20:25
マイクロソフト、AIが人間を支援する「Copilot for everything」を推進。3DアニメツールのMayaで自然言語による操作をAutodeskと開発中。Microsoft Build 2022
Adobe
2022-05-26 00:54
メインフレームを作り続けるIBM、クラウドシフトを進める富士通、それぞれの思惑とは
IT関連
2022-04-16 03:59
BSディズニー・チャンネル SD→HD画質に 21年6月1日から
くらテク
2021-04-21 23:21
コニカミノルタとキンドリルが協業–画像IoTを展開
IT関連
2022-06-12 22:39
米テクノロジー大手、次々と採用手控え–グーグルは計画見直し、MSは求人縮小
IT関連
2022-07-26 01:35
欧州人権裁判所は「大規模なデジタル通信の傍受には有効なプライバシー保護手段が必要」と強調
パブリック / ダイバーシティ
2021-06-16 20:21
Windows TerminalがSixel画像表示をサポート。ターミナル画面内で精細なグラフなど表示可能に
Microsoft
2024-08-30 18:13
VMwareの買収に向けて半導体メーカーのブロードコムが交渉中との報道
VMware
2022-05-24 03:24
日立、ブロックチェーン利用の「日立電子署名サービス」を開発
IT関連
2021-03-04 09:43
マッチングアプリのプロフ写真は本物? AIで照合 「Tinder」新機能
ロボット・AI
2021-04-22 15:20
「おそ松さん」実写映画化、ジャニーズ「Snow Man」主演で ネット上では双方のファンが互いに気づかう状況に
くらテク
2021-08-04 16:47
ストレスなく付き合えるリノベ業者を探せるネットワークのEanoが6.5億円を調達、コロナ需要が追い風に
ネットサービス
2021-05-24 06:26
メルカリが暗号資産・ブロックチェーン領域参入、新会社「メルコイン」は暗号資産交換業者として申請予定
フィンテック
2021-04-03 17:29