横浜国立大学、超柔軟なゲルや生体組織などに液体金属で配線する新技術を世界で初めて確立
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液体金属を用いたゲル基板上の立体配線。(a)ゲル上およびゲル内部への液体金属配線と LED の点灯の様子。(b)液体金属を用いたゲルファイバー表面のらせん配線
横浜国立大学は1月31日、ゲルや生体組織といった超ソフトで非平面の基板上に、液体金属で配線を転写する技術を、世界で初めて確立したと発表した。今までよりもさらに柔軟なウェアラブルデバイスの開発や、インプラントデバイスへの応用が期待される。
横浜国立大学の太田裕貴准教授、渕脇大海准教授らによる研究グループは、液体金属で配線を行ったPVA(親水性がよい合成樹脂の一種であるポリビニルアルコール)フィルムを超柔軟基板の上に置き、フィルムを水で溶解させることで超柔軟基板上へ配線を転写することに成功した。配線可能な線の最小幅は165µm(マイクロメートル)と非常に細いため、らせん構造や三次元に交差する立体構造の配線も可能だった。
また、ラットの迷走神経を刺激する柔軟電極を設置したところ、生体組織に与える物理ストレスが抑えられた。さらに、PVAフィルム上に構築した温度測定システムを、機能を維持したままゲルに転写し、腕に貼り付ける実験も行ったが、その状態での温度測定も可能だった。
液体金属配線技術を用いたアプリケーション。(a)ラットの迷走神経に配線した液体金属の写真。(b)腕に取り付けたゲル基板上の温度測定デバイス。(c)作製したデバイスの上面図とデバイスの断面構造を示す回路図
液体金属は、次世代スマートデバイスの配線素材として注目されている。生体適合性が高く柔軟であるため、ゲルと組み合わせれば、非常に柔軟なウェアラブルデバイスが作れるようになるのだ。剛性を表す比例係数ヤング率はゲルよりも低く、伸縮性と生体適合性は高く、変形による抵抗値変化が小さいという優れた特徴を持つが、加工しづらいという欠点もある。従来の方法では、非平面基板に複雑な回路を作ることは難しかった。この研究で、そうした課題が克服され、柔軟な素材のみを使用し、人体への密着性を高め、不快感を少なくしたウェアラブルデバイスの開発が可能となるとのことだ。
今後は、生体組織に液体金属で配線を施し、「健康状態を測定できるようなインプラントデバイスの開発」も期待されるという。