AWSジャパン、金融業界における生成AI活用事例を発表–顧客課題を起点にしたアプローチ
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アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は7月27日、金融業界向け生成AIの活用方法に関する報道関係者向けの勉強会を開催した。
ジェネレーティブAIとも呼ばれる生成AIは多方面での利用が検討されている。AWSジャパン 金融事業開発本部長の飯田哲夫氏は「われわれはプロダクトアウトではなく、金融業界の戦略パートナーとして顧客課題を起点としたサービス開発と解決支援に取り組む。金融業務におけるコスト最適化やセキュリティ・コンプライアンス準拠を行いつつ、AWSサービスの連携を容易化する」と生成AIに対するアプローチを説明した。
同氏は「AWSジャパンは2017年から金融業界のITを支えるインフラプロバイダーだったが、2021年からは金融領域がDXを経営課題と扱う中で、(AWSが)単なるインフラではなくて、金融ビジネスを変革するための主要な手段に位置付けられるようになった」とこれまでの取り組みを振り返る。
AWSは2021年に金融ビジネス戦略「Vision 2025」を発表し、多面的に金融機関のデジタル化を支援してきたが、AWSジャパンは金融業務に限らないビジネスモデルへの挑戦やコロナ禍で変化した新生活様式を織り込んだ消費者と金融機関の関係構築、社会変革や気候変動に耐えうる回復力の獲得がAWSで実現できると主張する。その一部分を担うのが生成AIだ。
Bloombergは2023年3月に「Amazon SageMaker」を利用して金融機関向け生成AIモデル「BloombergGPT」を開発し、顧客企業の支援を表明した。それでも生成AIの実装には多くの課題が存在し、飯田氏は「基礎モデル(大規模言語モデル)は多くの選択肢があるものの、業務内容に応じて使い分ける必要がある。運用時のコスト増や運用負荷に対しても、われわれのマネージドサービスで抑制可能。セキュリティやコンプライアンスについてもデータ暗号化や『Amazon Virtual Private Cloud(VPC)』で利用データを特定できる。必要に応じたアプリケーション連携も『Amazon Working Backwards』やAWSの各種サービスで解決できる」とワンプラットフォームで課題を解消できると主張した。
現在のAWSはインフラ周りをAWSに任せて、生成AIアプリケーションの開発を容易化する「Amazon Bedrock」を筆頭に複数のサービスを提供している。AWSジャパン 技術統括本部 技術推進グループ 本部長の小林正人氏は「特にAmazon Bedrockは得手不得手がある基盤モデルから、顧客企業が必要とする業務向け基盤モデルを選択できるのがポイント」だという。
現在はプレビュー版だが、AWSが開発した「Amazon Titan」や「Titan Embeddings」、AI21 Labsが提供する「Jurassic-2」など複数の基盤モデルを選択可能。同じく既存の基盤モデルにアクセスして生成AIを開発する「Amazon SageMaker JumpStart」は自社開発やクラウドのコンピューティング資源にかかるコスト増を軽減し、開発手順を容易化できる。
コードの内容を精査して開発を支援する「Amazon CodeWhisperer」は社内調査でタスク正常完了率は27%向上し、平均57%の開発時間短縮を実現した。また、機械学習用アクセラレーターを搭載する「Amazon EC2 Trn1nインスタンス」「Amazon EC2 Inf2インスタンス」も提供する。グローバルでは伴走型開発支援プログラム「Generative AI Innovation Center」、国内独自として「AWS LLM 開発支援プログラム」を通じた開発支援も行う。
金融業界の具体的な生成AI実装については、自動応答チャットボットとコンタクトセンタースタッフの業務支援の例を紹介した。自動応答チャットボットは、自社の金融商品やサービスについて正確な回答を返しつつも、他の不適切な情報提供抑止を目的としている。具体的には、社内情報ソースを併用するRAG(Retrieval Augmented Generation)アプローチの「Amazon Kendra」でオンプレミスやクラウド上のデータを消費者が応答するアプリケーションに参照させ、適切な回答を導き出す。
AWSジャパン 金融ソリューション本部 保険ソリューション部 部長の木村雅史氏は、「金融機関としては自社の商品サービスについて正確に回答したいが、他行のサービスや学んでいない内容の返答は抑止したい場面に有用だ」と説明する。Amazon Kendraを導入したSBI生命保険では規約やパンフレット、Q&Aなどの検索自動化を2カ月で実現したという。
コンタクトセンタースタッフの業務支援は、オムニチャネルコンタクトセンターサービスの「Amazon Connect」などと組み合わせ、消費者やオペレーターの文字起こしやRAGアプローチの生成AIボットによる会話に合わせた回答生成、通話内容の自動要約、通話後のタスク支援を実現する。
一見すると生成AIの利用は部分的だが、木村氏は「スーパーバイザーや先輩オペレーターへの相談ではなく、AIの応答で(消費者の)質問内容に沿った高精度の回答を狙える」と説明した。AWSジャパンは開発者の機械学習を支援する「Machine Learning University」「ML Solutions Lab」やユースケースに応じたビジネス価値を判断する「ML Discovery Workshop」、Amazon Working Backwardsで生成AIの活用案を検討できる「Digital Innovation Program」など多数の支援プログラムを用意している。