PCの使い方で大きく違う温室効果ガス排出量の削減効果

今回は「PCの使い方で大きく違う温室効果ガス排出量の削減効果」についてご紹介します。

関連ワード (モバイル、新潮流Device as a Serviceの世界等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 先日の夕食時、ニュースを見ていた小2の息子が「SDGs」(持続可能な開発目標)という言葉に反応して、「知っている」と言い出しました。びっくりしました。

 小学校で教わったり、NHKの教育チャネル(Eテレ)で見たりして、覚えたそうです。意味はよく分かっていませんでしたが――。まさに猫も杓子もSDGs。今回は、どの企業でもホットな話題のSDGsにちなんで、「Device as a Serviceは環境にやさしいのか?」という疑問にお答えしたいと思います。漠然とAs a ServiceやレンタルPCが環境に優しそうだと思っている方も多いと思います。果たしてそれは事実なのでしょうか。

 「環境にやさしい」には、いろいろな定義があると思いますが、環境負荷を軽減するという点において最近よく目指すべき姿と言われるのは、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」などでしょうか。温室効果ガスの排出量をなるべく少なくし、排出自体をゼロにするのは無理にしても、排出量と吸収量を等しい量にして、実質的なゼロを目指しましょう――というのが、カーボンニュートラルという考えです。

 「Device as a Serviceは、カーボンニュートラルに貢献することが出来るのか?」。日本ITDA協会(旧情報機器リユース・リサイクル協会)のウェブサイトには、下記のように書かれています。

 なるほど。PC1台を製造するための二酸化炭素(CO2)排出量は300kgと推定され、それを再利用することにより、新しいPCを作らなくて済み、リユースPCにかかるCO2排出量は20~40kgと推定されるので、10%以下にCO2排出量を抑えられるということです。Device as a Serviceは、レンタルPCをベースにしてリユースが想定されていますから、貢献できそうです。

 ただ使っていたPCをリユースに回せば、新品のPCを利用した場合と比べてCO2排出量を減らせるのは、リユースに回した自分たちではなく、リユースPCとして買った人のような気がします。理論をこねくり回せば、新品のPCをリユースに回したことで、新品のPCにまつわるCO2排出量を相殺する論も成り立ちそうな気もしますが、企業の目指すべき「脱炭素に貢献」とはちょっと違う気がします。

 そもそも、企業の売上高100万円当たりのCO2排出量は、大和総研の2016年12月のレポート(PDF)によると、平均で1.72tだそうです。

 業種によって異なるので、一概に言えませんが、1人当たりの売上高が仮に5000万円だとしたら、1人当たり年間86tのCO2排出量となります。1人1台のPCが割り当てられているとして、それを新品からリユースPCにしたとしても削減されるCO2排出量はわずか約200kg、3年に1回PCを買い替えるとして年間の削減量率は全体のわずか0.07%です。その貢献は、ごく軽微と言わざるを得ません。

 どうりで、「リユースPCでCO2排出量削減!」と、声高に叫ぶ人が少ないわけです。このために、性能で劣る中古PCを従業員に割り当てようとするかといえば、しないでしょう。修理対応なども増えるでしょうし、そもそも省電力性能も違ってきます。もしかしたら、逆に利用中のCO2排出量が増えてしまうかもしれません(とはいってもPCの消費電力にかかるCO2排出量もごくわずかの1時間当たり17gなのでその影響も軽微といえば軽微です)。少なくとも、リユースPCを利用していくことが温室効果ガス排出量を削減する、環境負荷の軽減に貢献しているというのは難しそうです。

 残念ながら、企業単位で見た温室効果ガス排出量という点では、リユースPCの効果をもってDevice as a Serviceが環境負荷の軽減に貢献するとは言い難いようです。国際的な気候変動イニシアチブの温室効果ガス排出削減目標である「Science Based Targets(SBT)のように、企業が環境問題に取り組んでいることを示す目標設定でその効果を見ることは、それこそ難しいでしょう。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
Meta、生成型AIに特化した製品グループを設置–「Messenger」や「Instagram」にも
IT関連
2023-03-01 09:06
Rapid7、脅威インテリジェンス分野のIntSights Cyber Intelligenceを買収
IT関連
2021-07-20 07:05
岐阜県内18自治体、電子契約「クラウドサイン」の実証実験
IT関連
2022-07-12 17:16
第3回:時代の変化から見出す–日本企業におけるERP活用の活路
IT関連
2023-12-16 13:58
今こそAIへの投資を再開すべきとき ニューノーマル時代を見据え最新の高性能サーバで開発力強化を
PR
2021-04-29 00:26
総合食品メーカーの東洋水産、AIソリューションで請求書支払業務の効率化へ
IT関連
2023-01-31 16:05
“10の36乗”個のアドレス空間をどう可視化? 世界初、IPv6に対応したNICTのトラフィック可視化ツール「NIRVANA改」
くわしく
2021-04-16 23:22
新しい「Microsoft Teams」が一般提供開始–メモリーとディスクの使用量が半減
IT関連
2023-10-12 08:46
iPhoneのWi-Fiを無効化する有害なSSIDが新たに発見、Wi-Fi範囲内に入るだけで関連機能が使えなくなる
セキュリティ
2021-07-06 22:23
AWSマネジメントコンソールに新機能。ウィジェットで自分好みにカスタマイズ可能に
AWS
2022-01-14 04:39
中央省庁の情報漏えい件数、「このままなら21年は過去2番目の被害規模」 テレワーク推進が背景か
企業・業界動向
2021-07-09 19:10
日揮グローバル、統合コミュニケーション基盤を構築–プロジェクトのやりとり集約
IT関連
2022-12-29 21:04
Twitterセレブアカウント乗っ取り犯の18歳、懲役3年に
アプリ・Web
2021-03-18 18:09
エキナカの“一等地”にeスポーツ施設……なぜ? JR東に聞いた (1/2 ページ)
DX
2021-03-09 01:19