「ITのプラットフォーマー」を掲げる大塚商会の思惑とは
今回は「「ITのプラットフォーマー」を掲げる大塚商会の思惑とは」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、大塚商会 代表取締役社長の大塚裕司氏と、AWSジャパン 執行役員 広域事業統括本部 統括本部長の原田洋次氏の発言を紹介する。
大塚商会は先頃、中長期経営方針を発表した。大塚氏の冒頭の発言はその発表会見で、大塚商会の強みを説明する中で同社ならではの「立ち位置」を示したものである。
大塚商会が中長期経営方針を発表したのは、およそ20年ぶりのことだ。以前は上場したタイミングだったが、その後「中長期経営方針やその戦略策定に時間を費やすより現業に注力して成果を出す方が、IRの観点でも意味がある」(大塚氏)との考え方から策定してこなかった。そうした中で今回発表したのは、「東証プライム市場の企業として中長期経営方針を発信することも必要だと考えた」(同)ことから、具体的な数字については決算発表で明らかにするとして、今後の経営の考え方について明示した形だ。
まず、大塚氏が示したこれからの大方針は、「2020年から続いた膠着(こうちゃく)状態を払拭し、再び成長軌道へ。持続可能な社会への貢献を進め、どんな環境変化にも耐え得る長期持続的なビジネスモデルを構築すべく、『お客さまとの新たな関係創り』を目指す」といったものだ。これに基づいて、表1に示した4つの経営方針を明示した。
この経営方針をはじめとした会見の内容については速報記事をご覧いただくとして、ここでは大塚氏の冒頭の発言に注目したい。
大塚氏の冒頭の発言は、図1に示した大塚商会の強みについて説明した中でのものだ。強みについては、「オフィスで必要なほぼ全ての商材を扱う、世界的にも珍しいビジネスモデル。多種多様なソリューションで、お客さまをまるごとサポート」と表現し、「お客さまのお困り事にすぐ対応して、ご満足いただけていること」とも続けた。
その上で、29.2万社の顧客基盤と、約2400社のパートナー企業(ハードウェア/ソフトウェアベンダーなど)との取り引きがあることを挙げ、「パートナー企業のお話をいろいろと聞きながら、一方でお客さまのご要望をしっかりと聞き、的確にお応えできるソリューションを提供するという仕事をさせていただいている。この仕事は言わば、お客さまとパートナー企業をつなぐITのプラットフォーマーだと自負している」と胸を張った。
筆者はこれまで大塚商会の会見にはほぼ出席してきたが、大塚氏が自らについて「プラットフォーマー」という言葉を公の場で使うのを初めて目にしたので、特に印象に残った。
IT/デジタル分野では、自らのテクノロジーが大きなエコシステムを生む「プラットフォーム」だとして、自らをプラットフォーマーと呼びたがるベンダーが少なくない。それは、誰しもエコシステムの要(あるいは頂点)の存在になりたいからだ。
だが、大塚商会がプラットフォーマーだとすれば、そのプラットフォームの原動力となっているのは、テクノロジーというよりも同社ならではの地域に密着したセールスとサポートの力だ。その力にも徹底したデジタルトランスフォーメーション(DX)を施すことで、さらに磨きをかけ続けている。セールスとサポートの最前線は人(社員)が担っているが、筆者には同社のビジネスモデルが「巨大な装置」のように映る。
プラットフォーマーの大塚商会が今後、エコシステムをどのように広げていくのか。注目していきたい。