「ローカル5G」の課題と今後の行方–JEITAの調査から探る
今回は「「ローカル5G」の課題と今後の行方–JEITAの調査から探る」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
地域の社会や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する技術として注目される「ローカル5G」(自営型の第5世代移動通信システム)について、電子情報技術産業協会(以下、JEITA)が先頃、その動向に関する調査レポートをまとめた。それを受けて、普及に向けての課題やロードマップも明示。その内容が非常に興味深かったので、本稿で取り上げて考察したい。
「2020年に商用サービスが始まったローカル5Gは、産業社会のDXを実現するための重要インフラとなり、新たなビジネスの創出が期待されている。これまで3年間、官民を挙げてさまざまな分野で実証実験が行われているが、現時点で実装されたものは極めて限定的で、市場は黎明期を脱していない」
JEITAが運営する「5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアム」(以下、5G-SDC)の運営委員長を務める長谷川史樹氏(三菱電機 通信システムエンジニアリングセンター 標準化担当部長)と、調査WG主査の小林康宏氏(NEC 政策渉外部 担当部長)は、調査レポートの記者説明会でこう率直に切り出した(写真1)。
ローカル5Gは、地域の企業や自治体が自らの敷地内で柔軟に構築し保有できる5Gシステムだ。5Gの特性である高速大容量、同時多接続、低遅延通信が可能な上、国の電波免許制度により許可された周波数を自らの敷地内で占有して利用できるため、外部の電波との干渉による通信品質の低下が起きにくく、安定した無線アクセス環境を構築できるのが特徴だ。
なぜ、黎明期を脱していないのか。調査レポートの作成に携わった小林氏は、ローカル5Gでなければできないことが未確立なことによる「費用対効果の壁」、通信品質や安定性に不確実性が残る「技術的な壁」といった2つの壁を理由に挙げた。
そこで5G-SDCでは、「事業者は今後、何を見据えて事業を進めればよいのか」「普及が進むための条件は何か」といった懸念に対し、ローカル5G関連市場の本格的な立ち上がり時期や、今後の見通しを多角的な視点で把握するために、今回の調査レポートで2030年までのロードマップを策定したという。
ロードマップの話の前に、調査レポートの中で筆者が注目したのは、ベンダーやユーザーなど15社へのインタビューを基にローカル5Gの普及に向けて解消すべき課題などを整理した結果を示した表1の内容だ。5Gの特性やコストといった要点に対する課題などが端的に記されているだけだが、ローカル5Gの現在の問題点について大まかに捉えることができる貴重な資料だろう。