生成AIをさらに推進するセールスフォース、カスタマーサービスでの展開
今回は「生成AIをさらに推進するセールスフォース、カスタマーサービスでの展開」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
セールスフォース・ジャパンは、6月に開催した年次イベントで対話型AIアシスタント機能「Einstein Copilot」を10月から日本語ベータ版として提供を開始すると発表した。また、Einstein Copilotを用いて業務を自動化する「Einstein Actions」を同時に、セールスおよびカスタマーサービス向けに提供する。カスタマーサービス領域における生成AIの現状や方向性についてSalesforce Service Cloud 最高プロダクト責任者のRyan Nichols氏に聞いた。
「Service Cloud」は、コンタクトセンターなどの顧客対応や保守サービスでのカスタマーサービスを管理するもので、この分野は生成AIの代表的な適用領域の1つにもなっている。Service Cloudでは、2023年後半に「Work Summaries」と「Service Replies」の2つの生成AI機能を発表し、日本では2024年から提供している。
Nichols氏は、「当時は、生成AIがSalesforce上の豊富なデータを活用してカスタマーサービスにおける予測を提供するという段階だったが、今回は、生成AIが顧客対応を支援する段階に進んでいる」と説明した。
年次イベントでは、ユーザー事例として富士通がService Cloudでの生成AIの活用により、顧客対応に要する時間を89%削減し、対応後に対応時の内容を要約する作業時間を86%削減した成果などが紹介された。蓄積されている過去の膨大な顧客との履歴から生成AIが問い合わせに対する適切な回答をオペレーターへ迅速に提示することで、オペレーターの業務効率化や生産性向上に大きく貢献しているという。
生成AIは世界的なトレンドだが、Nichols氏によれば、Service Cloudユーザーでの生成AIの導入は、実証や検証目的から本番としてすぐに運用を開始するケースまで、実にさまざまであるようだ。「テストでスモールスタートをする、まずは(生成AIのための)基盤を整備する、Copilotをすぐに使えるよう独自でプロンプト開発を進めるケースまで、生成AIの導入に対するユーザーのアプローチはさまざまとなっている」(Nichols氏)
現段階で生成AIの使い方は、顧客対応時の情報検索や回答案の提示、対応記録での要約やレポートの生成といったカスタマーサービス担当者の業務を補助するものが多いようだ。これをさらに一段階進めるのがEinstein Actionsになる。
Einstein Actionsは、業務内容に合せてEinstein Copilotをカスタマイズするものになり、ユーザーが事前に、顧客から問い合わせに生成AIでどのように対応するのかといったことを事前に設計、定義することで、本番ではそれに従ってEinstein Actionsが顧客に対応するといった役割を担う。ここでは、標準アクション、プロンプトのテンプレート、既存のフローや外部サービスとの連携、「Apex」コードによる開発なども提供され、ユーザーはそれらを利用して、独自の生成AIによる顧客対応を実行できるようになる。
Nichols氏は、Einstein CopilotやEinstein Actionsといった生成AIを実際にユーザーがどのように適用するのかは、ユーザーの戦略によって異なるだろうと述べる。人による対応を生成AIが代替することで人的リソースを最適化することも可能だが、「効率性が向上することで生じた時間を活用し、人がより高度な顧客対応に集中するといったことにより、コストセンターだったカスタマーサービスを収益源に変える企業もある」(Nichols氏)
例えば、高級ブランドのGucciは、生成AIを活用することでクロスセルやアップセルにつながる提案を顧客に行い、収益性が30%向上したという。「このほど先進的なService Cloudユーザーが参加するグローバルコミュニティーを立ち上げ、カスタマーサービスにおけるさまざまな変化を踏まえた生成AI活用の方向性について会話を始めている。コミュニティーのメンバーは、豊富な顧客との履歴や知見を有しており、(Einstein CopilotやEinstein Actions)のさまざまな活用を導き出していくだろう」(Nichols氏)
他方で、生成AIに対する規制が各国で議論され、顧客の情報やプライバシーの取り扱いにおける厳格なルールが整備されていく見通しが広がる。Service Cloudは、こうした動向の影響を大きく受ける可能性が想定されるが、Nichols氏は、同社の「Einstein Trust Layer」を通じた取り組みによって、個人情報やプライバシーを外部に持ち出すことなく生成AIの回答に役立つデータを取り入れながら、顧客にとって最適な内容を生成することができ、規制強化の動きにも順守していくことができると改めて説明した。