DXの成否を左右する経営者の意識–経営者自身と他者から見た意識のギャップ
今回は「DXの成否を左右する経営者の意識–経営者自身と他者から見た意識のギャップ」についてご紹介します。
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DXへの取り組みは活発化しているものの、その進捗(しんちょく)や成果には企業によって大きな差が生じています。DXの推進が停滞していたり、取り組みに対する士気が低下していたりする企業も少なくないですが、その要因の一つが経営者のDXに対する認識と、実際の行動との間に存在するギャップがあるのではないでしょうか。
DXは、単なるIT導入ではなく企業変革であるため、DXの推進において経営者の正しい認識やリーダーシップが求められることに疑う余地はありません。また、DXの推進に立ちはだかる壁の一つに経営層の不理解があることは、多方面で聞かれています。
それでは、経営者のDXに対する意識と、実際のDXの進捗や成果は、どのような関係にあるのでしょうか。ITRは2023年8月、従業員数100人以上の企業のIT戦略決定者、IT企画立案者、IT実務者に該当する課長職以上を対象とした『DX推進実態調査』を実施し、562件の回答を得ました。この調査では、各社のDXへの進み具合や成果、展開の範囲などに加えて、経営者や各部門の従業員のDXに対する意識も問うています。
まず、取り組みの実施状況ごとに見る経営者の意識では、本格的に実施していると回答した企業ほど、経営者がDXを全社レベルで取り組む最重要事項と考える割合が高く、約8割に及んでいます(図1)。
また、取り組みの進捗状況ごとに見ると、国内でトップクラスであると回答した企業では、8割以上の経営者がDXを最重要事項と位置付けています(図2)。
当然のことではありますが、経営者のDXに対する意識が高いほど、本格的な実施となり、他社と比べて進んでいる割合が高いことが確認されました。経営者の意識の差がDXの進捗と成否を左右すると言っても過言ではないということです。
経営者の意識について、別の観点から掘り下げてみましょう。回答者を経営者・役員に絞ってDXの重要性への理解を見ると、全社レベルで取り組むべき最重要事項だと思うとの回答が約64%と非常に高く、これはDX推進部門の回答者(66%)に次いで高い結果となりました(図3)。経営者は、自分自身はDXの重要性を強く認識していると考えていることを意味します。
一方で、全ての回答者に対して、「DXの推進を阻害している職位・職域があるとするとそれはどの職位・職域か」という質問に対しては、「経営層」を1位に挙げた回答が圧倒的に多い結果となりました(図4)。
すなわち、経営者自身は、DXの重要性を強く認識していると考えているものの、社内ではむしろ経営者がDXを阻害していると思われているという認識の齟齬(そご)が確認された結果となりました。
それでは、なぜこのようなギャップが生じているのでしょうか。その理由の一つが「あとはよろしくの罠」です。国内企業の特性の一つとして、何か新しいことを始めようとした時に、まず組織を設置するというものがあります。経営者は、DX推進組織を立ち上げて人をアサインしたら役割を果たしたと考え、その後の活動を円滑に進めるための環境づくりや後方支援を怠るという現象があちこちで見られます。
筆者はこれを「あとはよろしくの罠」と呼んでいます。DXは終わりのある活動ではありません。またその推進は、従来の業務プロセス改革と異なり、文化・風土、組織、制度、権限、人材など企業の根幹に関わる多岐にわたる変革が求められるため、経営者による継続的な支援が不可欠です。
そしてもう一つの理由が「言葉と行動の不一致」です。多くの企業では、DXビジョンやDX戦略を立案しています。しかし、ビジョンを描いて宣言しただけで経営者の役割を果たしたと思ってはなりません。経営者は宣言するだけでなく、自ら動く、試す、使うという行動を起こすことが必要です。
まずは、身近な生活の中でデジタルに接する機会を積極的に作るように心がけることです。今や、スマートフォンさえ使いこなすことができれば、さまざまなデジタルビジネスやサービスを体験できます。そして、社内のシステムにも自らアクセスし、誰よりも率先して利用しなくてはなりません。