富士通、中期経営計画は未達に–実績と手応え、今後の課題

今回は「富士通、中期経営計画は未達に–実績と手応え、今後の課題」についてご紹介します。

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 富士通は4月27日、2022年度(2023年3月期)の連結業績を発表した。同年度を最終年度として取り組んできた中期経営計画は残念ながら未達に終わった。中期経営計画の財務指標として、テクノロジーソリューション事業で営業利益率10%、売上収益で3兆2000億円を掲げていたが、2022年1月時点でこれを修正して営業利益率は9.3%、売上収益は3兆2200億円としていた。今回の業績発表ではテクノロジーソリューション事業の営業利益率が8.3%、売上収益が3兆1765億円で、いずれも計画を下回った。

 代表取締役社長 CEO(最高経営責任者)の時田隆仁氏は、「テクノロジーソリューションの営業利益率が10%に届かなかったのは残念であり、経営として大きな責任を感じている」とコメント。その一方で、「この3年間は富士通を成長軌道に乗せることを使命に、富士通の形を変え、質を変えることに取り組んできた。持続的に成長する企業へ転換できたことを実感している」と総括。「厳しい制約があった3年間だったが、過去最高益となった全社連結業績や、テクノロジーソリューション事業でも確実に収益性を向上させることができた」と自己評価して見せた。

 計画は未達だったものの、2022年度の全社連結業績は、売上収益が前年比3.5%増の3兆7137億円、営業利益が53.1%増の3356億円、税引前利益が55.0%増の3718億円、当期純利益が17.8%増の2151億円で、営業利益は過去最高を更新し、営業利益率は9.0%となった。

 これまでの富士通の業績を見ると、中期経営計画がスタートする前の2019年度の営業利益は5.5%、その前年度は3.3%の水準だったが、2022年度実績の9.0%は大幅な改善である。しかも、2020年度には営業利益で過去最高を更新し、さらに2022年度にも再び営業利益で過去最高を更新。3年間で2度も過去最高益を更新している。

 取締役執行役員SEVP/CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏は、「この3年間は厳しい外部環境下にあったが、(中期経営計画)初年の2020年度に最高益を更新し、2021年度は需給環境の悪化やDX人材施策の実施により、一度減益になったが2022年度はこれまでの取り組みが確実な成果となって表れ、再び過去最高益を更新できた。事業収益性の改善には力強さが出てきており、営業利益の規模を着実に拡大してきた」と総括。「大きな方向性には沿っている」と3年間の成果に手応えを示した。

 特にテクノロジーソリューション事業の中核となるソリューション・サービスは、国内市場の優位性を維持、強化しながら生産性の向上を推進。利益の規模を確実に拡大してきた。磯部氏は、「規模の成長は若干スローだったが、DXサービス領域へのシフト、オフショア開発の拡大、共通費用の圧縮などにより採算性の向上を実現している」とした。実際にソリューション・サービスの営業利益率は12.8%と高水準を維持し、まさに過去最高益達成のけん引役となっている。2023年度の業績見通しでも、ソリューション・サービスを売上収益で前年比9%増、営業利益で911億円の増益を見込み、「『Fujitsu Uvacne』を中心としたDX関連ビジネスを拡大させるほか、デリバリー体制の標準化や付加価値の高いDX案件を増加させ、さらなる採算性の改善を図る」(磯部氏)と、今後の力強い成長を支えることになる。

 財務指標以外でも中期経営計画の成果が出ている。例えば、中期経営計画では、非財務経営指標として「お客様NPS」「従業員エンゲージメント」「DX推進指標」を挙げていたが、「お客様NPSは前回調査の2021年からの改善値として3.7ポイントの上昇を目指していたのに対して結果は18.1ポイントと大きく上昇した。「DXパートナーやICTパートナーとしての推奨度が高まり、それが全体の大きな上昇につながっている」(時田氏)と自己分析した。さらに、従業員エンゲージメントは目標の75ポイントに対して69にとどまったが、DX推進指標は目標の3.5ポイントを超える3.56ポイントで達成した。

 一方、国内では8000人の「ビジネスプロデューサー」へのリスキリングを完了し、有償コンサルティングサービスを提供する人材を900人に拡大。経営課題や社会課題の解決に、中長期的視点で顧客と一緒になって取り組む商談が増加しているという。顧客と社会課題の解決やサステナビリティーに貢献する新たなビジネスモデルを創出する共創案件がこの3年間で全世界160社以上に達したという。

 また、「グローバルデリバリーセンター」(GDC)および「ジャパングローバルゲートウェイ」(JGG)の体制が3万人規模になり、グローバル標準の開発や、デリバリーを通じた生産性および収益性の改善に貢献している。「Palantir」のデータ分析プラットフォームやAIを活用した損益予測、リスク度評価により、プロジェクトにおけるトラブル発生の予防対策を強化し、既に6000プロジェクト以上を点検した実績もある。

 さらに、全社DXプロジェクト「フジトラ」では、約30の変革フレームワークを推進。データ分析を中心に、富士通社内のDX事例をソリューションとして10社以上に提供している実績もあるという。

 そして、なんといっても大きな成果は、「Fujitsu Uvance」の売上収益が2022年度実績で2000億円に到達したことだ。Fujitsu Uvanceは、新たな事業ブランドとして、社会課題を起点に「Vertical Areas」と「Horizontal Areas」から選定した7つの「Key Focus Areas」(重点注力分野)で展開している。

 時田氏は、「7つのKey Focus Areasの中で最も実績が多いのがデジタルシフト。欧州を中心に実績が上がっている。日本市場を中心に、ビジネスアプリケーションではERPのクラウドへのリフトアップ案件が多く、続いてサステナブルマニュファクチュアリングやハイブリッドITの案件が続いている。コンシューマエクスペリエンスやヘルシーリビング、トラステッドソサエティは、まだ貢献が少ないが、今後しっかりと訴求をしていく分野になる」と述べた。

 現在、海外顧客へのサービスが60%を占めており、時田氏は、従来のシステムインテグレーション(SI)よりも大きな利益率を得られるビジネスに成長させていく考えも示す。2023年度以降も、Fujitsu Uvance向けのオファリング開発へ投資していく姿勢を見せ、このビジネスが今後どんな成長曲線を描くことになるのかが楽しみな領域だ。

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