トヨタ自動車、クラウドと分散型台帳技術で知財情報管理基盤を構築

今回は「トヨタ自動車、クラウドと分散型台帳技術で知財情報管理基盤を構築」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 トヨタ自動車は、スタートアップ企業のScalarと連携してMicrosoft Azure上に知的財産の係争訴訟対応基盤「Proof Chain of Evidence」(PCE)を構築、運用を開始した。日本マイクロソフト主催のメディア向け説明会で両社の担当者が今回の取り組みを説明した。

 PCEは、Scalarの分散型台帳ソフトウェア「Scalar DL」の改ざん検知機能を利用して、データの証拠保全を行うシステムになる。トヨタ自動車 知的財産部 車両技術知財室長の山室直樹氏は、「各国での証拠性を担保するため、承認されたタイムスタンプサーバーにつないで存在日時を確保した。強い証拠力で裁判でも十分に使えるとの鑑定を各国の弁護士から確認を得ている」と説明する。現在は概念実証(PoC)の段階だが、運用に耐える状態にあるといい、両社はPCEによる分散型台帳技術を共同発明として複数出願中だという。

 裁判に用いる証拠を確保する証拠保全と、デジタルデータの相性は芳しくないとする。さまざまな議論が進みつつも、実務的には印刷物を原本として提出するなどアナログな対応が必要とされた。また、文書内容を証明するタイムスタンプの有効期限も最長10年と、特許の有効期限である20年を越える証拠保全が必要な知財係争訴訟での利用は難しいという。山室氏は、「技術情報を特許で守るのが一番手堅いが、模倣されるリスクを抱える。社内で秘匿管理すると管理コストが増えてしまう」と、現場の苦労を吐露する。

 トヨタとScalarの連携は、トヨタグループが2019年4月に設立した「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」にまでさかのぼる。同年8月に、「Scalar DLT」(分散型台帳技術)を用いた対消費者取り引きのデータ管理における有用性の検証を開始し、2020年7月にトヨタの知的財産部からトヨタ・ブロックチェーン・ラボ経由で、知財情報管理に関する要素技術の検証案件をScalarが受注した。

 Scalar 代表取締役 最高経営・執行責任者(CEO兼COO)の深津航氏は、Microsoft AzureにScalar DLを構築した理由として、「『Microsoft Innovation Lab Award 2019』の優秀賞がきっかけで、(Scalar DLでは)『Azure Cosmos DB』を使用しているが、構築時に明らかになった問題も含めて日本マイクロソフトの支援を受けた」からと説明した。

 Scalar DLの改ざん検知機能は、記録したデータに対して、「データがいつ存在していたのか」「データがどの順序で存在していたのか」「データが存在していた時点からこれまで改ざんされていないのか」と、これら3項目を10年間証明する機能を備える。各情報を日本、中国、欧州、米国における裁判での証拠として提出可能な状態として保全する。

 PCEは、クラウドに格納したデータの証拠をScalar DLに記録すると同時にハッシュ値を生成し、記録順序と記録内容の改ざん検知を行う「証拠チェーン」と呼ばれる機能を備えてい

 深津氏によれば、Scalar DL自身の非改ざん性を証明するため、各国の裁判所が認める電子認証サービスを用いて、記録レコードの終端ハッシュ値へ定期的にタイムスタンプを付与する。その際に生成されたタイムスタンプトークンもScalar DLに記録する。この仕組みを用いると、大量のデータに対する自動証拠保全と、タイムスタンプの有効期限である10年を超えたデータ保全が可能になるという。

 山室氏は、以前から協力部署とPoCを行ってきたが、4月1日から社内実装に取り組むと説明。「現在の仕様は半分ほどオンプレミスで構築しているため、サービスとして利用できる仕組みに外部の方々と連携して作り込む」のが当面の目的であるとした。社内実装と並行して2022年内は有償でのPoCを実施する賛同者を募り、2023年3月までにSoftware as a Serviceとしてサービス化する予定だとしている。

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