クラウドコンピューティングの今後を考える–ハイブリッドやエッジからAIまで
今回は「クラウドコンピューティングの今後を考える–ハイブリッドやエッジからAIまで」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
世界気象機関(WMO)は、基本的な雲の種類を10種類定めている。雲には、巻雲(すじ雲)、乱層雲、そして曇りや雨の日が多いオレゴン州の定番雲である層雲(霧雲)と、実にさまざまな種類が存在する。同じように、ITの世界で私たちが使っている、巨大なデータセンターに存在する雲(cloud、つまりクラウド)にもやはりさまざまな種類がある。
実際、最近では、ITの世界のクラウドも多様になっている。これは、クラウドがもはやデータセンターだけに収まるものではなくなっているからだ。一部のクラウドは、挙動は同じだが、プライベートな施設に置かれ、完全にオンプレミスで動作している。またクラウドの中には、一般に「クラウド」や従来のデータセンターから連想されるサーバーラック群だけでなく、エッジ(現実世界との接点)にまで広がっているものもある。
「クラウドコンピューティング」という言葉が初めて使われたのは、Ramnath K. Chellappa教授(現在の所属は米エモリー大学)が1997年に行った、「Intermediaries in Cloud-Computing」と題した講演でのことらしい。その後、IT運用におけるクラウドコンピューティングの位置付けは大きく変化してきたし、社会問題の解決に対するクラウドの使われ方も大幅に変わっている。
では、3~5年後のクラウドコンピューティングはどうなっているのだろうか。コロナ禍以降、クラウドには一層興味深い変化が起こっている。2020年以降、クラウドコンピューティングは大きな飛躍を遂げ、多くの企業がたった10カ月で(場合によってはわずか10週間で)10年分の前進を果たした。これは、デジタル情報やeコマースに対する需要が急増したためだ。
クラウドは、必要に応じて規模を拡大可能で、利用量に応じて料金が決まり、一元的に管理可能で、オンデマンドで利用できるコンピューティングインフラだという考え方は変わっていない。クラウドは、スタートアップから巨大企業に至るまで、さまざまな業務形態のビジネスモデルに対応できる。今日のクラウドコンピューティングは、「アウトソースされたデータセンターで、第三者によって管理されているコンピューティングインフラ」だと考えるよりも、これらの特徴に基づいて定義した方が実態に合っている。
クラウドコンピューティングに求められていることに関して言えば、ラックの場所や中身よりも、リソースの管理や、規模拡大の容易さ、ワークロードの分散の方が重要になった。
大局的に見れば、それこそがハイブリッドクラウドやマルチクラウドが台頭している理由だと言える。一部のアプリケーションはパブリッククラウドで素晴らしい効果を発揮する一方、遅延や、ガバナンス、セキュリティなどの理由から、オンプレミスでの運用が望ましいアプリケーションもある。さらに、ソリューションを単一のベンダーに依存することが100%安全とは言えないことから、賢明なリスクヘッジ戦略としてマルチクラウドが台頭している。
マルチクラウドは、企業が抱えている多くの重要なニーズに応えることができる。シングルベンダーによるロックインを防ぐ手段にもなるし、縛られてきたベンダーを切り替える際に発生する膨大なコストを軽減することもできる。また、特定のベンダーに重大な技術的問題が発生した場合や、最悪のケースでは、ベンダーが倒産して業務を停止したような場合に備えたフェイルオーバーの手段も提供してくれる。