ビットコインの価値はその周りの「ネットワーク効果」で考えるとよくわかる

今回は「ビットコインの価値はその周りの「ネットワーク効果」で考えるとよくわかる」についてご紹介します。

関連ワード (Bitcoin、ネットワーク効果、暗号資産等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


暗号資産の世界において、Bitcoin(ビットコイン)の価値はどう測れば良いのか?適切な指標はないのか?ドイツのベンチャーキャピタルHigh Tech GründerfondsのAlex von Frankenberg(アレックス・ヴォン・フランケンベルグ)氏はこれらの問いを考えた。暗号資産の価値をStock2Flow(STF)モデルで測るという考え方もあるが、果たしてそれで十分なのか?同氏はビットコインを取り巻く環境がもたらす効果である「ネットワーク効果(ネットワークエフェクト)」こそ重要な観点だと語る。

フランケンベルグ氏は、ビットコインの価値を測る考え方として、まずSTFモデルを挙げる。

「STFモデルというのは、簡単にいうと次のようになります。フロー(新規に産出される資源の量)に対するストック(これまでに算出された資源の総量)が増加すると、新しい資源の産出量は減少し、新たに産出される資源の価格が上がります。ビットコインの価格はSTFと相互に関連していることがわかっています」とフランケンベルグ氏。

しかし、STFモデルをビットコインに適用することには批判の声も上がっているという。

「STFモデルはすべての資源に当てはまるものではありません。また、このモデルでは供給は考慮されても、需要が考慮されません。さらに、世の中には複数STFモデルがあり、それぞれ良いものですが、導き出される価格が異なります。こうした批判があるのは確かです」とフランケンベルグ氏は説明する。

では、需要の側面から考えるとどうなるのか。同氏はビットコインとビットコインキャッシュを比較する。

ビットコインとビットコインキャッシュの価格評価

ここで注目すべきは、ビットコインキャッシュの価格評価が低い点だ。ビットコインとビットコインキャッシュのSTFに大きな差はなく、ブロックサイズを除けば技術的にも大きな違いはない。

フランケンベルグ氏は「ビットコインとビットコインキャッシュはそれほど離れた資源ではなく、STFも近いのに、価格評価に違いがある。では、STFモデルが失敗だということになるのでしょうか?そうではありません。これは『STFモデルは完全ではない』ということを意味します。では、ビットコインとビットコインキャッシュの差はどこにあるのか?ネットワーク効果です。そしてネットワーク効果こそ私たちが考えなければいけないことなのです」という。

では、ネットワーク効果とは何か?フランケンベルグ氏は「ユーザー数が増えると、効用が上がるという効果のことです」と答える。しかし、ユーザー数の増加は必ずしもより良い効用につながるわけではないという。

ネットワーク効果が発生しない例として、同氏は自動車を挙げる。

例えば、フォルクスワーゲンのゴルフ。より多くの人がゴルフを購入すると、修理できる施設が増えたり、ゴルフに関する情報がより広く流れることになる。この場合、ユーザー数の増加が販売台数の増加につながることがあり得る。しかし、ゴルフの機能そのものは、ユーザー数から影響を受けない。つまり、ネットワーク効果は発生しない。

一方で、ネットワーク効果には、ユーザー数の増加がより良い効用に直接つながる「ダイレクトネットワークエフェクト」と、ユーザー数の増加がより良い効用に間接的につながる「インディレクトネットワークエフェクト」の2種類があるという。

同氏が挙げるダイレクト・ネットワーク効果のわかりやすい例は、eメールなどのコミュニケーション手段だ。なぜなら、あるコミュニケーション手段を使うユーザー数が増えると、そのコミュニケーション手段で連絡できる人の数が増える。そのため、ユーザー数の増加が効用を上げるのだ。逆に言えば、ユーザー数の少ないコミュニケーション手段は、ユーザー数が少ないが故にユーザー数の減少を招くことがある。

インディレクト・ネットワーク・エフェクトの良い例は、WindowsなどのOSだという。なぜかというと、OSのユーザー数が増えると、OS上で動かせるアプリケーションの開発が進み、OSを使うことによる効用が上がるからだ。ここでは、OS の効用がアプリケーションを経由して間接的(インディレクト)に上がっている。

では、ネットワーク効果の何が重要なのだろうか。

フランケンベルグ氏は「既存の製品のネットワーク効果が強い場合、新規参入者がマーケットの中に場所を見つけられない可能性がある。それが重要なのです」という。

フランケンベルグ氏が挙げた例はこうだ。ここにある製品があるとする。この製品で技術的にできることは限られているが、製品を世に出してから時間が経つにつれ、この新製品はネットワークによる効用を上げていく。その後、新規参入者がより優れた技術とともに市場に登場したとする。しかし、新規参入者は、先程の製品に比べてネットワークによる効用が少ない。そうなると「元々の技術+ネットワークによる効用」で比較した時、先に登場した製品の方が市場でより有利となる。そのため、新規参入者はより優れた技術を持っているにもかかわらず、ネットワーク効果が弱いために、市場の競争で不利になるのだ。

「元々の技術+ネットワークによる効用」で比較した時の既存製品と新規参入製品

では、ビットコインにネットワーク効果にはどのようなものがあるだろうか。フランケンベルグ氏は「たくさんある」と強調する。

同氏によると、ダイレクトネットワークエフェクトの観点では、より多くのユーザーがビットコインを使えば、ビットコインを送り合うユーザーの数が増え、効用が上がる。インディレクトネットワークエフェクトの観点では、オンランプが増加すればユーザー数が増加し、ネットワーク効果を増加させ続ける。さらに、ビットコインのネットワークの上に決済やメッセージングなどのアプリケーションが数多く構築されれば、ビットコインの価値も上がるのだという。

フランケンベルグ氏は、上の図を使ってビットコインのネットワーク効果の流れを以下のように説明する。

まず、企業でのビットコイン活用が広まれば、ビットコインの価格に影響する。ハッシュレートが増加すればセキュリティが上昇する。こうしたポジティブなフィードバックのループができる。

規制が進めば、透明化が進み、企業のビットコイン活用が進む。ユーザーフレンドリーになれば、企業のビットコイン活用が進む。

ユースケースが蓄積されれば、ビットコインを決済に使用しやすくなり、やはり企業のビットコイン活用が進む。

リテールでのビットコイン活用が進めば、企業でのビットコイン活用が進み、ビットコインの取引ボリュームが増え、ビットコインやフィンテック関連のカンファレンスの価値が上がる。

最終的には、中央銀行がビットコインを活用するようになれば非常に大きなネットワーク効果を見込むことができる。

「ここまで見てきたように、ビットコインのネットワーク効果を見た時、たくさんのポジティブなフィードバックループが見つけられます。しかし、リスクもあります。規制が非常にネガティブに作用する可能性もあります。セキュリティが弱ければやはりネガティブなことを引き起こすかもしれません。ただ、ビットコインの価値を考えるとき、STFモデル単体で考えてはいけません。STFモデルは完全な指標ではないからです。大切なのは、STFモデルとネットワーク効果の成長を組み合わせて考えることです」とフランケンベルグ氏は述べた。

【Japan編集部注】本記事はCrypt Asetts Conference 2021中のセッションを再構成したものとなる。

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