人のやさしさを感じる会社に–ITの刷新と定着で文化を変えた日鉄工営の5年間
今回は「人のやさしさを感じる会社に–ITの刷新と定着で文化を変えた日鉄工営の5年間」についてご紹介します。
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中小企業でのIT活用は、業務の効率化や生産性の向上といった効果だけでなく、時には企業文化も大きく変える。典型的な“中小製造”という日鉄工営(横浜市)は、約5年にわたるITシステムの刷新と定着化で大きな変革を遂げつつある。同社にこれまでの取り組みを聞いた。
1963年創業の同社は、長年の自動化装置技術を生かして、現在では自動車向け塗装ロボットの設計、製造、導入支援の事業や、10年ほど前からは多角化の一環で鉄工のノウハウを生かした薪ストーブの製造や販売なども手掛ける。従業員数は33人(2024年11月現在)で、日本の「ものづくり」を支えている企業だ。
その同社でITシステムの刷新と定着化をけん引しているのが、2024年11月から代表取締役社長を務める紺野亙氏と現場を支える企画業務部になる。紺野氏は、前職の大手事務機メーカーでの経験をはじめ、これまでIT関連の営業や企画、人事などのコンサルティング、制度や業務の設計などに従事。コロナ禍の直前に同社が募集していた薪ストーブ事業のマーケティング職に興味を持ち、地元でもあった縁で入社したという。
「最初は、薪ストーブの事業を立て直すマーケティングの担当でしたが、ある程度動くうちに、人事系も管理系もやらなければならないと範囲が広がり、企画業務部の担当取締役や工場長も兼務するようになりました。前職までの経験がこれらの専門的な領域で役立ったかもしれません」(紺野氏)
日鉄工営が手掛ける塗装ロボットは、自動車工場で車体のボディーを塗装する重要かつ不可欠な装置になる。現在の自動車は、斬新なデザイン性だけでなく環境にも配慮して複雑な形状をしており、カラーバリエーションも多彩だ。紺野氏は、「小さい会社ですが、設計と製造、施工まで一通り完結でき、郊外に立地しますから、納入前に仮設営を行うことができる『仮組』施設を持っていることが強みです」と話す。
塗装ロボットはいわゆる「1点モノ」で、製造規模や設計~施工の期間なども毎回大きく異なり、取引先との状況に応じて頻繁に変更も発生するという。このため現場の働き方は、長らく古いスタイルのままであったそうだ。
「職人が多く、『先輩の背中を見て覚えろ』という世界であり、勤務時間をあまり意識せず長時間働いてしまうなど効率的でないところがありました。まずは一般的な企業と同じように労務面をしっかり管理する仕組みを整えて業務が回るようにする必要があり、ある程度システム的な方が取り組みやすいと考え、ここから着手しました」(紺野氏)
紺野氏によると、時期や工程、担当により定時型で働く時もあるが、同社の現場の働き方は、ITの表現で言えばプロジェクト型で仕事を進めていくスタイルになるという。プロジェクトの状況や進ちょく、業務内容により変更頻度が多いことから、事前に計画値や人員を割り当てても、その通りに勤怠を管理することが難しい。労務管理ではこれが特殊要因になるとし、システム導入の検討では、定時型を前提とする製品が多い中で、プロジェクト型の働き方に対応し、計画値ありきではなくても管理ができる製品を選定した。
「全て個別案件で、同一製品を作り続けるという仕事ではないため、一つの業務をきちんと工数内に収めるようにコントロールするには、『工番』と呼ぶプロジェクトのコードを軸にした仕組みが必要でした。これを構築し、後は一般的な仕組みで補うようにしてシステムを導入、整備していきました」(紺野氏)
労務管理の課題は、システム導入だけでは簡単に解決しない。紺野氏によれば、以前は現場の裁量で“自由に”働けることができたことから、勤怠の管理化に対する反発がかなりあったそうだ。それでも課題の大きい労務環境の改善は非常に重要であり、トップダウンながら企画業務部のメンバーとも連携して、勤怠管理の目的や意義、システムの使い方の説明といったコミュニケーションの機会を数多く設けたという。
「そもそも現場では、良かれと思い自主的に動いてしまうところがありました。もちろん相談や報告、連絡をする、上長の承認を得る、適切に指示を受けて判断するといった会社としてのルールをしっかり守ることは大切です」
「言葉だけではなかなか浸透しませんので、仕組みの中にも持たせて進めました。評価の話になりますが、皆ルールを守る大切さは理解していますし、会社は頑張った人に応えるべきです。時間をかけて、きちんとルールを守ることがプラスの評価につながるという状況になりました。現場の反発が私にではなく企画業務部の担当者に行くこともあったので、大変だったと思います」(紺野氏)