SBI証券、オンライン取引システムをAWSに移行–新NISAを契機とした口座数の急増が背景に
今回は「SBI証券、オンライン取引システムをAWSに移行–新NISAを契機とした口座数の急増が背景に」についてご紹介します。
関連ワード (クラウド等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は4月23日、SBI証券の保有証券総合口座数、および株取引急増に対応するため、オンライン取引システムを「Amazon Web Services」(AWS)に移行したと発表した。
AWSジャパン 金融事業開発本部 本部長の飯田哲夫氏は、「2011年の東京リージョン開設時は低コストのインフラとして活用されていたが、2017年からは可用性やセキュリティを金融レベルのグレードに高めた。そして2021年以降は金融領域でもクラウド活用がビジネス戦略で欠かせないため、われわれは新しいビジネスの創生や顧客企業同士のエンゲージを変革する戦略パートナーを目指す」という。同社は2027年までに2兆2600億円の国内クラウドインフラへの投資を継続する。
当初からオンライン専業証券会社として創業したSBI証券は、以前からAWSを活用してきた。2017年の住信SBIネット銀行に始まり、2020年は同行のインターネットバンキングで使用するデータベースを「Amazon Aurora PostgreSQL」へ移行させて6年間で約80%超のコスト軽減、「Amazon Connect」によるクラウド型コンタクトセンターも設置した。
2020年のSBIホールディングスとAWSジャパンの業務提携が後押しとなり、2023年にはSBIホールディングス傘下の株式、および電子記録移転権利(セキュリティトークン)を扱う大阪デジタルエクスチェンジの設立を支援。2024年には検索サービス「Amazon Kendra」と生成AIで文書検索システムを構築してSBI生命保険の業務効率化を実現している。
他方で、SBI証券は2023年9月から開始した国内株式売買取引手数料の無料化も注目を集めた。2024年1月から始まった新NISAも相まって、2024年2月には保有証券総合口座数が1200万口座、1日当たりの取引額は2兆円に達するなど、勢いは止まらない。
SBI証券 常務取締役 兼 SBIシンプレクス・ソリューションズ 代表取締役社長の助間孝三氏は、「新NISAを背景に国内の投資機運や潮流は大きく変化し、われわれの想像を超える部分もある。国内最大規模の取り引きを維持し、顧客に快適な投資環境を提供する意味で、システム面での手当というのは非常に重要なテーマ」だと述べながら、口座数や取引量に応じて基盤を拡大するためには俊敏性に欠けるオンプレミスの強化ではなく、冗長構成と安定性を担保する強靱(きょうじん)性を踏まえて、国内オンライン取引をAWSに移行させたと説明する。
さらに助間氏は、「顧客満足度を高めるため、サービスを常にアップデートしていくのも大事だ。実績と安定性を持つサービスと、新しいテクノロジーを生かしたサービスの間にはジレンマがある。ここを解決するのがエンジニア力」だとする。同社の戦略的システム子会社であるSBIシンプレクス・ソリューションズに所属するITエンジニア約600人が、内製開発力の強化と他証券会社に対する競争力にAWSを活用するという。
SBI証券は「Genesis」と呼ばれるコアシステムをAWSの仮想マシンに移行させた。自社の取引システムを兼ねるウェブサイトと、各チャネルから得た注文処理を行う仕組みを2つのアベイラビリティーゾーンで運用している。
SBI証券 執行役員 コーポレートIT部 兼 SBIシンプレクス・ソリューションズ 執行役員 アーキテクト推進部の韓基炯氏は「特徴的なのは『AWS Cloud Development Kit』(AWS CDK)。オンプレミス、クラウドに限らず、弊社は全てをコード化してきた。クラウドリソースのプロビジョニングと管理を自動化するInfrastructure as Code(IaC)もAWS CDKで実装している。もう一つの特徴は、耐障害性テストツールの『Fault Injection Simulator Service』(AWS FIS)を採用した点。一方のアベイラビリティーゾーンで障がい発生時の切り替えをシミュレーションするサービスがあることで、本番環境での運用に至った」という。
クラウド化に成功したSBI証券は今後の取り組みとして、クラウドコスト管理の明確化やマルチリージョン化、社内アプリケーションなどのクラウド対応、2026年までの業務システム移行などを目指すとしている。