アイルランドが推進する先端研究開発とグローバル企業とのコラボレーション
今回は「アイルランドが推進する先端研究開発とグローバル企業とのコラボレーション」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載は、ICT業界や日系を含む多くの企業が進出し、グローバル事業の拠点となっているアイルランドの最新動向を紹介しています。今回は、アイルランドで進められている先端研究開発と日本を含むグローバル企業とのコラボレーションの最前線を取り上げます。
今日の変化の激しい経済環境において、ビジネスリーダーは、常に新たなアイデアや成長の可能性を模索しています。その中で注目されているのが、新しい技術、製品、サービスの開発とプロセスの効率化です。総務省統計局によると、2022年度の日本の研究開発(R&D)への総支出は20兆7000億円に達し、前年度比で4.9%増加し、過去最高を記録しました。同様に、日本の研究者数も7年連続で増加しています。
アイルランドもまた、経済の成長を支える変革を長年にわたって推進してきました。2024年8月には、アイルランドの研究・イノベーション戦略「リサーチ アイルランド」の一環として、競争力を高める研究およびイノベーションを対象とした、新たな資金提供機関が設立されました。学術研究者と産業界との連携強化が主な目的です。
アイルランドには「リサーチセンタープログラム」が存在し、学術機関が地元企業や多国籍企業と密接に協力し、グローバルレベルでの先進的な研究や最先端技術の開発、そして、技術革新を推進しています。ここではリサーチセンターの具体的な活動内容や専門分野における取り組みについて、ご紹介します。
ADAPTは、コンテンツ解析やナレッジ抽出、AIを活用した高度な機械翻訳と人間による翻訳の補完、自動による個々のデジタルコンテンツの発見と提供、テキストや動画などのあらゆる形式でのユーザー体験の向上など、新しい技術や手法の開発を進めています。また、コンテンツ処理におけるデータ品質、プライバシーおよび倫理管理の分野でも先進的な取り組みを行っています。この研究センターでは、Accenture、eBay、マツダ、Novartisなどと協力しています。
さらに、Metaと協力し、健康医療のデータ共有におけるバリューチェーンの課題にも取り組んだ実績もあります。このプロジェクトでは、プライバシー強化技術を活用したデータガバナンス体制の試験運用を行う「ヘルスケア規制のサンドボックス」の枠組み構築に注力し、データ共有にかかわる関係者間の信頼性を醸成しました。特に、健康医療データスペースやAI責任指令に関連する新たな法規制がもたらすバリューチェーンの課題に取り組んでいます。
Leroではソフトウェアエンジニアリング、情報システム、人間とコンピューターの相互作用(human-computer interaction:HCI)などの領域において、自動運転車やAI、サイバーセキュリティ、フィンテック、ガバメントテクノロジー(GovTech)、スマートコミュニティー、農業テック(AgTech)、ヘルステック(HealthTech)といった多岐にわたる分野で研究を行っています。これらの分野においてARMやDell Technologies、Ericsson、IBM、Intel、Microsoft、トヨタ自動車、Valeoなどのパートナーと協力し、研究を進めています。
また、さまざまな用途におけるAIの意思決定能力の改善に向けてQualcommと提携し、高度な技術を活用して、AIの性能を向上させる研究を行っています。例えば、視覚システムとAIを統合する技術の研究を行い、視覚的に厳しい環境下でも高い信頼性を発揮する視覚システムを自動車、ドローン、ロボット技術などで活用できるように開発をサポートしています。
さらに、Liebherrとは、同社が提供する「スマートクレーン」システムを開発、拡張しました。このプロジェクトでは、運用を支援するデジタルツイン、高度なデータ分析、先進的なセンシングシステムなどの技術を活用し、クレーンの設計、展開、運用を改善しました。