宇宙船の塗装から人物の再現まで–NVIDIAとマクニカ、デジタルヒューマンの取り組み解説

今回は「宇宙船の塗装から人物の再現まで–NVIDIAとマクニカ、デジタルヒューマンの取り組み解説」についてご紹介します。

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 エヌビディアとマクニカは、国内のデジタルヒューマンの発展と普及に向けて「デジタルヒューマン・コンソーシアム」を立ち上げ、公式イベントとして第1回「Digital Human Day」を開催した。

 エヌビディア ビジネス・デベロップ・マネージャーの中根正雄氏は、生成AIやAIエージェントが注目を集める現在、デジタルヒューマン技術に注力する理由として「エージェンティックAIを使う中で、そのエージェントに質問を投げかける時などのインターフェースは必要だろう。こうしたデジタルヒューマンアバターがある方が、エージェンティックAIに対する質問を投げかけたり答えをもらったりする時にスムーズに進むのではないか」と語った。

 同イベントの開催趣旨について、同氏は「デジタルヒューマンに対する取り組みが増えている中で、デジタルヒューマンを開発している人や、デジタルヒューマンを活用しようと考えている人が増えてきている。こうした開発者やユーザー、システムをインテグレートする人、そしてそこで使われるLLM(大規模言語モデル)や音声認識、音声合成など、さまざまなプレーヤーを呼んで集まることが大事だと考えた」と説明した。

 その上で「デジタルヒューマンを作ろうとすると、使う人には簡単に見えるかもしれないが、中に入っているテクノロジーはとても複雑で、なかなか1社でやりきれるようなものではない」とパートナーシップやコミュニティー活動の重要性についても強調した。

 米NVIDIAのDigital Human Technology部門でシニアディレクターを務めるSimon Yuen氏は、同社の「Digital Human Technology」を紹介。同氏は、デジタルヒューマンの現状について「適用分野やニーズが拡大し始めており、単なるエンターテインメントから、企業やヘルスケア、教育などさまざまな分野で活用されるバーチャルアシスタントとなってきた」とする一方、技術的には現時点で完成しているわけではなく、現在もさまざまな課題の解決に取り組んでいるところだとした。

 Yuen氏は、デジタルヒューマンのユースケースとして「対話型のカスタマーサービス」と「ゲーム」の2つを挙げて具体例を紹介した。ビジネスとエンターテイメントコンテンツという異なる領域のように見えるが、同氏は「使われている技術は共通」と述べた。

 ヘルスケア分野での活用例では、タブレット画面に表示されたデジタルヒューマン(AIエージェント)がユーザーと対話しながら健康状況に関する問診を行い、健康維持のためのアドバイスや投薬方針の決定などを実施する。表示されていたのはフォトリアリスティックな映像で、ユーザーの発言内容に対応して表情も変化するため、ユーザーはより自然に話しやすくなる効果が期待できるようだ。

 技術的な難易度としては、ユーザーの発言の内容を的確に認識して正しい回答を返せないと、最悪の場合健康被害を発生させてしまうリスクが考えられる。それ以前の課題として、ユーザーに違和感なく対話を続けてもらうには、不自然な間を空けずにテンポ良く返答するための高い処理能力も必要となる。

 ゲームでの活用例では、ゲーム内に登場するNPC(Non Player Character:ゲーム内に登場するキャラクターで、プレーヤーが操作していないキャラクター)をデジタルヒューマンの形で実装し、自然な対話を実現した例が紹介された。

 紹介された例では、宇宙船のような乗り物に乗ったプレーヤーやキャラクターがペイント業者のNPCに宇宙船の塗り替えを依頼する、といった状況だった。プレーヤーに話しかけられたNPCは、あらかじめ決められたせりふを機械的に再生するのではなく、プレーヤーの発言を踏まえて自然に返答する。塗り替えのデザインについても「薄紫で星の模様(How about a soft lavender color with stars?)」といった指示をすると、デザインパターンがその場で生成された。

 プレーヤー技術としては、例えば生成AIによるチャットボットとの対話や、画像生成AIに指示して画像を生成させるサービスなどと同様のものだといえるが、こうした技術を組み合わせてNPCをデジタルヒューマン化することで、従来のゲームよりさらに自然な体験が実現するだろう。

 こうしたデジタルヒューマンを実現する技術についても、同社のさまざまな取り組みが紹介された。例えば「Audio2Face」では、発言内容と感情の組み合わせから自然な表情のアニメーションを自動生成し、さらに顔のデザインを普通の人間のものからエイリアンのようなデザインに変更することで、生き生きと話すキャラクターを生成する。

 このほか、「テキストから人体のアニメーションを生成する」というデモでは、「女性が画面奥に向かって歩いて行く」といった指示からアニメーション映像を生成するなど、高精細な映像作成のプロセスにもAIが組み込まれて省力化/効率化を実現していることが示された。

 Yuen氏は、現状の課題として「高品質なデジタルヒューマンを作成するには専門家の存在が不可欠」「スケールしない」「不気味の谷をまだ越えられていない」などの未解決の部分も残っていると指摘しつつも、AIによってさまざまな形のインテリジェンスがツールとして組み込まれつつあり、急速に進化しているとする。

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