都立中高生が「Power Apps」でハッカソン–アプリで“青春の問題”に立ち向かう

今回は「都立中高生が「Power Apps」でハッカソン–アプリで“青春の問題”に立ち向かう」についてご紹介します。

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 東京都教育委員会は8月14~16日、都立学校の中高生を対象としたハッカソン「夏の3Daysハッカソン 青春の問題をITで解決しよう!」を日本マイクロソフトの品川本社で開催した。参加者は「青春の問題」を解決するというテーマのもと、「Microsoft Power Apps」を活用してローコードでアプリを開発。都立高校生40人、都立中高一貫校の中学生19人が参加し、計16グループがアイデアと技術を競った。

 同イベントは3日間にわたって開催され、初日はオリエンテーション、アイデア出し・設定、アプリの企画・開発、2日目は企画・開発の続き、最終日の午前は発表準備、予選発表、午後は決勝発表、審査・表彰式といった構成となっている。本記事では、最終日である16日の決勝発表と受賞チームへのグループインタビューの様子をお伝えする。

 決勝では、予選を通過した6チームが自身の開発したアプリを5分間でプレゼンテーション。3分間の質疑応答では、審査員による質問に回答するほか、アプリを審査員や他の参加者に利用してもらい、アピールすることもできる。上位3チームには「最優秀賞」「優秀賞」「審査員特別賞」が贈られる。

 審査員は、インプレス PC編集統括部長 兼 窓の杜・INTERNET Watch 編集長の鈴木光太郎氏、企業のスマートフォンアプリ開発などを行うアイリッジ 営業本部 ビジネスパートナー部 部長の井上直人氏、米Microsoft Cloud Developer Advocateの千代田まどか氏が務めた。審査基準は、(1)プレゼン内容、(2)アプリの完成度、(3)アイデアの斬新さ――としている。

 最優秀賞に輝いたのは、東京都立晴海総合高等学校の1年生5人で構成されたチーム「くらげ」。くらげチームは、クラゲを育成しながらAIが自動で日々のタスクを設定してくれるアプリ「くらげカレンダー」を開発(図1)。同チームは「青春は“日常生活の充実”にある」とし、充実させるには宿題などのノルマを計画的に終わらせる必要があるという考えから、同アプリの開発に至ったという。

 ユーザーは達成したい目標を入力すると、AIが毎日のタスクを設定してくれる。期限が近づくと通知が届き、日々のタスクを達成するとクラゲが成長する仕組みだ。一方、タスクの未達が1週間続いたり、最終的な目標を達成できなかったりすると、クラゲは死んでしまう。クラゲの育成機能により、モチベーションの維持・向上や、ノルマに追われるストレスを軽減することを図る。

 AIの部分には、大規模言語モデル(LLM)「GPT-3.5」の利用を想定している。今回は東京都の設定上、アプリに搭載することはできなかったが、くらげチームは搭載するまでのフローを作成し、Power AppsからGPT-3.5をAPI連携する方法を採った(図2)。

 AIの活用により、同チームは「ユーザーの感情に沿ったスケジューリングができる」と力説。例えば「手描きのポスターを作成する」というタスクの場合、特定の日付において「人と会う大事な予定がある」などと入力すると、AIが「画材で手を汚したくない」と判断し、その日はポスター作成のタスクが割り振られないと期待される。

 チームリーダーの鏑木柚香さんは「みんなで力を合わせて頑張った結果、(最優秀賞を)もらうことができ、すごくうれしかった。他のチームにも良いところがあったので、それに勝るものを開発できたのは誇らしくもある」と喜びをにじませた。勝因について、北華乃音さんは「フローを組むなど、AIを実装する手前まで作れたことが鍵になったのではないかと思う」と分析した。

 優秀賞は、東京都立晴海総合高等学校1年生1人と東京都立小石川中等教育学校2年生2人の合同チーム「さんどうぃっちず」。同チームは「私たち青春を駆け抜ける世代は、夢や部活、趣味などの“やりたいこと”、勉強、将来、人間関係などの“やらなければいけないこと”の板挟みになり、自分を見失って『あれ、今私、何しているんだろう』と苦悩することがある」と訴え、青春の問題は「多感で多忙な時期に自分の芯を見失ってしまうこと」とした。

 そこで同チームは、毎日の感情を“色”で記録し、写真や音楽、言葉と共に振り返られるアプリ「タイムカラセル」を開発。アプリ名は「タイムカプセル」と「カラフル」を組み合わせている。通常の日記は面倒になって三日坊主になってしまうことが多いが、タイムカラセルでは8種類の色を選ぶだけで感情を記録できる。対象は中高生だけでなく社会人も想定しており、過去を振り返ることで初心に戻れると見込んでいる。

 初期設定としてユーザーは、色と自分の気分を関連付ける。例えば、楽しい時は赤色、悲しい時は青色、どちらでもない時は緑色、といった具合だ。その日の気分に合った写真や音楽も添付できるほか、選択した色を基にアプリ側が世界の名言やねぎらいの言葉を出し分ける(図3)。ユーザーは添付した写真や音楽を色ごとに見返したり、カレンダーで色の移ろいを振り返ったりできる。

 アプリにおける今後の展望について、東京都立小石川中等教育学校1年生の長谷川真緒さんは「前例のないアプリだと思うので、まずはちゃんと社会に出したい。利益を得るというよりは、人を幸せにすることを目指している。メンタルヘルスなどの領域で役立ててもらえたらうれしい」と語った。

 主にプログラミングを担当し、他の2人と学校と学年が異なる東京都立晴海総合高等学校2年生の藤井夏希さんは「違う学校だったので最初はすごく緊張したが、2人がすごく優しくしてくれて、いつも通りにできた」と述べた。東京都立小石川中等教育学校1年生の鈴木里菜さんは「アイデアが決まっていく過程が一番楽しかった。行き詰まることもあったが、アプリの軸ができた時は達成感でいっぱいだった」と振り返る。

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