インボイス制度を機に進める経理部門の「攻め」のデジタル化(前編)
今回は「インボイス制度を機に進める経理部門の「攻め」のデジタル化(前編)」についてご紹介します。
関連ワード (経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
施行まで9カ月を切った「インボイス制度」、また関係する「電子帳簿保存法」について、制度自体の認知は広まりつつある一方、実際の経理現場で行うべき実務対応に関してはまだ浸透していないと感じています。そこで自社で制度対応をしたい方、さらには制度対応をきっかけに自社のデジタル化も併せて推進したいと考える方に向けて、すべき実務内容をお伝えできればと思います。
会社などにおける請求書の処理として、自ら請求書を発行するケースと、取引先などから請求書を受領するケースがあります。2023年10月のインボイス制度施行後では、特に請求書を受領して会計データに仕訳を計上するまでの作業工数が増え、担当者の業務負担が増すことが予想されます。
具体的には、インボイス制度施行後は、請求書を受領した際、その取引先が適格請求書発行事業者かどうかをまず確認し、そうである場合には、請求書がインボイス制度に準拠した様式の適格請求書(インボイス)かどうかをチェックするという2つのプロセスが加わります。
ただ、このように申し上げますと「確かに最初は大変かもしれないが、一度、その取引先が適格請求書発行事業者かどうかを調べさえしてしまえば、その会社に関しては二度と調べる必要はないのだから、実際はそれほど負担にならないのでは」とおっしゃる方もいます。
実はそうではなく、インボイス制度というのは、一度申請登録をしても後からその申請を取り消すことができます。反対に、インボイス制度施行時は未申請で、後から申請登録をするケースも想定されます。つまり、結論として、適格請求書発行事業者かどうかは、一度調べた取引先であっても請求書を受領するたびにチェックする必要があるということです。
適格請求書発行事業者かどうかは、国税庁のウェブサイトで検索可能ですが、そこで全ての請求書について1件1件検索するというのは非常に時間がかかります。さらに請求書がインボイスに該当するかどうかを目視でチェックしなければならないのですから、これらの作業だけでも担当者の負担は大きくなります。この部分を今のうちから人員を補強したり、デジタルツールなどを導入したりして体制を整えておかないと、インボイス制度の開始と同時に、経理業務の他の作業にも影響を及ぼし、月次決算などの遅れにつながる懸念があります。
請求書を目視でチェックした際に、その外形だけで「これは適格請求書発行事業者からの請求書だ」などと100%決めつけてはいけない、ということです。例えば、取引先がインボイス制度を「単に請求書を新しい様式にして発行すればいいだけ」と間違った解釈をして、適格請求書発行事業者の申請をしていないのに請求書をインボイスと同じ様式で発行してしまうケースも今後想定されます。
インボイスには、適格請求書発行事業者番号という、適格請求書発行事業者だけに付与される番号を記載しなければならないのですが、法人の場合、その番号が単に法人番号の頭に「T」をつけただけのものになります。つまり、法人番号自体は、法人を設立した時点で全ての法人に付与されていますので、適格請求書発行事業者でなくても簡単にインボイスと同じ様式で請求書を作れてしまうのです。そのため、インボイス制度施行後は、請求書を受領したら、先に「取引先が適格請求書発行事業者かどうか」を確認し、その上で「請求書がインボイスに該当するかどうか」を確認していただければと思います。
また、請求書を発行するケースについては、適格請求書発行事業者の場合、インボイス制度施行後は発行したインボイスの控えを保管することが義務化されます。例えば、現状は紙で請求書を発行している場合、その控えの分も印刷やコピーなどをしてファイリングをし、キャビネットなどに保管する作業工数が発生し、そのための作業時間や保管スペースなどの確保が必要になります。請求書をデジタルで発行する場合は、インボイス制度施行後も上記のような保管コスト増加の影響を受けにくいといえます。