目指すは企業に常用されるDevSecOps基盤–GitLabが新戦略
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リポジトリー管理を中心としたソフトウェア開発プラットフォームを展開するGitLabは、2020年4月に日本市場に参入した。日本担当カントリーマネージャーの村上督氏は、進出から2年近く事業基盤を固めてきたとし、2022年は国内企業への導入を促進すべく新たな事業戦略を展開していくとする。
GitLabは、2011年に設立、2014年に法人化され、現在は65カ国で約1630人の従業員がフルリモートワークで業務を遂行している。Gitベースのリポジトリー管理をはじめ継続的なインテグレーション/デリバリー(CI/CD)やセキュリティ管理、ログ管理などのソフトウェアをオープンソースあるいは高機能な有償版として展開し、2021年秋には米国NASDAQ市場に上場した。ソフトウェア開発者にとって同社の存在はおなじみで、顧客企業としてはGoldman Sachsやデルタ航空など大手も多いという。
同社の事業年度は2月~翌年1月で、村上氏によれば、2022事業年度(2021年1月期)までの日本でのビジネスは、新規ユーザー数の伸びが数百%と好調だった。一方で課題も見えたと述べる。「欧米では、あらゆる企業が『ソフトウェア会社』を標榜するほどに、デジタルビジネスでのソフトウェア開発を重視しており、アジャイルやクラウドネイティブな取り組みでわれわれのプラットフォームを導入している。一方で、日本はプロジェクト単位の採用が中心。今後欧米の流れが到来すると予測し、企業での本格導入に向けた施策を展開する」(村上氏)
日本市場は、2021年までに「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が企業の間でおおよそ“市民権”を獲得するに至った状況だろう。ソフトウェア開発でもアジャイルやDevOps、ローコード/ノーコードといった言葉が使われるようになってきた。ただ、依然として従来のウォーターフォールは多く、そういった意味では過渡期とも言える。
村上氏によれば、現状で国内は、リポジトリー管理にGitLabを使ってもCI/CDは別のプラットフォームというように、使われるツールはケースバイケースで異なり、ベストオブブリードをメインで選択するケースもまだ少ないという。
しかし欧米では、アジャイルのような柔軟性とガバナンスの両立といった観点から統合型プラットフォームの採用が増えているとのこと。GitLabもDevSecOpsプラットフォームを掲げて事業を展開するが、開発者向けソリューションを手がけるライバルも合併・買収などでプラットフォーム戦略を打ち出しており、競争環境にある。
こうした中で村上氏は、全社的なデジタルビジネス戦略を掲げるような先進的な企業顧客の獲得実績も出ていると話す。例えば、「CASE(Connected:接続化、Autonomous:自動化、Shared:共有化、Electric:電動)」の流れが到来している自動車業界では、スズキがGitLabを全社的なソフトウェア開発基盤に位置付け導入しており、ルネサス エレクトロニクスでは車載用組み込みソフトウェアの開発基盤として採用しているという。「ソフトウェア開発現場での認知度は着実に高まっており、新年度は認知拡大を通じた企業での導入促進を図っていく」(村上氏)
2022年2月に始まった2023事業年度の戦略では、最高情報責任者(CIO)など企業のIT導入の意思決定者への認知拡大を目指すという。製造、金融、通信の3業種を重点領域に設定。各業界でデジタルビジネスやアジャイルなソフトウェア開発を実践している企業をターゲットに、各社における標準のDevSecOpsとして採用されることを目標とする。同時に、システムインテグレーターなどのパートナーでの利用促進も図り、内製開発と受託開発の両面で利用実績を広げたいとする。CIOなど組織の上位層を対象とするマーケティング施策なども強化し、欧米で開催しているユーザーカンファレスの日本での初開催も計画している。
近年の日本市場におけるDXブームは、それ以前の伝統的なウォーターフォールによるソフトウェアの受託開発の中心の流れに、内製化やアジャイル、DevOpsといった変化をもたらしつつあり、中長期的には日本のソフトウェア開発の“文化”自体を大きく変えていく可能性もある。
村上氏は、「デジタルビジネスをしているあらゆる企業がソフトウェア開発をしている米国の状況が数年後に日本も来る。実際に、製造業におけるBOM(部品表)をソフトウェア開発に当てはめて『S-BOM(ソフトウェア部品表)』と呼ぶような機会も増えている。GitLabのスタイルを日本にもうまく合わせながら、日本のユーザーを広がる提案に注力したい」と話している。