F5、NGINXの開発チームをロシア国外へ移転させたことを報告。開発を立て直しリリースサイクルも元通りに
今回は「F5、NGINXの開発チームをロシア国外へ移転させたことを報告。開発を立て直しリリースサイクルも元通りに」についてご紹介します。
関連ワード (今後、国内、退任等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、Publickey様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
NGINX(エンジンエックス)はオープンソースで開発されているWebサーバとしてもっとも人気のあるソフトウェアの1つです。その開発者であるIgor Sysoev(イーゴリ・シソエフ)氏がロシアの首都モスクワに住んでいたことなどにより、NGINXの開発はロシアの首都モスクワを中心に行われていました。
そのロシアは現在、ウクライナへの武力侵攻に反対する西側諸国による厳しい経済制裁下にあり、多くのIT企業もロシアにおける活動を停止しています。
2019年にNGINX社を買収し現在NGINXの開発元となっているF5も、ロシアにおける営業活動とNGINXオープンソースプロジェクトへの貢献を停止したことを、3月15日付けのブログ「Standing Firm in Support of the People of Ukraine」で次のように明らかにしていました。
We have removed F5 network access and halted contributions to NGINX open-source projects in Russia; this work will continue in other global locations.
私たちはロシアにおけるF5のネットワークアクセスを排除し、NGINXオープンソースプロジェクトへの貢献を停止しました。これはグローバルにおける他の地域では継続しています。
これでモスクワを中心としていたNGINXの開発が今後どうなっていくのかが不透明になり、その先行きが心配されていました。
そんな中、F5のRob Whiteley氏が、NGINXの開発陣をモスクワから移転させ、ふたたび順調なリリースを計画していることをツイートで明らかにしました。
Whiteley氏のツイートを紹介していきましょう。
1/7 We’ve seen some concern from the community about the future of @nginxorg. Firstly, thank you! The commitment to the #NGINX open source projects is truly appreciated. Secondly, let me provide some insight and assurance.
— Rob Whiteley (@rwhiteley0) May 13, 2022
Nginx.orgの将来について、コミュニティから懸念の声が上がってたことは承知していました。まずは感謝申し上げます。NGINXオープンソースプロジェクトへのコミットメントは本当にありがたく思います。そしていくつかの見通しと約束をお伝えします。
2/7 NGINX open source is still very much alive and well. We anticipate the 1.21.7 (mainline) will release later in May and 1.22.0 (stable) will release in June. We have some (unusual) variability in our dev timelines given the war in the Ukraine.
— Rob Whiteley (@rwhiteley0) May 13, 2022
オープンソースのNGINXはいまだ健在です。バージョン1.21.7(メインライン)は5月後半に、1.22.0(安定版)は6月にリリースされる予定です。ウクライナ戦争の影響により、開発スケジュールには(異例の)変動があります。
3/7 NGINX OSS was developed primarily in Moscow (NGINX Plus is entirely outside of Russia). We’ve globalized the team and relocated devs from Moscow. And we gave them time and space to focus on matters outside of work, for obvious reasons. More on that: https://t.co/Qrx0HkyoBI
— Rob Whiteley (@rwhiteley0) May 13, 2022
NGINX OSSは主にモスクワで開発されていました(商用版のNGINX Plusは全てロシア国外でした)。私たちは開発チームをグローバル化し、モスクワから開発者を移転させました。そしてお分かりと思いますが、彼らには仕事以外のことに集中できる時間と空間を提供していました。
4/7 We’re now back on track and NGINX OSS releases will resume a regular cadence, with releases getting successively more content rich. For now, focus is on our annual stable release (1.22.0) and the big-ticket item: merging our HTTP/3 and QUIC code (see https://t.co/FdzSrKK0WJ).
— Rob Whiteley (@rwhiteley0) May 13, 2022
現在、私たちは元の軌道に戻り、NGINX OSSのリリースはいつものサイクルで再開されます。リリースは順次内容が充実していく予定です。今のところ、毎年恒例の安定版リリース(1.22.0)と、HTTP/3とQUICのコードのマージという大きなアイテムにフォーカスしています。
5/7 You’ll see more details on NGINX open source capabilities and timelines emerge on https://t.co/vJv3ePgVbO as we continue to plan out this work.
— Rob Whiteley (@rwhiteley0) May 13, 2022
NGINXオープンソースのさらに詳しい機能とタイムラインは、継続してこちらhttps://trac.nginx.org/nginx/roadmapでご覧いただけます。
6/7 We have a lot of exciting capabilities across all of our OSS projects, including capabilities in NGINX OSS, NGINX Unit, and NGINX JavaScript, as well as entirely new projects. We’ll provide a comprehensive overview of all things OSS at our community event, NGINX Sprint.
— Rob Whiteley (@rwhiteley0) May 13, 2022
NGINX OSS、NGINX Unit、NGINX JavaScriptだけでなく、まったく新しいプロジェクトを含む、すべてのOSSプロジェクトに多くのエキサイティングな機能を予定しています。コミュニティイベントであるNGINX Sprintでその全体像をお見せするつもりです。
7/7 Save the date on August 24 to learn more about NGINX OSS and all upcoming projects at NGINX Sprint. We’ll demo new features in existing projects and MARA (Modern Apps Reference Architecture: https://t.co/uoDprir7ct), as well as new control plane projects. pic.twitter.com/Av56uC4T8I
— Rob Whiteley (@rwhiteley0) May 13, 2022
NGINX OSSとこれからのプロジェクト全ての詳細については、8月24日のNGINX Sprintにぜひご期待ください。既存の製品の新機能やMARA(Modern Apps Reference Architecture)や新しいコントロールプレーンなどのデモをお見せする予定です。
Whiteley氏のツイートでNGNIXの開発をモスクワから移転し、リリースサイクルを再開したことが説明されています。F5はロシア国内での活動を引き続き停止しているため、移転先がロシア国外であることは間違いないでしょう。今回の報告で、NGINXの先行きを不安視していた方々の不安はある程度払拭されたと思います。
一方で今回、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻がNGINXのような重要なオープンソースプロジェクトを(一時的であれ)不安定なものにしてしまったことを、多くのオープンソース関係者が知りました。
世界にはロシア以外にも領土的野心や軍事的野心を持つとされている国々があります。そうした国が将来、ロシアのような行動をとった場合に、オープンソースプロジェクトを健全に維持し続けられるようにするにはどうすればよいのか、多くのオープンソース関係者が考え始めているのではないでしょうか。
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