単なるシステム移行でなく、ビジネス変革の推進を支援–SAP首脳が語るカスタマーサクセスの本質
今回は「単なるシステム移行でなく、ビジネス変革の推進を支援–SAP首脳が語るカスタマーサクセスの本質」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、トップインタビュー等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
独SAPのエグゼクティブボードメンバーの一人であるScott Russell氏は、同社のグローバルセールス、サービス、パートナー、カスタマーエンゲージメントをつかさどる組織であるカスタマーサクセスチームを率いている人物。2010年に入社後、SAPアジア太平洋・日本地域(APJ)のプレジデントなどを経て、2021年から現職を務めている。今回は、同氏が来日したのを機に話を聞いた。
–SAPでのカスタマーサクセスの位置付けや役割について教えてほしい。
われわれの製品やサービスを利用する顧客企業が成功を実現できるように支援するのがカスタマーサクセスの役割だ。顧客企業の成功を測定する方法はさまざまだが、SAPでは単に導入社数やユーザー数などの指標だけでなく、顧客企業にとっての成功とは何か、われわれの技術を最大限に活用してどのような恩恵を得られるかといった、より深いレベルで意味を考えている。
業務プロセスをデジタル化して業務効率を高めるだけでなく、ビジネス変革を推進することもカスタマーサクセスの重要な役割になる。企業としてのビジョンやミッションを明確にし、どんな価値を提供できるかを考えることが必要だ。
われわれとしては、この点において多くのチャレンジがあると認識している。デジタル化やグローバル化、法令順守などが求められる中で、日本では特に人手不足が深刻な問題であり、生産性の向上が不可欠となっている。
SAPのテクノロジーによってビジネスプロセスを効率化するとともに、イノベーションにもつながるように支援していきたい。
–「SAP ERP」のサポート終了で「SAP S/4HANA」に移行する企業も多いと思うが、どのような問題や課題に直面しているのか?
S/4HANAへの移行には多くのメリットとともに、さまざまな課題も存在する。これまでのシステムでは、カスタマイズや拡張、アドオンの開発などで複雑化していた部分があるが、「SAP S/4HANA Cloud」に移行すればデジタル化や業務効率化、イノベーションを促進することができる。
移行を成功させるためには、タイムリーかつ費用対効果の高い方法で変革を進める必要がある。そのためには、SAPの最新テクノロジーを活用する方法を明確に計画し、経営者のコミットメントを得ることが重要だ。また、SAPやパートナーと連携して、システムのシンプル化やプロセスの改善を行うことも大切になる。
われわれが提供するソリューション「RISE with SAP」では、ビジネスプロセスの再設計に必要なツールやスキルを提供し、S/4HANAに移行するためのデジタル変革を加速させることができる。豊富な実績を持つパートナーと協力して、顧客企業のビジネスに最適なソリューションを提案する。
例えば、総合水処理企業のフソウは、RISE with SAPを活用してS/4HANAに移行した。12カ月という短期間でデータの活用やプロセスの革新を実現させた事例になる。また、住友大阪セメントは、S/4HANAに移行することでオペレーションのシンプル化を図り、経営リスクを低減させている。
–10月には「SAP S/4HANA Cloud, private edition」の2023リリースが利用可能となった。
2023リリースは、次世代テクノロジーと従来のソフトウェアとの互換性を実現するための主要リリースと位置付けられている。ユーザーに継続的なイノベーション機会の拡大と、クラウド対応への柔軟な道筋を提供することを目的としている。
多くの機能が追加されているが、特に注目すべきはサステナビリティー関連の機能になる。温室効果ガスの排出量や吸収量に関するカーボン情報や、環境・社会・企業統制(ESG)情報など、環境問題に関するデータのオーケストレーションが大幅に進歩している。
また、標準的な業務プロセスやベストプラクティスをビジネスに活用できるだけでなく、社内システムやデータプロセスとの連携や拡張も可能となっている。
–併せて、RISE with SAPに新しい「プレミアム・プラス・パッケージ」も加わった。
プレミアム・プラス・パッケージは、3つの重要な要素を備えている。1つ目は、AIの可能性を顧客企業に提供することだ。同パッケージを活用する企業は、生成AIをはじめとするAIを活用して、複雑な問題に取り組むことができる。
9月にグローバルで発表された生成AIアシスタント「Joule」も活用できるようになっている。Jouleを使えば、シンプルなインターフェースと自然言語を使って、エンタープライズシステムとやりとりできるようになる。
2つ目は、サステナビリティーの領域でさまざまな機能が利用できる点だ。例えば、ビジネスの持続可能性に関する情報を収集し、分析するためのソリューションである「Sustainability Control Tower」や、企業が炭素排出量を管理するためのソリューションとして「Green Ledger(グリーン元帳)」がある。Green Ledgerは、CO2の排出量などESGの取り組みにおける重要な指標を、ERPの中でリアルタイムに管理するものになる。
3つ目が財務機能の強化になる。財務/非財務データによる予測精度を向上させるほか、請求書管理と現金回収プロセスを強化するソリューションを活用し、財務責任者の意思決定を迅速化する。