ローコード/ノーコードソフトウェアの普及によって試されるIT部門の実力

今回は「ローコード/ノーコードソフトウェアの普及によって試されるIT部門の実力」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 ローコードやノーコードのソフトウェアは市民開発者であるかIT部門の開発者であるかを問わず、多くの企業で使用されており、その勢いはとどまるところを知らない。こうしたツールの性能は強化され続けており、ローコード/ノーコード開発が企業内でどれほど深く、広く浸透していくのかという疑問があるだけだ。つまり、小規模で、スケーラビリティーを必要としないアプリ向けにとどまるのか、それともより大規模なエンタープライズアプリにも適用できるようになるのかだ。

 例えばGartnerは、1年以内にローコードツールがエンタープライズアプリでも利用できるようになるとしている(同社はノーコードツールについては述べていない)。同社のアナリストであるMark Driver氏は、その頃までにローコードツールのユーザー層に占める非IT部門の開発者の割合が、2021年の60%から少なくとも80%に増えると予測している。また同氏は、ローコードプラットフォーム分野は急速に発展してきており、今後数年でローコードツールに「ハイパーオートメーション機能」が搭載されるようになると付け加えた。さらにローコードツールと、パッケージ化された業務機能の緊密な連携も実現されるようになるという。

 デジタル化に向けた取り組みのおかげで、物事が高速に変化・進歩し続けている結果、予算不足で業務負荷が高まっているIT部門は後れを取る一方だ。Driver氏は「IT組織と外部のサービスプロバイダーはいずれも、デジタルソリューションが求めるアジリティーと多様性に応えるために苦戦している」と述べた上で、「ローコードは、業務変革を成し遂げるとともに、そうしたイニシアチブをコスト効率に優れた形で長期的に拡大していくための可能性を秘めたツールの1つとして、5年ほど前から台頭してきた」と続けた。

 ただ、エンタープライズアプリにローコードやノーコードのソリューションが採用されるようになると、すべての人々が考えているわけではない。Redgate SoftwareのDevOpsアドボケイトSteve Jones氏は、こうしたツールが最も適しているのは依然として小規模な取り組みだと主張している。同氏によると、ローコード/ノーコードは「単一目的に特化した小さなアプリを開発するための手始めとなる、ちょっとしたものを構築する優れた方法」であり、「例えば、カレンダーに記載されている休暇予定をすべて取りまとめて表示し、特定の期間にあまり多くの担当者が休みを取らないようにしたいという場合があるだろう。また、目標に向けた進捗を管理するためのダッシュボードを作成したいという場合もあるかもしれない」と続けた。

 それでもプロフェッショナルの開発者やIT部門は、ローコード/ノーコード開発ソリューションがどう使われているかに常に目を光らせる必要がある。BMC Softwareのシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務めるMargaret Lee氏は、「ノーコード開発やローコード開発は簡単に使えるが、それは、それを支える体制が耐える限りの話だ」と述べている。「ローコード開発を成功させるにはガバナンスが必要で、優れた顧客体験を保証するために、プロフェッショナルによるある程度の監視が必要になる」

 別の言い方をすれば、適切な指針や安全策がなければ、IT部門が問題を解決するために介入が必要になる可能性があり、事業部門のユーザーは、自分たちのソフトウェアの管理に足を取られてしまうことになりかねないということだ。Jones氏は、ローコード開発やノーコード開発は、「スコープが限られており、利用者が少なければ有効だ」と述べる一方で、「しかしIT部門は、それらのアプリケーションが組織にとって重要になり、追加のコーディングや書き直しが必要になった場合には、引き継げるような準備をしておく必要がある」と付け加えた。「それらのアプリケーションは、規模の拡大が容易な場合もあれば、そうでない場合もある。また、事業部門のユーザーにとって邪魔な存在にもなる。アナリストがローコード開発で作成したアプリのメンテナンスに手がかかるようになれば、アナリストとしての仕事がおろそかになる。これは90年代に『VisualBasic』でもみられた現象で、多くの事業部門のユーザーが小さなアプリケーションを作ったが、そのサポートとメンテナンスを自分でやらざるを得なくなった」

 ローコード/ノーコード開発のアプローチは、プロフェッショナルの開発者自身が利用する形で企業に入り込んでくる可能性もある。Lee氏は、ITプロフェッショナルが簡単にアプリケーションを展開するためのツールとして使えば、「コーディングなしで非常に複雑なビジネスプロセスをすっきりとした形で作成できる」と主張している。例えば、ローコード/ノーコード開発は、DevOpsの実施手順を導入したり改善したりしながら、一部の付加価値が低い手順を排除し、機動性や実験、チームワークを後押しするための優れた手段になり得る。「これによって、プロセスオーナーは自分のプロセスの管理に専念できる一方で、開発者は標準的なブロックを組織のニーズに合わせて作られた高付加価値のカスタムブロックで強化することに集中できるようになる」と同氏は言う。

 ローコード/ノーコード開発によるアプリケーション開発にどのような関与が必要になるかは、仕事の複雑さによって異なる。「簡単で目的が1つしかないアプリ」であれば、シチズンデベロッパーが一人で作れるとJones氏は言い、こう続けた。「SalesforceのようなものからAPIを使ってデータを取得したり、『Microsoft Power Platform』のアプリを使って、企業のデータベースのデータを収集したり保管したりするものがこれにあたる」同氏は、IT部門の支援が必要なのは、「社内のインフラや、企業名義のクラウド契約などの社内で管理しているインフラを利用する場合だ。また、そのアプリケーションを動かすために、データベースやネットワークなどの変更が必要になる場合もこれに当てはまる。その場合、ワークステーションに何らかのツールをインストールするための許可も必要になる可能性が高い」と説明した。

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