金融業務に特化した生成AI活用が増加–AWSジャパン、金融領域の生成AIトレンドを紹介
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アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は9月5日、金融領域における業務アプリケーションへの生成AI組み込み事例に関する説明会を開催した。
前半ではAWSジャパン 金融開発事業本部 本部長の飯田哲夫氏が、金融領域における生成AI活用のトレンドを解説し、後半では生成AIを組み込んだサービスを提供する企業が登壇して各社の取り組みを説明した。
飯田氏は、金融領域における生成AIの活用について3つのトレンドを解説した。1つ目は、「一般的なユースケースから業界特化のユースケースへの広がり」だ。2023年は多くの検証が開始されたが、今は検証フェーズからプロダクションフェーズに移行しているという。「チャットや要約などの一般的なユースケースから、金融業務に特化したユースケースに広がっている。例えば、ポートフォリオマネジメントや不正検出、コンプライアンス支援など業務に踏み込んだ使い方が出ている」と同氏は説明する。
2つ目は、「組織内データを活用した回答精度の向上」だという。検索拡張生成(RAG)やファインチューニング、プロンプトエンジニアリングなどを行い、生成AIを実業務に使えるレベルまで高めている組織が増えている。この取り組みでは、組織内のデータを統合し、生成AIで活用できるようにしていくことが重要だと同氏は指摘する。
3つ目は、「サービスへの生成AIの組み込みによる金融業務オペレーションとの融合」。生成AIを活用する動きは個々の金融機関での取り組みだけでなく、業務アプリケーションやプラットフォームを提供する企業においてもサービスの中に生成AIを組み込んで提供する動きが加速しているという。「この動きによって、金融機関で活用されている業務アプリケーションに既に生成AIが組み込まれているため、ユーザーの観点では生成AIかどうかを気にせず使う世界が来ていると感じている」(同氏)
インテックは、金融機関向けソリューション「fcube」を提供しており、生成AIを用いて「顧客アプローチ効率化」「情報把握の短縮化」を目指すとしている。同ソリューションは、顧客関係管理(CRM)システム、コールセンターシステム、ローン自動審査システムなどを展開し、金融機関のDXを支援している。
同ソリューションに生成AIを組み込むことで、ユーザーからのテキスト入力による問い合わせ・指示に対して業務データに基づいた分析結果や予測情報を出力したり、選択肢による検索に対して検索結果の出力を効率化したりするという。加えて、ユーザーが使いやすいユーザーインターフェース(UI)を生成AI(AIエージェント)によって自動生成・最適化する。
fcubeは、「AIエージェント基盤」「fcubeサービス基盤」「データ利活用基盤」の3つで構成されている。AIエージェント基盤では、ビジネスユースケースごとにAIエージェントをAPIとして疎結合にすることで、fcubeサービスへの迅速な組み込みができるという。fcubeサービス基盤にはサーバーレス構成のAPIを構えて各種サービスで柔軟にAIエージェントを利用できるように構成した。
データ利活用基盤では、AWSが提供する生成AIアプリケーションの構築基盤「Amazon Bedrock」を軸に、AIエージェントとの対話データや営業活動、業務から得られる成果を学習し、継続的な精度向上を図る基盤として構成した。今後、限定的なユースケースで生成AIの効果検証とユーザーニーズを把握し、段階的に生成AIを組み込んだサービスを提供していくという。
キャピタル・アセット・プランニングは、生成AIを活用した生命保険の募集関連文書のチェックサービス「LibelliS」を提供している。生命保険の募集関連文書チェックは、ガイドラインや規定に従うような正確性が求められ、文書のチェックや審査は担当者の負担になっているという。また、制度の変更に起因する観点の変化に対応する必要があり、高いスキルが求められている。
LibelliSは、アップロードしたPDFを自動で読み込み、「法令・各種ガイドライン」や「文書の校正」などさまざまな観点からの評価を選択できる。読み込んだ募集関連文書をAIが分析・評価し、観点ごとの詳細な指摘や関連情報を提示する。社内検証では65%の作業時間削減に成功したという。
LibelliSはまず、Amazon BedrockによるPDF・画像の解析を行い、次に検索エンジン「Amazon Kendra」とマネージドグラフデータベース「Amazon Neptune」を用いて評価基準の検索を行う。ここでは検索精度を高めるためにGraphRAGを構築しているという。最後にAmazon Bedrockによる評価や回答結果の生成を行い、自然言語で文章の評価結果を出力する。
同社では、大規模言語モデル(LLM)として「Claude 3.5 Sonnet」を採用。システムソリューション第2事業部 アシスタントマネージャーの佐々木勝則氏は、Claudeについて「テキストだけでなく表形式を含むPDFを解析し、正確なテキスト抽出が可能であること。また評価対象の複雑な意味を正確に理解できること。そして、多岐にわたる参考情報を正確に評価し、自然言語で出力できる」ことを評価した。
「AWS Generative AIコンピテンシー」を取得した野村総合研究所(NRI)は、Amazon Bedrockを用いて、自社独自の自然言語処理(NLP)と生成AIモデルを組み合わせる取り組みを行っている。
NRIは、テキストデータ分析システム「TRAINA」をよくある質問(FAQ)検索やや通話内容の要約などに展開し、コンタクトセンターのオペレーターや管理者の業務を支援している。NRIが開発した日本語に強いNLPエンジンと生成AIを組み合わせることで、各社のマニュアルやFAQを基にした回答例の生成や、より自然で分かりやすい要約の出力、分析結果を基にした考察の生成ができるようになるとしている。
NRI デジタルワークプレイス事業四部 シニアシステムコンサルタントの大倉朝子氏は、「Amazon Bedrockは、モデルごとの呼び出し方法の差異を吸収してくれる『Converse API』を搭載している。この機能によってモデルごとの差異を意識することなく、顧客の要望に合わせた迅速なモデルの切り替えができる」と説明した。