三菱電機、新デジタル基盤「Serendie」を発表–データ関連ビジネスを拡大へ
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三菱電機は5月29日、デジタル基盤「Serendie(セレンディ)」を発表した。同社はデータ活用ソリューション事業とデータ収集コンポーネント事業を「Serendie関連事業」と位置付け、2023年度に売上高6400億円、営業利益率16%の実績から2030年度には売上高1兆1000億円、営業利益率23%に拡大する計画だ。また、現在6500人のDX人材を2030年度に2万人へと拡大する。
記者会見した執行役社長 CEO(最高経営責任者)の漆間啓氏は、「三菱電機がありたい姿である『循環型デジタル・エンジニアリング企業』を実現するために、新たなデジタル基盤を整備した。将来への新たな価値を持続的に創出し、Serendie関連事業が収益の柱とすることを目指す」と述べた。また、常務取締役 CDO(最高デジタル責任者の武田聡氏は、「Serendieをサステナビリティーの実現とともに経営の中核に位置付ける。2025年度以降は売上高と収益の成長をけん引する」と述べた。
三菱電機が掲げる「循環型デジタル・エンジニアリング」は、顧客から得たデータをデジタル空間に集約して分析するとともに、同社グループ内が強くつながり、知恵を出し合うことで新たな価値を生み出し、これらのステップをデジタルによって迅速に循環させて価値を創出し、幅広い社会課題の解決に貢献することを目指すものという。
Serendieは、この方針に基づいて、データ分析基盤や事業領域を横断したサービスを迅速に提供するウェブAPI連携基盤などで構成される。多様な人材がSerendieを活用して、技術力と創造力を発揮することにより、新たなソリューションを提供するものになると位置付けている。
三菱電機では、電力機器からデータを収集する「BLEnDer」、昇降機やビル管理システムからデータを得る「Ville-feuille」、空調機器や家電、住宅設備機器などからのデータを活用する「Linova」など、各事業領域で個別のプラットフォームを用意している。今回のSerendieでこれらの事業領域をまたがるデータの集約、分析が可能になり、多様な人材が分析結果からアイデアを生み出し、ウェブAPI基盤を通じて事業領域を横断したサービスを提供していく。
漆間氏は、「三菱電機はコンポーネントに強みがある。DXの進展でデータの重要性がますます高まっており、三菱電機が納入しているコンポーネントやシステムが発信するデータがより重視されるようになってきた。データ活用により、お客さまに新たな提案ができる」と述べる。ただ、だが、事業ごとにプラットフォームが異なると、データ同士の連携が困難な課題を抱え。事業間のシナジーを最大化することができていなかった。
同氏は、「2年前に事業本部同士が連携しやすいように、組織をビジネスエリア体制にして、その成果も出てきた。今後データ収集コンポーネントとデジタル基盤を活用し、事業本部を超えてデータ活用ソリューションを開発する。デジタル基盤の取り組みで他社から遅れているという考えはない」と述べる。例えば、交通と電力のデータを組み合わせてSerendieで分析し、車両の整備や列車の運行、電力の最適化を含めた統合ソリューションを検討できるようになるという。さらに、「データからコンポーネントそのものも進化させることができる」(漆間氏)とした。
Serendie関連事業を構成する「データ活用ソリューション事業」には、統合ソリューションや、三菱電機の機器およびシステムのデータを活用するソリューション、遠隔監視サービス、保守サービスなどがある。具体的には、「E&F(エナジー&ファシリティー)」ソリューション、加工機・数値制御装置リモートサービス、昇降機遠隔監視・保守サービスなどを提供する。さらに、Serendieを通じて事業本部の枠を超えたデータ活用ソリューションを数多くそろえていく考えも示した。
具体的には、「ビル×空調×電力」により快適空間や安全安心、ロボット配送を組み合わせたスマートビルソリューションを実現するほか、「FA(工場自動化)×電力」では、脱炭素化やサプライチェーンの最適化による工場向けソリューションの提供を想定している。
Serendie関連事業を構成するもう一つの「データ収集コンポーネント事業」は、データ活用ソリューションを提供するために必要なデータを収集し、通信を行う機能を持つコンポーネント領の域であり、シーケンサやCNC(Computerized Numerical Controller)などがある。常務執行役 CFO(最高財務責任者)の増田邦昭氏は、「Serendieによってハードウェアの価値を高め、ハードウェアの稼働資産も活用でき、ハードウェアの収益確保にも貢献できる」と述べた。
2023年度時点で、データ収集コンポーネント事業の売上構成比が約7割を占めていると見られるが、2030年度にはデータ活用ソリューション事業が過半数を超えると見込みでいる。
なお、Serendieの名称は、偶然の巡り合いがもたらすひらめきを意味する「Serendipity」と、三菱電機が目指す循環型デジタル・エンジニアリングの「Digital Engineering」を掛け合わせた造語で、異なる領域の機器やシステム、データ同士の新たなめぐり逢い、脈々と培ってきた技術と限りない創造力により、顧客と社会に新しい価値を生み出し、活力とゆとりある社会の実現に貢献するものになると説明された。