「Linux 6.14」が正式公開–L・トーバルス氏はリリース遅れを説明
今回は「「Linux 6.14」が正式公開–L・トーバルス氏はリリース遅れを説明」についてご紹介します。
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締め切りに遅れる人間が自分以外にもいることを知って安心した。Linus Torvalds氏は次のように告白した。「3月23日、通常の日曜日午後のリリーススケジュールに沿って6.14をリリースしなかった理由について、説得力のある言い訳があるといいのだが、実際には、弁解の余地はない。単に私が無能だっただけだ。23日のリリースの間際になって何かが起きたわけでは決してない。私はマージウィンドウに備えるために、今回のリリースとは無関係な作業を処理していた。その過程で、6.14を実際にリリースすることを完全に忘れてしまっていた」
多少の遅れはあったが、「Linux 6.14」には、「Ubuntu 25.04」や「Fedora 42」など、間もなく登場予定のLinuxディストリビューションを強化する最先端の機能と改善が多数含まれている。
デスクトップユーザーにとってのビッグニュースは、改善された「NTSYNC」ドライバーである。Linuxで「Windows」ゲームをプレイしたり、「Windows」プログラムを実行したりしたいユーザーにとっては、特に重要な機能だ。このドライバーは、「Windows NT」の同期プリミティブをエミュレートするように設計されている。この機能によって、「Wine」や「Steam Play」で実行されるWindowsプログラムのパフォーマンスが大幅に向上する、ということを知っておけば大丈夫だろう。
Linuxゲーマーはこのリリースを心待ちにしていた。「YouTube」にLinux関連の動画を投稿しているGardiner Bryant氏は、「NTSYNCによって、Linuxのゲームは永遠に変わるだろう」と宣言した。Redditでは、ある投稿者が次のように述べた。「NTSYNCはすべての要件を満たしている。高速性、ポータビリティー、強力な性能、正確性を備えている。正確性は、『futex/futex2』インターフェースの応急処置や繰り返しを試みるのではなく、Windows風の同期セマンティクスをカーネルモジュールに実装することで実現された」
ゲーマーは常に最高のグラフィックスパフォーマンスを求めるので、Linuxが先ごろ発売されたAdvanced Micro Devices(AMD)の「RDNA 4」グラフィックスカードのサポートを追加したことも歓迎するはずだ。このアプローチには、AMDの「Radeon RX 9070 XT」および「Radeon RX 9070」グラフィックスカードのサポートが含まれる。このサポートと先ごろ改善されたオープンソースの「RADV」ドライバーの相乗効果により、AMDゲーマーはゲームをプレイするマシンで過去最高の速度を体験できるはずだ。
もちろん、このリリースはゲーマーだけを対象としているわけではない。Linux 6.14には、AMDとIntelのプロセッサー関連の機能強化もいくつか含まれている。例えば、電力管理、熱制御、コンピューティングパフォーマンスの最適化などの機能強化が施されている。これらのアップデートにより、システム全体の効率とパフォーマンスが向上するはずだ。
このリリースには、「AMD XDNA」ドライバーも含まれている。このドライバーは、「XDNA」アーキテクチャーをベースとするAMDのNPUの公式サポートを提供する。これにより、サポート対象のAMDハードウェア上で直接、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)や大規模言語モデル(LLM)などのAIワークロードを効率的に実行することが可能になる。
「Rust」はこの数カ月、Linuxでいくつかの問題に直面しているが、Linux 6.14では、Rustプログラミング言語の抽象化がさらに進んでおり、Rustで記述されたドライバーを提供する準備が整った。Linuxの安定版カーネルのメンテナーであるGreg Kroah-Hartman氏は先ごろ、次のように述べた。「RustのさまざまなドライバーバインディングとRustのその他の変更により、さまざまなドライバーが実際に可能になった。これが転換点になると思う。これらのバインディングが登場したことで、今後、さらに多くのRustドライバーが登場するだろう」
ドライバーのほかにも、「Rust for Linux」の主任開発者のMiguel Ojeda氏は先ごろ、「Rust 1.84: derive」(「CoercePointee」)でスマートポインターのマクロが導入されたことについて、「安定したRust関数のみを使用するカーネルの構築プロセスにおける重要なマイルストーン」だと述べた。このアプローチにより、「C」とRustのコードの統合も容易になる。われわれは、RustのLinuxへの移植という目標にかなり近づいている。
さらに、Linux 6.14はQualcommの最新の「Snapdragon 8 Elite」モバイルプロセッサーもサポートしており、このチップセットを搭載したデバイスのパフォーマンスと安定性が向上している。このサポートにより、2025年中に極めて高速な「Android」ベースのスマートフォンが登場するはずだ。
Linux 6.14には、いわゆる「GhostWrite」脆弱(ぜいじゃく)性を修正するパッチが含まれている。この脆弱性が悪用されると、一部の「RISC-V」プロセッサーがルート化されるおそれがある。今回の修正により、そのような攻撃がブロックされる。
さらに、Linux 6.14には、コピーオンライトの「Btrfs」ファイルシステム/論理ボリュームマネージャーの改善も含まれている。これらの読み取り分散方法は、さまざまなRAIDハードウェアの構成とワークロードに柔軟性を提供する。さらに、キャッシュされていないバッファーI/Oのサポートにより、高速ストレージデバイスを備えたシステムでのメモリー使用が最適化される。
簡潔に言うと、Linux 6.14はLinuxの進化における大きな前進であり、ゲーム愛好家からAI研究者、開発者まで、さまざまなユーザーのニーズに対応した強力な機能セットを提供する。リリースが少し遅れたとはいえ、Linux 6.14のさまざまな機能強化のおかげで、多用途で先進的なプラットフォームとしてのLinuxの地位はより強固になった。
Linux 6.14を試してみたい人は、今すぐ実行に移すことが可能だ。Linux 6.14はすでにダウンロード公開されている。Torvalds氏によると、「保留中のプルリクエストが山積している」ので、「Linux 6.15」にはさらに多くの変更が施される見通しだという。