主戦場のエッジ領域でハイパースケーラーと競う–アカマイのレイトンCEO

今回は「主戦場のエッジ領域でハイパースケーラーと競う–アカマイのレイトンCEO」についてご紹介します。

関連ワード (トップインタビュー、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 Akamai Technologiesは、これまでのコンテンツ配信ネットワーク(CDN)やセキュリティサービスに続く第3の主力事業として、2月にIaaSプラットフォームプロバイダーのLinodeの買収を発表した。近年は、Akamaiが得意とするエッジコンピューティング領域でIoTをはじめとする新たなニーズが拡大し、クラウドのハイパースケーラー各社がこの領域に進出してきている。共同創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるTom Leighton氏(米マサチューセッツ工科大学教授)に、事業戦略や近年のネットワークトレンドなどを聞いた。

 Akamaiは、全世界で4000地点以上の分散コンピューティング拠点とネットワークを展開する。Leighton氏は、「われわれは世界最大規模の分散環境を提供し、ピーク時として毎秒450テラビットもの情報をハイパフォーマンス、高信頼、安定性を担保しながら世界中のユーザーにお届けしている」と強調する。

 コロナ禍を経て世界的にオンラインへの依存度が増す一方であり、同社のCDNやセキュリティサービスのビジネスは安定した成長を続けている。そうした中で、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Google Cloudといったクラウドのハイパースケーラーが立ち並ぶIaaS市場への参入は奇異にも映る。

 「これは例えば、エンドユーザーに最も近い場所から低遅延で優れた体験を提供したいと考えるわれわれの顧客の要望に対応したものだ。Linodeの買収によってわれわれは、パフォーマンスと堅牢性、安全性、極めて低廉なコストメリットを特徴とするコンピューティング環境を顧客に提供することができる」とLeighton氏は話す。

 Linode買収によりAkamaiが提供可能になるとするのは、仮想マシンやコンテナー、Kubernetes、データベース、ファンクションの“アズ・ア・サービス”といったIaaSのコンピューティングリソースになる。ハイパースケーラーにとってこれらは、既に提供開始済みであり、ユーザーの利用が拡大し続けているものだ。

 Leighton氏は、IaaSへの進出がハイパースケーラー各社との競合になると認める。「彼らがクラウドの世界で大きな成功を収めているのは間違いない。連携もしているが、エッジ領域においてAWSとは15年近いライバル関係にある」

 2000年代中盤から現在までのITインフラの潮流は、基本的にクラウドデータセンターへの集中だが、モバイルやIoTなどのクライアントデバイスが台頭し、それらから発生するデータを人工知能(AI)などのテクノロジーで活用するとなれば、クラウドデータセンターへの一極集中がパフォーマンスの面でも通信コストの面でもデメリットになることが知られてきた。

 そこで、データの発生源に近いエッジ領域にコンピューティングリソースを分散させる逆の潮流も生まれ、AWSの「Outposts」など、ハイパースケーラー各社がエッジコンピューティングのサービスを拡大させている。AkamaiのLinode買収は、エッジ領域に進出するハイパースケーラーへの対抗という目的もある。

 ただしLeighton氏は、同社のIaaSがあくまでエッジソリューションの1つだとも説明する。「世の中がクラウドデータセンターのコアコンピューティングへ集中していることは、ハイパースケーラー各社のこれまでの成長ぶりを見ても明らかだ。エッジコンピューティングはその一部であり、大きな流れとしてはこれからもしばらく続くことになる。われわれは、エッジにおいてフルセットのIaaSを提供していく」

 コロナ禍では、働く環境が境界防御で保護されたオフィス内から自宅などに変わり、サイバー攻撃のリスクが急速に高まった。Leighton氏は、「ネットワークおよびアプリケーションのレイヤーにおいて幾多の防御手段を講じ、ユーザーのセキュリティを守り続けている」と述べる。

 コロナ禍収束の見通しも徐々に語られる中で、働く環境は、オフィスか自宅かではなく、柔軟に場所を選ぶハイブリッドスタイルになっていくと見られる。Leighton氏は、「アクセスする環境が多様化していくとなれば、現在のネットワークレイヤーよりもアプリケーションレイヤー側での保護がより重要になるだろう」と述べる。セキュリティ領域では、2021年にマイクロセグメンテーションベンダーのGuardicoreを買収しており、マルウェアや分散型サービス妨害(DDoS)、認証情報の侵害、フィッシング、不正侵入といった広範な脅威に対するソリューションポートフォリオの拡大を進めている。

 また、2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、サイバー戦や情報戦の要素も強くなり、情報伝達を担うインフラとしてのネットワークにまつわるリスクと見ることもできるだろう。

 Leighton氏は、ネットワーク関連サービスに携わる同社のスタンスとして、「当然ながらロシア政府の動きを一切支持せず、侵攻当初より同国政府関連企業とのビジネスも取りやめている。紛争に限らず、われわれには事業展開先の国や地域の法規制を適切に順守してビジネスを行う明確なポリシーがあり、例えば、ギャンブルが禁止されている国ではそのコンテンツは当然配信しないということだ」と説明する。

 Leighton氏は、コロナ禍で厳しい入国制限が取られていた間も何度か日本を訪問していたといい、顧客やパートナーなどどの関係の維持強化に務めてきたという。「日本は非常に魅力的な場所だ。コロナ禍を通じて、特にセキュリティの脅威を課題に挙げる日本の顧客の声が高まっている。当社の使命は『毎日、世界中の人々の人生をより豊かにする』ことであり、この使命を全うすべくセキュリティや新たなコンピューティングサービスを通じて日本の変革に貢献したいと考えている」と述べている。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
MS、通信事業者に焦点を当てた5G向け「Azure」サービスをMWCで発表
IT関連
2022-03-03 07:41
全115冊+別冊4冊の「藤子・F・不二雄大全集」を電子書籍化 小学館、9月から順次配信
くらテク
2021-08-12 10:24
LLMのセキュリティ対策は「まだ道半ば」–Splunkの首席調査官が指摘
IT関連
2024-09-14 12:12
五輪ツイート「応援」急浮上 「中止」「コロナ」開会式を機に一変
IT関連
2021-07-30 07:20
人材募集と雇用の多様化–Tray.ioのデータ活用方法とは
IT関連
2022-09-16 22:58
ジブリ映画「アーヤと魔女」公開延期 新型コロナウイルスの感染拡大で
くらテク
2021-04-24 02:29
Boston Dynamics、ピッキングフォークリフトを不要にする倉庫ロボット「Stretch」を披露
ロボット・AI
2021-03-31 17:20
DevOpsエンジニアを目指す人へ–その良い面と悪い面、醜い面とは
IT関連
2024-03-29 07:30
iPad Pro 2021年モデルの新情報 サウンド周りを見直し、カメラ部に変化
-
2021-01-13 11:32
さっぽろ雪まつり、来場者への応対にCTCのAIチャットボット活用へ
IT関連
2023-01-28 12:33
Udemyの幹部たちが、より良いUdemyを作るために退社した理由
IT関連
2022-02-12 09:07
Cloudflare、すべての生成AIによるクローラーをワンクリックでブロックする機能を無料で提供開始
クラウド
2024-07-11 07:59
HPE、「HPE GreenLake for LLM」を発表–「AIパブリッククラウド市場に参入」とネリCEO
IT関連
2023-06-23 00:21
【2月21日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は朝型・夜型人間の平日活動量に差はナシ、2位メタ新スキャンダル
IT関連
2022-02-22 03:57