“デザインの壁打ち”で製品ブラッシュアップ–「Autodesk AI」の現在地点
今回は「“デザインの壁打ち”で製品ブラッシュアップ–「Autodesk AI」の現在地点」についてご紹介します。
関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
Autodeskは米国時間10月14~17日、年次イベント「Autodesk University 2024」(AU2024)をサンディエゴで開催している。同イベントには毎年、建築、土木、エンジニアリング、建設、製造、メディア&エンターテインメントの専門家が集結し、2024年は1万2000人以上が参加している。
16日の基調講演には、建築・エンジニアリング・建設・運用(AECO)、製品設計・製造(D&M)、メディア・エンターテインメント(M&E)の責任者がそれぞれ登壇し、2023年に発表した同社の「Autodesk AI」の搭載状況や顧客事例を語った。本記事では、D&Mにおける同社の動向を取り上げる。
Autodeskは、D&Mの業界クラウド「Autodesk Fusion」と設計ソフトウェア「Autodesk Alias」にAutodesk AIを活用した新機能を搭載すると発表した。
D&Mソリューションのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるJeff Kinder(ジェフ・キンダー)氏は「われわれは、Aliasなどのツールをより機能的かつ柔軟で、より楽しいものに強化してきた。同時に、Fusionで業界を破壊し、設計から製造までの製品ライフサイクル全体をクラウド上に集結させることに取り組んできた。最後に自動化とAIを製品に導入し、仕事の進め方を刷新する」と自社の歩みを語った。
Fusionの「AutoConstrain」は、プロジェクトのスケッチを分析し、対称性、相対的な規模、部品間の関係など、設計の各要素間の空間的な関係を検出。その上で、プロジェクト全体を通して設計意図を維持するための寸法制約を提案する。このプロセスを自動化することで、設計者が関係を定義するのに費やす時間を削減し、意図した制約を見落とすことで生じる下流工程での遅延を防止する。
Fusionの図面作成自動化機能により、設計者がボタンをクリックすると、3Dモデルが検証され、部品の製造に必要な2D図面と寸法を生成する作業が行われる。Autodesk AIは、モデル内における各構成要素の図面シートのレイアウトから、スタイルの適用、図面セットに含める必要のないファスナーの特定と削除までを行い、このプロセスを高速化・合理化する。
Aliasの自動車外装デザイン生成ツール「Form Explorer」により、自動車の外装デザイナーは、現実的かつ新しいデザインや形状を数秒で探索できる。ブランドの過去のスタイリング言語から学習する機能を搭載しており、デザイナーが試行錯誤してアウトプットを受け取る時、過去のスタイリングのヒントを備えたデザインを生成する。
Fusionに搭載される「Autodesk Assistant」は、Fusionの機能など同社固有の知識と一般的な業界知識の両方を備えたオンデマンドの専門家だという。「このパーツにはどのような製造方法を考慮すべきか」といった質問をAssistantに投げかけると、Fusion/製造業界固有の回答を生成し、情報源のリンクも共有する。
企業におけるFusionの導入事例も発表された。インドの太陽光発電自動車メーカーVayve Mobilityは、3人乗りの「Eva」と5人乗りの 「CT5」の2種類の電気自動車を展開しており、両ブランドの設計・製造ソリューションとしてFusionを導入している。
Vayve Mobilityの責任者は「Fusionは、われわれの製品をいち早く市場に投入するのに役立っている。プロトタイプ(試作品の作成・検証)から製品の開発、検証、製造まで一貫して活用できる」と動画でコメント。同クラウドにより、各プロセスのデジタル化、複数のデータ形式への柔軟な対応、データの素早い移行、社内外のコラボレーションが実現したといい、同氏は「後付けではなく、開発を進めながらモデル全体の進捗(しんちょく)状況を確認できる」と述べた。
Kinder氏は、業務の自動化による生産性の向上にとどまらない取り組みも紹介した。Autodeskは8月、同社の研究プロジェクト「Project Bernini」を発表。同プロジェクトの生成AIモデルは、単一の2D画像、対象物のさまざまな外観を示す複数の画像、点群、テキストなど、さまざまな入力内容から3Dの形状を迅速に生成する。
例えば水差しの場合、多くの3D生成モデルは特定の照明環境で外観が向上するような質感を施した形状を生成する。一方、Berniniのモデルは形状と質感を別々に生成し、双方の変数を混同・融合しない。そのため、生成された水差しは中央が空洞になっており、現実世界の水差しと同じように画面上で水を入れられる。
Kinder氏は個人的な例を挙げ、「1年以上前から、自宅のリビングルームにコーヒーテーブルを作ることを考えていた。しかし私には1000のやることリストがあり、“始めるだけの惰性”から抜け出すことはできない。もし『ミッドセンチュリーモダンコーヒーテーブル』『2段長方形』『4×8フィート』といったプロンプト(指示文)を入力すると、すぐに編集可能な3Dモデルが生成されたらどうだろう。もちろん完成品ではないが、立ち上げ時の惰性に打ち勝ったといえるはずだ」とBerniniの先進性をアピールした。
(取材協力:オートデスク)